ウクライナ支援に影響する「ハマスとイスラエルの軍事衝突」
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国際政治学者で慶應義塾大学教授の神保謙が10月31日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ウクライナが提唱する和平案「平和の公式」での共同議長声明について解説した。
ウクライナ和平会議でウクライナとマルタの共同議長声明
飯田)ウクライナが提唱する和平案に関して、ウクライナとマルタの共同議長声明が発表されました。本来は60ヵ国以上が参加しており、その国々で共同声明を出したかったけれども、そこには至らなかったようです。
ハマスとイスラエルの軍事衝突の影響 ~イスラエルの国防に親和的な姿勢を取るウクライナにアラブ諸国が反発
神保)かねてよりウクライナが提唱している10項目の和平案を国際社会でまとめていき、ゼレンスキー大統領はG7広島サミットのときから示していましたが、グローバルサウスを含めた多くの国々を和平案に抱き込みたかったのです。この狙い自体は重要だと思います。つまり、グローバルサウスの国々はどっちつかずの態度を取ってきたけれど、やはり「和平は大事だ」と。しかも、和平案を推進するにあたってはウクライナの立場が大事ということで、積極的に外交を行ってきたけれど、実はここにもハマスとイスラエルの軍事衝突の影響が出ているのです。
飯田)ハマスとイスラエルの軍事衝突の影響が。
神保)ウクライナがイスラエルの国防に親和的な姿勢を取ったことに対して、アラブ諸国は反発を深めています。インドやトルコの代表も会議のなかで「ガザ地区でも国際法を遵守すべきだ」とし、エジプトやアラブ首長国連邦(UAE)などは欠席しています。中国も欠席しています。
グローバルなウクライナの立場への支援が、ガザとイスラエルの衝突によって揺らいでいる
神保)ウクライナの立場への支援が、ガザとイスラエルの衝突によって揺らいできてしまっています。ウクライナの和平協議も、もともと一筋縄ではいかないのですが、グローバルな世論形成にも暗雲が立ち込めているのです。
ウクライナへの支援 ~具体的なところに入ると、利害衝突が起きてしまう
飯田)いままでウクライナは、グローバルな世論形成に関してはうまくやってきたイメージがありましたが、このままだと笑うのはロシアになってしまいます。
神保)ロシアが侵略行為を行っているのは明白ですから、それに対する支援を集めるところでは、倫理観は一致していたのだと思います。しかし、具体的なところに入ってくると、どうしても利害衝突が起こってしまうのです。
飯田)情報戦の難しさがわかりますね。
神保)その通りですね。
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