津田塾大教授で哲学者の萱野稔人氏が11月15日、ニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!」に出演。イスラエルとパレスチナの対立を巡り、「歴史を遡っての議論に終始すべきではない」と指摘した。
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イスラエル軍の空爆を受けるパレスチナ自治区ガザ(パレスチナ自治区)=2023年10月9日 AFP=時事 写真提供:時事通信
イスラエル軍は15日、パレスチナ自治区ガザ最大の病院内でイスラム組織ハマスに対する作戦を実行していると発表、病院内にいるハマスの全戦闘員に投降を呼びかけた。
萱野)イスラエルとパレスチナが対立している問題を考えるときに、歴史を遡ることは確かに大切です。しかし、この問題の正義はどこにあるのかについて議論しても、それぞれに正義があることを確認するだけで終わってしまいます。ですから、歴史を遡っての議論に終始すべきではありません。
歴史を遡れば、ユダヤ人とパレスチナ人のそれぞれに国家建設を約束するとともに、フランスと中東の分割支配を約束した、イギリスの「三枚舌外交」が悪いという説に説得力はあります。ただし、そのように歴史を遡れば遡るほど、実は議論が袋小路に入り込んでしまい、むしろ抽象的な議論になってしまいます。
歴史の事実がある一方で、現時点では既にイスラエル、パレスチナ自治区のいずれにも人は住んでいます。その現状下で双方による戦闘が行われているわけですから、どうしたら戦闘を少しでも止めることができるかについて、議論を集中させてもいいのではないかと、私は思います。一部の識者は、歴史を遡って誰かを断罪することで満足してしまう向きもありますが、そうした大袈裟ではない形で問題を捉える必要があるのではないでしょうか。