「駅弁」食べ歩き20年・5000個の放送作家・ライター望月が、自分の足で現地へ足を運びながら名作・新作合わせて、「いま味わうべき駅弁」をご紹介します。
冬が近づいてくると、何かと「温もり」が恋しくなります。鉄道駅でも、木目のある建物は、どことなく温かさが感じられます。秋田県北部の奥羽本線・大館駅の新駅舎もその1つ。この大館駅前にも銅像があり、渋谷駅前で飼主を待ち続けたお話で有名な「ハチ公」は、この11月で生誕100周年を迎えました。この新駅舎開業、ハチ公100周年を記念した期間限定駅弁にもまた、子どもたちの心温まる付録が付いていました。
11月のはじめは、東京で最高気温25度以上の「夏日」を観測するほどの陽気でしたが、今週の天気予報は、北日本を中心に雪のマークが並ぶようになりました。とくに峠越えの区間では、雪景色が広がって、ひと足早く“冬景色”となるところもあることでしょう。奥羽本線や国道7号が通っている秋田と青森の県境・矢立峠も、冬には雪が多く積もります。それだけに、旅先でも何となく人の温もりが恋しくなる季節ですね。
秋田・青森の県境にあるまち・秋田県大館市の玄関口、JR奥羽本線・大館駅の駅舎は2021年から改築工事が進められ、今年(2023年)10月29日から供用が始まりました。従来より少し秋田寄りに移った新駅舎は「木目を基調とした地域住民がつどえる駅舎」がコンセプト。大館が秋田杉の産地として知られ、「大館曲げわっぱ」など伝統工芸品の生産が盛んなことに由来したものだそう。木の温もりが感じられる駅舎はいいですね。
(参考)JR東日本秋田支社ニュースリリース・2023年8月28日分
大館駅は、明治32(1899)年11月15日の開業。初代駅舎は昭和30(1955)年の大火で焼失し、同じ年に再建された2代目駅舎が約70年にわたって活躍してきました。この大館駅開業と同時に創業したのが花岡旅館弁当部、いまも大館の駅弁を製造している「花善」です。こちらは、ひと足早く2017年に新社屋が竣工。訪れた日は、創業124年の「創業祭」(11/15~21)が開催されていました。
今回、大館駅前の「花善」に予約(前日13時まで)して受け取った駅弁は、10月1日から数量限定で製造・販売されている「忠犬ハチ公の故郷おおだて鶏めし」(1350円)です。こちらは、大館駅新駅舎開業とハチ公生誕100年を記念した駅弁です。じつはハチ公、1923年11月生まれ。せっかくなら大館へ足を運んでハチ公像の前で、生誕100年をお祝いしたいですね。
【おしながき】
・鶏めし
・鶏肉甘辛煮
・枝豆入りシュウマイ
・中山そばと鶏ササミのごまドレッシング和え
・蒲鉾(ハチ公生誕100周年記念プロジェクトロゴ入り)
・比内地鶏のハンバーグ
・鶏のから揚げとんぶり入り
・かまぶく(りんご入り)
・いぶり大根クリームチーズ添え
・ミズの子(コブ)
ふたを開けると、いつもの「鶏めし弁当」以上に、華やかでお祝いムードが伝わってきます。蒲鉾にはハチ公生誕100年記念プロジェクトの「HACHI100」のロゴが入り、おかずには、比内地鶏のハンバーグや枝豆入りのシュウマイ、とんぶり入りの鶏の唐揚げなどが充実。いぶり大根はクリームチーズが添えられ、ミズのコブも入って、秋田・大館らしさ満載です。現在開催中の「駅弁味の陣2023」にもエントリーされています。
「忠犬ハチ公の故郷おおだて鶏めし」には、大館新駅舎開業応援プロジェクトに参加した大館市立有浦小学校の児童が作成した「大館駅周辺マップ」も同封されています。花善では、これまで10年にわたって大館市内の小・中学校に「鶏めし給食」を提供しています。食育を通じて、将来を担う子どもたちとの関係を築いているからこそできる手作りマップは、どこか温かい気持ちにさせてもらえるもの。地元に愛されている駅弁ほど、旅人にとって美味しい駅弁はありません。
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連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/