キーワードは「SDGs」? 仙台の新作牛たん駅弁に込められた思いとは

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【ライター望月の駅弁膝栗毛】
「駅弁」食べ歩き20年・5000個の放送作家・ライター望月が、自分の足で現地へ足を運びながら名作・新作合わせて、「いま味わうべき駅弁」をご紹介します。

牛たんサガリのペッパーまぜメシ

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近年は「SDGs」という言葉がよく知られるようになりましたが、「持続可能」という考え方は、1980年代にはすでに登場していた、古くて新しい発想です。今年(2023年)9月、仙台駅に新たに登場した牛たん駅弁は、食材に「SDGs」の発想を活かしながら、駅弁を次の世代につなぎたい、いわば“持続可能な”駅弁文化を目指した意欲作。スパイシーなネーミングに誘われて、加熱式容器の黄色いひもを思い切り引き抜いてみました。

H5系+E6系新幹線電車「はやぶさ・こまち」、東北新幹線・福島~白石蔵王間

H5系+E6系新幹線電車「はやぶさ・こまち」、東北新幹線・福島~白石蔵王間

色づく木々のなか、カラフルな塗色の車両が走る東北新幹線。「はやぶさ」の多くは東京~盛岡間で「こまち」を併結、「やまびこ」には東京~福島間で「つばさ」を併結する列車があります。一部には昔のカラーを復刻した編成も運行されている他、東京~大宮間には上越・北陸新幹線の車両も乗り入れ、新幹線の列車を眺めているだけで、飽きないものです。この日は「こまち」が北海道からやって来た「はやぶさ」と連結されていました。

牛たんサガリのペッパーまぜメシ

牛たんサガリのペッパーまぜメシ

色が“混じる”ことが東北新幹線の魅力を高めているのと同様に、食材を“混ぜる”ことで、食べ物の魅力が高まることがあります。仙台駅弁のこばやしから、9月15日に登場した「牛たんサガリのペッパーまぜメシ」(1180円)は、仙台名物・牛たんの希少な部位であるサガリ(たん下)を使い、“混ぜる”ことを主眼に置いた新しい加熱式駅弁。包装の牛たんおじさんもペッパーミルを持っています。「駅弁味の陣2023」のエントリー駅弁でもあります。

牛たんサガリのペッパーまぜメシ

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【おしながき】
・麦飯
・牛たんサガリ塩だれ和え 小ねぎ 特製ステーキソース
・コーンのバター炒め
・ブラックペッパー

牛たんサガリのペッパーまぜメシ

牛たんサガリのペッパーまぜメシ

ひもを引き抜いて8分、湯気と一緒に塩だれで味付けされた牛たんのサガリのいい香りが漂ってきました。ステーキソースとブラックペッパーをかけ、スプーンで麦飯と混ぜていけば、甘辛の香りとスパイシーな風味が広がり、バターコーンと共に食欲がそそられます。こばやしによると、SDGs的な観点もあり、従来活用されていなかった牛たんのサガリに着目。次の時代を担う人たちに駅弁文化を知るきっかけになって欲しいという思いを込めて、いままでにないカジュアルな装丁を施し、通常よりボリュームアップしながら、価格はできるだけ抑えたと言います。仙台駅・エスパルの売店の方も「若い世代の方にも是非食べて欲しい」と話していました。

E721系電車・普通列車、東北本線・岩沼~槻木間

E721系電車・普通列車、東北本線・岩沼~槻木間

「持続可能な」社会という意味では、各地の公共交通も大きな岐路に立たされています。ローカル列車を支える高校生の数は、今後も減少が予想される一方、路線バス等では、運転手不足により、すでに減便や廃止を余儀なくされている地域も増えてきました。ただ、自宅から駅やバス停まで遠く、そもそも公共交通が移動の選択肢に入らない人もいます。SDGsでは「誰一人取り残さない」のもポイント。誰もが他人事ではなく、鉄道・バス・車を共存させる生活習慣の再構築が求められている……新作駅弁を美味しく味わいながら、ふと、そんなことも感じました。

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

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