ウクライナがロシアに「負けない条件」

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日本経済新聞コメンテーターの秋田浩之が12月19日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ウクライナ情勢の今後について解説した。

「世界ロシア民族大会議」に南部ソチからオンライン参加したプーチン大統領=2023年11月28日(ロシア大統領府提供、タス=共同) 写真提供:共同通信社

「世界ロシア民族大会議」に南部ソチからオンライン参加したプーチン大統領=2023年11月28日(ロシア大統領府提供、タス=共同) 写真提供:共同通信社

ウクライナがロシアに負けない条件

飯田)秋田浩之さんは11月25日から、ウクライナのキーウなどでゼレンスキー大統領など約40人の方々を取材されました。今後、ロシアの侵略に対してウクライナが「抗戦を続けるのか、停戦を探るのか」というところですが、全体の取材を通してどういう感触でしたか?

秋田)まず物量を考えると、ウクライナはロシアに勝てないと思います。人口でもロシアは3倍ぐらいありますし、来年(2024年)は国防予算と安全保障関連費のトータルで、ロシアは歳出の約4割を出すわけです。

戦いの決め手は「戦術のイノベーション」 ~ドローンや無人走行車などと偵察衛星やサイバーを組み合わせる

秋田)ですので、ウクライナは「どうやって量の劣勢を戦い方で補うか」が勝負だと思います。ダビデとゴリアテの戦いがありますよね。

飯田)大男と戦う。

秋田)ゴリアテという巨人にダビデが立ち向かうような戦いなのです。その決め手は、「戦術のイノベーション」と言うと少しわかりづらいですが、「ロシアが考えつかないような型破りな戦術」が大事です。ウクライナは人が足りないわけですから、空中ドローンや水上・水中ドローン、もしくは無人走行車などの技術に、偵察衛星やサイバーを組み合わせる。そんな戦い方でロシアをかく乱、もしくは押し返していく方法を考えているのだと思います。

もう1回、ウクライナはイノベーションした戦い方でロシアを上回る方法を考えている

秋田)これまで侵略地域をこの程度で抑えられているのは、大前提に西側の支援があるわけですが、それだけではなく、ウクライナはロシアよりもはるかに先にドローン対ロシア兵という構図をつくり、ドローン攻撃でロシアを押し返してきました。ところが、それに気付いたロシアは同様にドローンを量産し、いまは同じくらいドローンを使って戦っています。現在、ウクライナの先行利益がほぼ失われており、それが戦場で膠着状態になっている原因の1つだとわかりました。

飯田)ロシアがドローンを使ってきたことが。

秋田)西側の支援がなくなってしまうと、量でもっと負けてしまうので絶対に必要なのですが、現状の支援が続いたとしても、もう1回ウクライナはイノベーションした戦い方でロシアを上回ることを考えていると思います。それが何なのかは、いちばんの肝なので誰も話さないのですが、やはり鍵になるのはドローンに加え、ドローンを無力化する電子戦の能力。あとは衛星を組み合わせ、ピンポイントでロシア側の司令部などを叩いていくのだと思います。

戦争の歴史を振り返れば、小さな国が大きな国に勝ったケースはいくらでもある

飯田)ウクライナは水上ドローンなどを使い、セバストポリの艦艇を壊滅させました。

秋田)元国防大臣に話を聞いたところ、「イノベーションが成功すれば勝つ」と言っていました。ウクライナにとって、勝つというのは負けないということですから。ウクライナはモスクワまで行くのが目的ではなく、ロシア軍を追い出したいので、ロシア軍に負けないことが勝利であり、そういう意味での勝利は可能だと。その証拠として、黒海の状況を説明してくれました。ウクライナはクリミアを獲られてしまったので艦隊がありません。それなのに、いま黒海からロシア軍を一部追い出し、穀物の輸出ルートを12月までに再開させたのです。

飯田)艦隊がないにも関わらず。

秋田)艦隊に対し、水上ドローンと対艦ミサイルで攻撃した。対艦ミサイルはもともと持っており、効果があるわけですが、水上ドローン艦隊を編成して攻撃したのです。史上初と言っていいのではないかと思います。それによってロシアは入ってこられず、穀物ルートが一部再開した。そういうことができるわけです。

飯田)ドローンの攻撃によって。

秋田)彼が言っていたのですが、戦争の歴史を振り返れば、小さな国が大きな国に勝ったケースはいくらでもある。直近では、アフガニスタンがソ連とアメリカの両方に勝っていますし、北ベトナムのような小さな国もアメリカに勝ちました。イラクはアメリカに負けてしまいましたが、アメリカは中東で大苦戦しています。やはり戦い方が大事で、北ベトナムのようにゲリラ戦的な戦い方で成功すれば、大国に負けないことも可能だと言っていました。

今後、支援が減ることも織り込んで次を考えているウクライナ

飯田)西側の支援がどうなっていくか気になります。

秋田)ゼレンスキーさんも過去完了形で、世界の関心がウクライナから中東に移ってしまい、「ロシアの思うつぼだ」と言っていました。ただ、私が全体から受けた印象では、それも織り込んでいるのではないかと思います。支援はもちろん願い続けるけれど、支援が減ることも織り込んで次を考えている印象がありました。その1つが国内生産ですね。ドローンもそうですし、兵器もこれから外国企業の投資を受け入れて、「戦争しながら製造する体制を強化しようとしている」という感じを受けました。

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