テレビ東京・解説委員の山川龍雄が1月24日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。日銀によるマイナス金利解除のタイミングについて解説した。
日銀、大規模な金融緩和策の維持を決定
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日本銀行は1月23日まで開いた金融政策決定会合で、大規模な金融緩和策の維持を決めた。日銀は、2%の物価安定目標が賃金の上昇を伴う形で達成する見通しが立てば金融緩和策を転換する方針だが、引き続き物価や賃金の動向を丁寧に見極める必要があると判断した。
マイナス金利の解除を3月か4月に行いたい
飯田)22~23日に会合が開かれましたが、どうご覧になりますか?
山川)「いつマイナス金利を解除するか」が市場の注目ですが、昨日(23日)の会見を見ている限り、植田総裁は3月か4月に解除したいのではないかと思います。記者からいろいろな質問が飛びますが、そこをかわしつつ、「選択肢を絶対に狭めずに可能性を確保する」という会見になったのではないでしょうか。
4月の可能性が5割、3月が3割、できなくなる予想が1~2割
飯田)数字や「賃金」という言葉を、会見のなかで何度も使っていました。
山川)賃上げに関してはそうですね。ただ、一方で実質賃金のマイナスが続いています。「実質賃金がプラスにならないとできないのか?」という記者のうまい質問にも、「いや、そういうわけではない」と。そういうやり取りがいろいろありました。エコノミストの方に聞いた話を総合すると、解除は4月の可能性が5割ぐらい。3月が3割ぐらいで、「結局できなくなるのではないか」という予想が1~2割ありました。
3月は決算時期と重なり、4月は政治的な思惑に取られてしまう
飯田)ゴールデンウィーク直前の4月ごろに決定会合があります。春闘の結果も大体見えてきている感じでしょうか。
山川)両方とも気になるところがあります。3月は年度末で決算の時期です。2006年の福井総裁のときは3月に引き締めを行いましたが、3月はマーケットの動きがそのまま決算に反映されてしまうので、そこをうまく織り込ませないと難しい。一方、4月は補欠選挙が近いので、政治的な思惑だと受け取られたくない。ですから、「どちらを取るか」というところは1つあると思います。
アメリカの金融政策との見合いもある ~マイナス金利解除に行きつけない場合も
山川)あとは賃金の状況を見極めるということと、何と言ってもアメリカの金融政策です。思った以上にアメリカの利下げが早い場合は、アメリカが利下げして、こちらが引き締めだと受け取られると、為替にかなり影響を与えます。そうなると「結局、マイナス金利解除まで行きつけなかった」という可能性も残るのです。
飯田)解除に行きつけないというのは、日本経済よりもアメリカが早めに下げてしまったことが……。
山川)マーケット関係者が気にしているのは為替の動きです。本来であれば、マイナス金利の解除は大した話ではありません。金融機関が日銀に預けている預金の一部分は、いままでペナルティのように「預けると金利を払わなければいけない」という状態でしたが、これを正常化するという話であって、大したことではありません。
飯田)本来であれば。
山川)ただ、「金融引き締めの入り口ではないか」と取られかねないのです。そのシグナルを送ったときに、「どのぐらい為替が円高に振れるか」をいちばん気にしている。それとアメリカの金融政策において利下げに転じる流れが重なってしまうと、為替の振れ幅が大きくなってしまいます。当然、アメリカの金融政策との見合いもあると思います。
タイミングと為替の振れ幅は誰もが気にしているところ
飯田)去年(2023年)の年末でしたか、FRBのパウエル議長がハト派的な発言をしたら、一気に10円ほど円高になりましたね。
山川)大きいですからね。我々も報道番組をやっていますが、1時間のなかで2~3円動くときもあります。みんなピリピリしている。また、エコノミストの見方が分かれていて、「瞬間的に円高になるけれど、すぐに戻る」と見る人もいれば、構造的なものを考えると「1ドル120円台ぐらいになってもおかしくない」など、両方の考えがあります。
飯田)いまの「1ドル=140円台後半の水準は安すぎる」と思っている人は、そう見るのですね。
山川)特に今年(2024年)は、新NISAで「外国株の投資信託と国内株と、どの割合にすべきか」と関心を持つ人も多い。海外の方に回していると、為替リスクがあるわけです。ですから円高になってしまうと、外国株で利益が出ても、為替でそれを損する可能性もある。タイミングと振れ幅はみんなが気にしているところです。
飯田)昨日の植田総裁の会見でも、発言の一部がまず報じられると、為替が1~2円動きました。
山川)おっしゃる通りで、あの発言のなかでも相当、為替が振れたのです。みんなピリピリしているのがよくわかりますね。
「高い賃上げ率と物価の安定がどう交差するか」がポイント
飯田)日本経済全体で考えると、やはり春闘が大事ですか?
山川)非常に大事ですね。いまのところエネルギー価格も落ち着いてきたので、物価は落ち着きつつある。そのなかで賃上げ率が重要になります。連合は5%というかなり高い目標を掲げましたが、大企業中心の賃上げ率ではなく、「中小企業も含めて全体がどうなるか」ということと物価の見合いであり、どこで実質賃金がプラスになっていくか。高い賃上げ率のレベルで実質賃金がプラスにならないと、またデフレに戻ってしまいます。「賃上げ率は大したことがないけれど、物価がマイナスだから実質賃金はプラス」という形では元の木阿弥ですから。
飯田)マイルドなインフレと、それを少し上回るしっかりとした賃上げ。
山川)植田総裁は「第1の力」「第2の力」と言っていました。第1の力は、コストプッシュ型で「エネルギーが上がり、物価が上がる」という話。第2の力は本当に日銀が望んでいる、いわゆる「賃金上昇を伴う好循環」で、こちらにしたいわけです。そのためには、高い賃上げ率と物価の安定がどう交差するかがポイントだと思います。
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