旧東海道・薩埵峠を歩く~新富士駅「駿河名産つまみ喰い 天晴れ!! 富士山弁当」(1,030円) 【ライター望月の駅弁膝栗毛】

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静岡エリアの東海道線でしばしば目にするのが「興津(おきつ)」行という列車。
「興津駅」は静岡駅から東へ4つほど戻った静岡市清水区にある駅です。
元々は、旧東海道17番目の宿場町として発展、東海道線の開通当初から駅も設けられました。
当時は海も近かったことから、当時のVIPたちのリゾート地にも・・・。
大正から昭和にかけては最後の元老・西園寺公望が別荘を構えたことから、当時の政界の人物たちによる「興津詣で」が行われたといいます。

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そんな興津駅から1つ隣の由比駅までは、旧東海道の中でも特に絶景で知られる「薩埵峠(さったとうげ)」があります。
今年1月、興津駅で降りて、新春の旧東海道・薩埵峠を歩いた時の模様を今回はアップ。
「薩埵峠」は歌川広重の東海道五十三次「由比宿」でも有名。
実際に歩くなら、興津⇒由比のルートでで歩いたほうが登りの区間が短く、富士山を正面に見ながら歩くことが出来ます。
この日もみかん畑の中を、東海道線と駿河湾を見下ろしながら、ゆっくりと歩いていきます。

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興津駅から上り坂を歩き続けて1時間あまり。
ついに目の前の視界が開けると、大きな富士山が飛び込んできました。
「薩埵峠」は”東海道の親不知”と例えられる区間、線路と道路が斜面にへばりつくような景色が続きます。
右手に広がる由比の海の名産といえば、やっぱり「桜えび」。
例年4月~6月初めまで「春漁」、10~12月に「秋漁」が行われ、漁業資源の保護が図られています。

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さらに由比側に歩いてくると、富士山が一層間近に迫ってきました。
左から東海道線、国道1号、右が東名高速。
東海道新幹線は、さらに左の山の中をトンネルで抜けています。
この区間が、日本の「物流の要」であることが分かります。
おっ、東海道線に何か列車が下ってきましたよ!

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身延線の甲府からやってきた373系特急「ふじかわ」でした。
その昔、151系「こだま」や東京直通普通列車、数々のブルートレインが行き交った場所。
現在、この区間を走る昼行特急は「ふじかわ」、定期寝台特急は「サンライズ瀬戸・出雲」のみとなっています。
昔を知る世代には寂しさもあると思いますが、短い3両編成であっても今も特急列車が走っているのはイイですね。
なお東海道で”路線バス乗り継ぎの旅”をやると、由比~興津間でバスが途切れるため、この峠道を歩くことになります。

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そんな富士山。「ふじかわ」ゆかりの駅弁といえば、新富士駅弁・富陽軒の「駿河名産つまみ喰い 天晴れ!!富士山弁当」。
「実力派スタア豪華共演」と銘打たれた上蓋は、レトロな映画のポスターをモチーフにしたものだそう。
触れ込みに違わず、静岡の名産食材がいっぱい詰まった駅弁となっています。
年齢を重ねてくると、ガッツリ1つの食材より「少量でいいものを・・・」という考えの方も増えてくるはず。
レトロな掛け紙は、そんな世代の人をターゲットにしているのかも!?

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【お献立】
豚肉西京味噌漬け
黒はんぺんフライ(蒲原産)
桜海老煎り煮(由比産)
手作りこんにゃくピリ辛煮
玉子焼
なすの揚げ煮
南瓜含め煮
切干大根油揚げ甘煮
花人参
絹さや
茎山葵漬け

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蓋を開けるとやっぱり目の前に現れる、白飯と桜えびの「赤富士」が印象的。
青のりで表現された山すそに浮かぶ雲も、ゆったりとした気分にさせてくれます。
地元には「富士山は見るもの」という人も少なくありませんが、富士山駅弁もまずは「見るもの」。
しっかり愛でてから味わっていきたいのはメインの「豚の西京味噌漬け」もさることながら、鰯を使った「黒はんぺんフライ」。
黒いビジュアルはもちろん、かみしめた時の魚のすりつぶした感も楽しめるのが「静岡の味」です。

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見て、食べて楽しめる、日本一の山「富士山」。
あと1か月もすると「登って楽しめる」山にもなっていきます。
美しい姿が見られる時に、思う存分「富士山」を満喫しておくことをおススメしたいと思います。

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
「ライター望月の駅弁膝栗毛」
(取材・文:望月崇史)

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

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