近年「山スカ」といえば、所謂“山ガール”の皆さんが履くスカートのことだそうですが、鉄道好きが「山スカ」と聞いて思い出すのは「中央東線」。
中央東線の“山の中を走っていた青と白の横須賀色”の電車がイメージされるものです。
そんな「山スカ」の引退から早1年、現在はステンレスの「211系」電車が中央東線の主役です。
211系は、2010年代前半まで東海道線・高崎線・宇都宮線などで走っていた車両。
転属に伴って、車体の帯がオレンジと緑の湘南色からスカイブルーを基調とした「信州色」に変わっています。
「211系」電車の登場は、今から30年前、国鉄末期の昭和61(1986)年。
私自身も登場まもない頃、東海道線・沼津発東京行の普通列車で乗った時に、それまでの113系電車との違いに驚きました。
当時としてはモーターの音が静かになり、二段式の窓から下降式の一枚窓に変わって車窓が広がったのが印象的でした。
数編成しかないボックスシートが付いたタイプ(0番台)がお気に入りで、東京~静岡直通の普通列車が多く運行されていた時代は好んでよく乗ったもの。
中央東線に活躍の場を移した今は、窓いっぱいにぶどう畑を映し出して、立川~松本間を中心に運行されています。
中央東線・勝沼ぶどう郷~塩山間を中心に車窓に広がる「ぶどう畑」。
こんな車窓を思い浮かべていただきたい駅弁が10月から登場しています。
小淵沢駅弁・丸政の「甲州ワイン使用牛肉ワイン煮弁当」(1,150円)です。
寒くなるこれからの時期に有難い、紐を引っ張って温める加熱式駅弁。
現在開催中の「駅弁味の陣2016」にもエントリーしています。
紐を引き抜いて待つこと8分ほど。
ふたを開けるや否や、白い湯気が立ち上ると共に、食欲そそるデミグラスソースの匂いが漂ってきました。
ホカホカの白いご飯と牛肉のワイン煮と人参煮がメインで、ミックスベジタブル、インゲンなどの野菜が添えられています。
列車のビーフシチューといえば、「北斗星」食堂車のパブタイムで食べた記憶がよみがえります。
気軽に使える食堂車なき今、駅弁という形で“車内デミ”が体感できるのは有難いものです。
ゴロゴロっと転がる牛肉は「甲州赤ワイン」でトロトロになるまで煮込んだそう。
確かに歯ざわりが優しい、やわらかい牛肉です。
やや酸味を感じるデミソースは、赤ワインのお陰でしょうか。
駅弁を買い忘れたまま「あずさ」に乗り込んでこの駅弁を隣席で開けられたら、きっと自分が買わなかったことを後悔するはず。
小淵沢、甲府から帰宅の場合は、駅弁のご用意を“おのおの抜かりなく”!
中央東線の普通列車は特急の合間を縫って走るため、途中駅の停車時間が長くなります。
私のお薦めは、高尾9:54発(土休日は9:47発)の437M・普通列車松本行。
この列車、大月で10分、塩山で10分、甲府で21分、塩尻で12分停車し、松本には14:00着。
昼の混雑の少ない時間帯を走り、松本周辺の温泉などへ行くにはちょうどいい時間ですし、小淵沢での小海線接続はハイブリッド車両となります(2016年現在)。
211系の場合、ロングシートタイプの車両もありますが、ボックスシートのあるタイプに当たれば、昔ながらの汽車旅気分が楽しめるコト間違いなしです。
(取材・文:望月崇史)
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/