塩尻駅「信州ジビエ祭弁当」(1,200円)~長年温めてきた「ジビエ駅弁」登場! 【ライター望月の駅弁膝栗毛】

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中央東線・E127系電車

中央東線・E127系電車

中央本線と篠ノ井線(しののいせん)の接続駅・塩尻駅。
通常、特急「あずさ」など「中央東線」の列車は1・2番線、特急「しなの」など「中央西線」の列車は5・6番線から発着します。
その中間にある3番線に停車中のE127系電車は、辰野(たつの)行のワンマン列車。
中央東線は、昭和58(1983)年まで、岡谷(おかや)から辰野回りで運行されていました。
この年、岡谷と塩尻をショートカットする「塩嶺(えんれい)トンネル」が開通し、今のルートが生まれたんですね。

中央東線・123系電車、2011年・辰野駅にて

中央東線・123系電車、2011年・辰野駅にて

岡谷~塩尻間は塩嶺トンネル経由が11.7キロに対し、辰野経由は27.7キロ。
岡谷駅の時刻表(2016年現在)を見ると、興味深い列車がありました。
朝8:08発の普通列車・長野行と、続く8:10発の普通列車・南小谷(みなみおたり)行です。
長野行は塩尻に8:19に着くのに対し、南小谷行は塩尻着8:46、わずか2分差が「27分差」に拡大しているんです。
トラベルミステリーのようですが、実はコレ、後続の南小谷行が「辰野回り」であるために起こる現象。
中央分水嶺を越える「塩嶺トンネル」は、朝の貴重な「25分」を捻出する効果もあるということでしょう。

ちなみに「辰野回り」の辰野~塩尻間は、長年、国鉄末期に「荷物電車」から改造された「123系」という1両の電車が往復する区間となっていました。
現在は引退し、ワンマン運転対応のE127系電車が後継車両となっています。

御柱祭・木落とし、2004年・筆者撮影

御柱祭・木落とし、2004年・筆者撮影

辰野回り時代、上諏訪(かみすわ)~松本間は特急「あずさ」でも50分ほどかかっていました。
現在、上諏訪~松本間は、最速の「スーパーあずさ」は21分で走破します。
諏訪といえば、今年は7年に1度開催される「御柱祭」の年でした。
聴取者の方に教えていただいたんですが、春に諏訪大社の御柱祭が終わった後も、諏訪地方では小宮と呼ばれる小さな神社などでも御柱祭が行われるそう。
まさにこの1年は「御柱祭の1年」だったんですね。

信州ジビエ祭弁当

信州ジビエ祭弁当

そんな御柱祭を記念して、今年4月から塩尻に新作駅弁が登場しています。
手がけているのは、塩尻駅弁のカワカミ。
掛け紙にも御柱祭の絵が描かれた「信州ジビエ祭弁当」(1,200円)です。
ついに駅弁にも「ジビエ」の時代がやってきました。
コチラの駅弁も現在開催中の「駅弁味の陣2016」にエントリーしています。

信州ジビエ祭弁当

信州ジビエ祭弁当

【おしながき】
一、日本鹿つくね 赤ワイン風味ソース モミジふ ねじり手綱カマボコ
一、日本鹿味噌 玉子焼 赤板
一、煮物 高野豆腐 青蕗 梅型ニンジン ゴボウ土佐煮の四本柱
一、ワカサギ南蛮漬
一、鶏肉フキ味噌焼 長芋梅酢煮
一、塩丸イカ山菜寿司 甘酢生姜
一、茶飯 野沢菜漬炒め 山ゴボウ漬
一、白飯 小梅漬
一、漬物 赤カブ漬 小茄子辛子漬 デザート・かりんよせ

ついついスグ箸をつけてしまいそうですが、チョット待った!
「駅弁」の場合は、はやる心を抑えて「愛でる」ことも大事なのです。
よく見るとおかずの四方に「御柱」に見立てたゴボウの煮物が「立って」ました!
お店の方によると、地元の方はスグに「アッ、御柱が建ってる!」と仰ったそう。
さすが地元、祭りへの思いが御柱のように大きい!!

bl161118-6(信州ジビエ祭弁当)

信州ジビエ祭弁当

塩尻らしく赤ワインソースで味付けされた、鹿肉のつくねはクセのない仕上がり。
マスを横断するように入っているのは、祭りらしく「ねじり手綱カマボコ」です。
お品書きにも「鹿食之免・諏訪大社」と書かれ、神の御加護を受けているかのよう。
下諏訪産の鹿肉からデザートのかりんまで、諏訪エリアにこだわったそうです。

カワカミでは長年、地元の「ジビエ」で駅弁を作りたいと企画を温めていました。
丼物を試みたこともあったそうですが、時期尚早として商品化には至らず・・・。
ようやく「ジビエ」が受け入れられる時代になってきたということで、御柱祭に合わせて新作駅弁と相成ったそうです。
シカによる食害も無視できなくなっている昨今、長野県やJR東日本も絡んだキャンペーンも行われ「信州ジビエ」は注目が高まってきています。

「信州ジビエ祭弁当」は、塩尻駅・松本駅の駅弁売場で購入可能。
まずは、駅弁を通して「信州ジビエ」を味わってみてはいかがでしょうか?

(取材・文:望月崇史)

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

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