それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。
上柳昌彦あさぼらけ 『あけの語りびと』
新宿:思い出横丁、恵比寿:えびす横丁、赤羽:OK横丁、渋谷:のんべい横丁
東京にはいくつもの有名な飲み屋街があります。
そんな中で、誰もがその名を耳にしたことがあるのに、飲んだことがない。
何となく怖そう、面倒くさそう、常連だけの街~といったイメージが強いのが新宿ゴールデン街!
花園神社と隣接した歌舞伎町一丁目の一帯には、戦後に建った木造長屋建ての店舗がおよそ200戸。せまい路地を挟んでギッシリと並んでいます。
昭和40年頃からは、作家、映画・演劇関係者、カメラマン、編集者などが通い詰める店が増え、「ゴールデン街」の知名度をあげてきました。
映画やNHKの番組に出演したこともある俳優、石川ゆうやさんが、ここにBar「ダーリン」を出したのは、10年前。知り合いの映画監督がアルバイトをしていたことから生まれた縁でした。現在43歳の石川さんは振り返ります。
「酒は好きなんですが、水商売をするつもりはありませんでした。でも、この街に通う人情が、肌に合ったんでしょうね」
石川さんは幼少の頃から、沢田研二さん=ジュリーの大ファン!それが高じて、「沢田王子」と名乗りライヴ活動も展開しています。
「ダーリン」のセールスポイントは、「一見(いちげん)さんも女性も入りやすい店」。石川さんのキャラクターのソフトさが、十分に活かされた店になっています。
「有名な映画監督の(タランティーノ)がフラリと入って来て、『ツケで飲ませてくれ』って言うから『OK』したんですよ」
さて、こんな石川ゆうやさんが〝新宿ゴールデン街〟の見方をガラリと変えたのは、去年の四月。17店舗が燃えた火災がキッカケでした。
全国から次々に寄せられた温かい支援、街の人たちの助け合い。そうしたものに支えられ、火災に遭った大半の店が再建を果たしました。
石川さんは思いました。
「人と人のつながりって、こういうことなんだ。俺も何かやってみたい!」
新宿三光商店街振興組合の理事長も務める石川ゆうやさんの中に生まれた「新しい夢」とは?
それは、新宿ゴールデン街で『こども食堂』を開くことです。
今、昼間のゴールデン街の路地に人の姿はありません。時折、観光客が物珍しげにカメラを向ける程度…。
「ここを、子どもたちが元気に走り回る姿を思い描いているんです」と、石川さんは、声を弾ませます。
様々な事情で、親と一緒に夕食を食べられない子、夕食を作ってもらえない子、そういう子たちが無料で、あるいは僅かな値段であたたかい食事をとりながら、楽しく集える空間「こども食堂」は2012年、大田区で生まれたものですが、今、全国的な広がりを見せています。
ゴールデン街の周辺、半径一キロ以内には五つの24時間保育所がありますが、親の仕事の都合で、親子そろっての食事ができない家庭も少なくないそうです。
石川さんは言います。
「そうした人たちに参加を呼びかけ、近くの家にも案内状を届けます。こども食堂の運営には今、4~5件の店が手を挙げてくれています。昼間、子どもたちでワイワイにぎわっていれば、防犯にも役立つはずです」
石川さんの夢は、さらにふくらみます。
「子どもたちが喜びそうな企画も、どんどんやりたいですね。ベーゴマやけん玉などの昭和の遊び、それから絵本の読み聞かせなども考えています」
石川さんの構想の説明会は、今週中に予定されているそうです。それが了承されれば、来月には具体的な作業がGO!
パフォーマーや警備などのスタッフには、事欠かないはず。
何せここは、ありとあらゆる職業の人たちに愛されてきた街〝新宿ゴールデン街〟なのですから!
2017年2月8日(水) 上柳昌彦 あさぼらけ あけの語りびと より
朗読BGM作曲・演奏 森丘ヒロキ
番組情報
眠い朝、辛い朝、元気な朝、、、、それぞれの気持ちをもって朝を迎える皆さん一人一人に その日一日を10%前向きになってもらえるように心がけているトークラジオ