それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。
上柳昌彦あさぼらけ 『あけの語りびと』
目の前の様々な資料の中に、一枚の写真があります。
真っ白なTシャツを着た茶パツのロングヘアーのいわゆるギャルが、両手を広げてほほ笑んでいます。
これ、神田錦町にある「シングルズキッズ株式会社」の代表取締役、山中真奈さんの十代の頃の写真なんですね。
30歳になった山中さんは今、とても画期的な試みに向けての第一歩を踏み出したところです。
その画期的な試みとは「ひとり親家庭の母親と子どもの専用下宿」!
厚生労働省の平成27年度の資料では母子家庭の平均年収は181万円。
ひとり親家庭の母親と子どもたちが今、社会的・経済的弱者の環境に押しやられている現状が浮かび上がってきます。
もちろん、国や自治体も様々なサポートの手立てを準備していますが、「親子で住める」「子どもを預けて働ける」「夕食もお任せできる」という具合にその生活を総合的に面倒見ましょう~という態勢は、整っていません。
山中さんは30歳の若さで、この大胆な試みにチャレンジしたのです。
山中真奈さんは、1986年埼玉県の生まれ。
ご両親は揃っていましたが、お金のことでよくケンカしていたという記憶があるそうです。
思春期に入ってからは、お母さんとの折り合いが悪くなって、派手な格好をしては街をフラつき、家に帰らない日が続いたそうです。
いわゆるギャルサークルというものに所属して、キャバクラで働いたことも。
引きこもりの生活も体験しました。
20歳からは不動産会社で4年間勤務。
不動産仲介の資格と知識を身につけ2015年に独立しました。
山中さんは振り返ります。
夜の街で出会った女の子たちは家庭環境がうまくいかず、お金、お酒、男性、居場所などを求め、何かに依存してしまっている子がたくさんいて、愛に枯渇していました。
誤った恋愛で望まない妊娠して、育てられない子を産み、違う男に乗り換える、それでも何か満たされるものを探して、さ迷っていました。
大人の勝手な事情で最終的に傷つくのは、純粋無垢な子どもたちなんですよね。
山中さんの会社「シングルズキッズ株式会社」のミッションは、
『シングルズキッズ=ひとり親で育つこどもを最高にHAPPYに!』
6月のオープンを待つ「ひとり親家庭の母親と子どもの専用下宿」は世田谷区の住宅街にあります。
その名も『マナハウス上用賀』!
鉄骨構造の2階建て一軒家ですが、築41年の床をリフォームしました。
1階は、食堂を兼ねるおよそ20畳のリビングルーム。
2階には、母と子どもの居室が5つ。
対象は、子どもが小学校4年生以下の家族。
負担は毎月10万から15万円で夕食代や子どもの送り迎えの費用なども含まれています。
これで、パートでしか働けなかったお母さんのフルタイム勤務や残業もOK!
子どもたちは、温かい夕ご飯をにぎやかに食べられるので安心です。
渋谷区で託児所を30年も営んできた関野紅子さんが、管理人を引き受けてくれました。山中さんも一緒に暮らすそうです!
補修費の合計は860万円。
このうち500万円の融資を取り付けましたが、補てん分の360万円は、クラウド・ファンディングで募集中です。
山中さんの夢は、さらにふくらんでいきます。
今年の1月、ひとり親に育てられた人に、独自のアンケートをした結果、
*ひとりぽっちで過ごす時間が多かった
*祖父母との触れ合いがないので日本文化を知らない
*習い事ややりたいことを我慢した
~といった声が多く聞かれました。ゆくゆくは地域のシニアの協力を得て、一階のリビングルームで、「シニア先生の寺小屋」「英語・そろばん塾」「宿題サポート」などもしてゆきたいですね。
5世帯のひとり親家庭が住む「マナハウス上用賀」…。
この小さなアパートから今、日本の福祉のモデルケースの一つが、広がろうとしています。
2017年5月10日(水) 上柳昌彦 あさぼらけ あけの語りびと より
朗読BGM作曲・演奏 森丘ヒロキ
番組情報
眠い朝、辛い朝、元気な朝、、、、それぞれの気持ちをもって朝を迎える皆さん一人一人に その日一日を10%前向きになってもらえるように心がけているトークラジオ