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特急「かわせみやませみ」
今年3月から熊本~人吉間で1日3往復運行されている特急「かわせみやませみ」。
JR九州が誇る「D&S(デザイン&ストーリー)列車」の第11弾です。
人吉寄りの1号車が青い「かわせみ」車両、熊本寄りの2号車が緑の「やませみ」車両。
特急列車ではありますが、下りの3号は途中の一勝地で7分間、上りの4号は一勝地で7分間、坂本で5分間の停車時間が設けられています。
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特急「かわせみやませみ」
「かわせみやませみ」は、日中から夕方にかけて走る3~6号が全車指定席での運行。
中でも、この長めの停車時間が設けられた3号・4号が人気列車となっています。
『とにかく乗りたい!』というのであれば、朝夕の列車がねらい目。
『存分に楽しみたい!』というのであれば、昼時の3・4号を早めに押さえて、肥薩線(山線)の「いさぶろう・しんぺい」の旅や、人吉温泉の宿泊などと組み合わせると、より楽しそうです。
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特急「かわせみやませみ」
1号車の展望コーナーには、丸窓の横に双眼鏡が据えつけられていました。
窓枠には、「バードウォッチング・ウィンドウ」の文字が・・・。
鳥の名前が多い国鉄~JRの特急の中でも、ホントに“バードウォッチング”用の双眼鏡が設けられた特急列車は、恐らく「かわせみやませみ」が初めてでしょう。
気分転換ついでに、球磨川の畔を飛び交うカワセミ、ヤマセミは見つけられるでしょうか?
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特急「かわせみやませみ」
最近、各地の観光列車でも、料理、スイーツ、酒などに特化する傾向が強いんですが、「かわせみやませみ」のすごいのは、その全てをコンプリートしているところ。
特に1号車のサービスカウンターは、その名も「焼酎バー」。
米焼酎として知られる球磨焼酎は、減圧・常圧・樽熟成という3タイプに分かれています。
そんな球磨焼酎28の蔵元の中から3種の焼酎が提供されています。(種類は季節ごとに変更)
球磨焼酎酒造組合の方が乗っている日もあり、そんな時は焼酎のプロの方の指南を受けながら、本場の味を楽しめるんです。
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くまのスイーツBOX
お酒は苦手という人でも、甘いものならどんどん入っちゃいますよね。
コチラは土・祝日限定、個数限定、2号車のサービスカウンターで販売されている「くまのスイーツBOX」(単品720円、コーヒーセット1,000円)です。
私は前回ご紹介の弁当と合わせて、このスイーツBOXも購入。
ガッツリいただいた弁当に続いて、このスイーツもいただいてしまおう・・・という訳であります。
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くまのスイーツBOX
ボックスを開けると、甘~いいい香り!
中からは可愛らしい小ぶりのケーキが2つ現れました。
人吉球磨産いちご「ゆうべに」と「ひのしずく」を使ったタルトとモンブランは、心地よい甘さ。
手掛けているのは、人吉市内のケーキ工房「ポエム」です。
コチラのお店、地元食材と旬にこだわるのがモットーだそう。
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くまのスイーツBOX
旅をしていると日持ちのする土産菓子は買うことが多いんですが、よほどの超有名店でない限り、ご当地のケーキ屋さんを訪ねることはまずありません。
でも、このような車内販売という形で、地元で頑張っているお菓子屋さんにスポットを当てていくのはとてもいいことだと思います。
ちなみに、6月上旬からの初夏メニューでは、人吉球磨の「粉茶」と球磨のヨーグルトを使ったスイーツが登場しているそうですので、コチラの味もまた楽しんでみたいものです。
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特急「かわせみやませみ」の客室乗務員さん
JR九州の「D&S列車」ではおなじみの客室乗務員さんですが、「かわせみやませみ」では、オリジナルのシャツを着用しています。
これは全工程「国産」にこだわり、人吉市内に縫製工場を持つ「HITOYOSHI株式会社」製のもの。
かわせみブルーと球磨の澄んだ空をイメージした白の2種類があります。
ちなみに腕にキラッと青く光るのは、かわせみの鮮やかな体の色を模した刺繍だそうです。
車両のインテリアや車内で提供される飲食だけでなく、「衣食住」全てにわたって、人吉・球磨地方を実感できるのが「かわせみやませみ」なのです。
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特急「かわせみやませみ」
熊本地震からの復興のシンボルになってほしいという願いを込め、地元産の素材がたくさん使われて誕生した「かわせみやませみ」。
素晴らしいのは、この列車が1日3往復運行する定期列車で「乗りやすい」ということ。
特に週末は地元の食、酒、スイーツがコンプリート出来る、いろんな意味で「オイシイ」列車です。
車窓に広がる球磨川の流れを眺め、時には川下りやラフティングの皆さんと手を振り合いながら、熊本の新しい鉄道旅を楽しんでみてはいかがでしょうか?
(取材・文:望月崇史)
連載情報
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ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/