東京・丸の内…仕事のできるオフィスワーカーがビル群をカッコよく闊歩する街。
おしゃれな高級店が並ぶ街。そんなイメージがありますよね。
でも実は、その丸の内のビルの屋上で養蜂が行われているのをご存知ですか?
その名も『丸の内ハニープロジェクト』!
大手町・丸の内・有楽町地区まちづくり協議会が、丸の内産の「丸の内のはちみつ」を採蜜するプロジェクトで、なんと今年は、大丸有エリアで働く人たちが、隔週水曜日の朝、お仕事の前に養蜂活動に参加しているのです。
6月のとある水曜日の朝8時、ニッポン放送のご近所、新東京ビルの屋上にお邪魔しました。
おしゃれな洋品店や美味しいレストラン、素敵なカフェなどのお店、そしてオフィスがあるビル。食事に行ったことはあったけれど、まさかこのビルの屋上でミツバチを飼っているとは夢にも思いませんでした。
屋上の重い扉を開けると、丸の内のビル群を背景に豊かな緑。紫色のラベンダーもそよ風に乗っていい香りを振りまいています。
ありました!緑の中にミツバチの巣箱が!入り口にはミツバチがいます。
この日参加されたのは、大丸有地区のお店やオフィスで働く10人ほど。
養蜂の専門家「農業生産法人株式会社銀座ミツバチ」の田中淳夫さんの指導のもと、巣箱のメンテナンスや採蜜を行います。
では、どのようにして蜜を取るのか作業を追って見ましょう。
新聞などを燃やした燻煙器の煙でミツバチを静かにさせ、巣枠を取り出しブラシで静かにミツバチを落とします。蜜のふた(ミツロウ)を削ぎ切り、遠心分離器に入れてぐるぐる回すと…甘い香りとともに黄金色に輝く蜂蜜がとろ~んと出てきます。
わ~!すごい!本当に蜂蜜が取れました。思わず拍手!プーさんの気持ちがよくわかります。
こんな都会の真ん中でミツバチを飼っていることも不思議ですが、こんなに美味しい蜂蜜が本当に採れるなんて…実際に舐めて見るまでは信じられませんでした。確かに甘くて美味しい本物の蜂蜜です。
普通、蜂蜜の糖度は78以上と言われていますが、なんと「東京丸の内のはちみつ」は、83もあるんです!
働き者のミツバチたちは、毎日2~3kmも離れたところまで飛んでいきます。丸の内のミツバチたちは、皇居や日比谷公園、緑化されたビルの屋上などで花の蜜や花粉を集め戻ってくるのです。都会にしては意外にお花に恵まれている場所なのかもしれませんね。
二つのビルの屋上で行われている養蜂。去年はなんと300kgもの蜂蜜が収穫できました。
さて、この収穫されたばかりのおいしいおいしい蜂蜜、私たちが食べることはできるのでしょうか。
実は瓶詰めされて、「東京丸の内のはちみつ」として丸ビル地下1階の「はちみつ専門店 ラベイユ」で限定販売されています。
そして、大丸有地区のレストランで、「東京丸の内のはちみつ」を使ったメニューを出しているところもありますよ。
まさしく地産地消です。なんだかとっても不思議な感じ。まさしく大丸有地区の名産品です。
しかもこの名産品はここで働く人たちの手で作り出されているのです。養蜂活動を通じて地域も活性化されますし、新しいコミュニティが形成されています。そして、この地区にまだまだ残っている豊富な自然と共生する環境都市・健康都市の実現を目指しているのです。
実際に蜂蜜の収穫をしてみると、朝ということもありますがとても清々しい気持ちになります。ここが丸の内のビルの屋上であることも忘れそうです。そして、収穫する喜びをひしひしと感じることもできました。
参加された方々にお話を伺うと…
「蜂蜜の話題が増え、職場の人も興味を持ってくれる」
「早起きになった。ハチを見るとテンションが上がる」
「蜂蜜がどのように収穫されるのかわからなかったが、参加してからはありがたいと思いながら食べるようになった」
「こんな都会の中でも自然の生命力を感じる」
…などなど、まさしく大丸有地区の話題の源にもなっているのです。
特に男性の方々は、オスのミツバチにいたく肩入れされているようです。
オスは交尾をするためだけに生まれ、終わるとそのまま死んでいきます。よしんば生き残ったとしても、門番が待ち構えている巣には戻れないのです。そんな悲哀を人間になぞらえて話題にされるのだとか。
このプロジェクトがなければ、丸の内でミツバチが話題になることはなかったでしょう。
新しいコミュニティが生み出す新しい活動と新しい価値観。健気に働くミツバチから私たちが学ぶことは多いようです。
あなたも是非「東京丸の内のはちみつ」をご賞味下さい。
レポート:ひろたみゆ紀