苫小牧駅「いくら弁当」(1,150円)~石勝線・夕張支線の旅【ライター望月の駅弁膝栗毛】

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石勝線・キハ40

石勝線・キハ40

室蘭本線と石勝線が接続する北海道の追分駅。
通学時間帯に当たる朝7時前には、室蘭本線の岩見沢行と苫小牧方面行が並び、これが石勝線の千歳行が接続して、広い駅構内は一瞬、学生たちの姿で賑わいます。
その賑わいの後、駅のはずれにある切欠き式の4番ホームに1両のキハ40が入ってきました。
4番ホームで列車を待つ、数人の列に私も加わります。

石勝線・キハ40

石勝線・キハ40

乗り込んだ列車は、追分7:08発の石勝線・普通列車夕張行。
追分を発車する石勝線の一番列車です。
サボが「千歳―夕張」となっているのは、折り返しの列車が千歳行になるためでしょうか。
本来は「追分―夕張」となるところでしょうが、ワンマン列車で終着駅も無人駅、わずかな折り返し時間しかありませんので、夕張に行くことが分かればいいということで、列車は入線時に並んだ数人の乗客と共に、定刻通り発車しました。

石勝線

石勝線

石勝線は、その名の通り、石狩と十勝を結ぶ北海道有数の幹線です。
ただ、この名前になったのは、千歳空港(現・南千歳)~追分間、新夕張~新得間が開業した昭和56(1981)年のこと。
それまでは追分~夕張間を結ぶ「夕張線」として、石炭輸送が盛んに行われていました。
この夕張線の一部を活かして石勝線が作られたことで、元からあった紅葉山(現・新夕張)~夕張間は、石勝線の「支線」という形になり、現在に至ります。
夕張行の列車は、新夕張を出ると、トマム・新得方面へ向かう高規格な線路を横目に、ゆっくりと左カーブを描いて山へ分け入っていきます。

石勝線・夕張支線

石勝線・夕張支線

「夕張線」は、明治25(1892)年に夕張炭山の石炭輸送を担う路線として開業しました。
今年11月には、開業から125年を迎える歴史ある路線ですが、この夕張へ向かう線路(新夕張~夕張間)は、すでに廃止される方向で話が進んでいます。

それというのも、この40年で利用者がおよそ10分の1に減少し、年間1億8,000万円という赤字(平成26年度)になっていることに加え、明治時代に作られ老朽化したインフラの維持に巨額の費用がかかるため・・・と説明されています。
「25」という表記も、施設老朽化で25km/hに徐行を強いられているため出されているようです。
(参考:JR北海道プレスリリース、平成28年8月17日付)

並行する路線バス

並行する路線バス

さらに、この夕張支線に並行して、新夕張~夕張間には路線バスも運行されています。
1日5往復しかない夕張行の列車より、路線バスのほうが多く運行されているのが実情。
南清水沢駅近くには高校もあり、列車にもそれなりに学生さんは乗っているのですが、バス停のほうが、ちょっと多めの学生さんの姿が見受けられたり・・・。
「路線バスが重要な生活の足となっている」というJRの発表も致し方ないのかも。

清水沢駅

清水沢駅

1日5往復の列車しか来ない割に、大きめの駅舎と広大な構内があるのも「夕張線」の特徴。
清水沢駅は、大夕張炭鉱への鉄道が接続していました。
昭和50年代までは、ココをたくさんの石炭を積んだ貨車が行き来していたんでしょうね。
無人駅となった駅舎では「清水沢駅展覧会」が常設で行われている様子。
今年(2017年)8月末までは、「清水沢駅の思い出展」が開催されているようです。

夕張駅

夕張駅

新夕張からおよそ30分、追分からは1時間10分あまりでようやく夕張に到着。
夕張駅は、1本の列車しか入ることが出来ない行き止まりの駅となっています。
昔は炭鉱があったもう少し山のほうまで線路が伸びていましたが、1980~90年代のリゾート開発などに伴って路線が短縮され、現在の場所に移転してきました。
この列車は、8:25発の千歳行としてわずか8分で折り返します。

夕張駅

夕張駅

この列車を逃してしまうと、昼12時台まで4時間も列車が来ない上、旅程が組みにくくなってしまうので、残念ながら8分間だけ駅周辺を散策して撤収することに・・・。
ホントはメロンの美味しいシーズンなんですけどね。
駅弁屋さんの1つでもあれば、1本列車を落として滞在してみようかなという動機にもなりますが、今回は、夕張支線の「乗りつぶし」でおしまいです。

夕張駅のキハ40

夕張駅のキハ40

折り返しの列車には、地元の方が何人かと鉄道好き風の人たちがそこそこ乗車。
夕張周辺に泊まったか、あるいは札幌~夕張間の路線バスと組み合わせたのでしょうか。
私のように来た列車で折り返す人は少なめですが、これからは増えていくのかもしれません。
千歳行はボックス席1つがほぼ1人ずつ埋まる程度の乗車率で、ローカル線としてはちょうどいい塩梅です。

いくら弁当

いくら弁当

そんなローカル線のボックス席で折詰を開けていただくのが、望月の一番好きな駅弁旅。
夕張方面の列車が発着する南千歳駅では、苫小牧駅弁「まるい」が、1・2番ホームで駅弁の販売を行っています。
購入した日は、売店のお姉さんのおススメにのって、「いくら弁当」(1,150円)をいただきました。
北海道の駅弁では、いくらは定番アイテムですよね!

いくら弁当

いくら弁当

包装を外すと、八角形容器の下半分が、溢れんばかりに全ていくらで覆いつくされていました。
しかもあまり塩辛くないのが、本場・北海道クオリティ。
いくらに時折、ホタテ、椎茸、錦糸玉子などを合わせながら、北海道産米の白いご飯をいただいていくと、箸がどんどん進みます。
千歳には鮭のミュージアムもありますし、苫小牧は王子サーモンのふるさと。
そんな土地柄を踏まえると、南千歳でいくら駅弁を買う意義があるというものです。

いくら弁当

いくら弁当

かつて「黒いダイヤ」と呼ばれた石炭の輸送で賑わった夕張線の旅であれば、キラキラ光るものをいただいておくのもアリかも。
夕張支線の旅はもちろん、道東方面へ向かう特急「スーパーおおぞら」「スーパーとかち」には車内販売がありませんので、南千歳は乗車前の最終食料調達ポイントとなっています。
それゆえ日中は比較的早い時間帯で完売になることも多いので、昼以降、乗り継ぎ時間などが少ない時は、事前の予約をお勧めします。
(電話:0144-32-3131、まるい)

(取材・文:望月崇史)

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

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