厚岸駅2番ホームに、9:09発の普通列車・根室行が、キハ54形の1両で入ってきました。
厚岸の駅弁は基本、駅前にあるお店で購入となりますが、8:30~14:30(木曜休)の営業時間内で、到着2時間前までに電話予約(0153-52-3270)すれば、駅弁をホームのドアの所まで持ってきてくれるサービスが行われています。
ただし、この9:09発の根室行のみ、2番線発着のためNGとなっていますのでご注意を・・・。
跨線橋を渡って、駅裏の高台へと登れば、そこは「道の駅 厚岸グルメパーク」。
左手に厚岸湖、右手に厚岸湾を望むことが出来ます。
やっぱり北海道、空が高い!
駅弁「かきめし」のために1本列車を落としても、ココがあれば十分時間がつぶせそう・・・。
青い空と白い雲を眺めているだけで、30分近く経ってしまいました。
厚岸湖は、厚岸湾と繋がっている汽水湖ゆえに、牡蠣の養殖が盛んに行われています。
湾と湖を隔てる赤い橋が、今から45年前、昭和47(1972)年開通の「厚岸大橋」。
厚岸の町は、湖北・湖南の両地区に分かれており、橋が出来る前は町営の渡船、後に日本道路公団(当時)のフェリーで結ばれていました。
湖南方面へは、厚岸駅前からくしろバス・霧多布温泉行などの路線バスが出ています。
湖南地区を代表する場所といえば、江戸時代後期、蝦夷三官寺の1つに数えられた「国泰寺」。
18世紀末から19世紀にかけ、ロシアの南下政策が進む中で、箱館奉行の申し出によって、文化元(1804)年に設けられた寺です。
それゆえ今も、寺には幕府ゆかりの「葵の紋」が残ります。
寺近くに高校があるお陰で、厚岸駅から寺まで路線バスの便が意外にいいのが嬉しいところ。
(参考:厚岸町ホームページ)
厚岸の駅弁と聞くと「かきめし」しかない・・・と思い込んでいる方も多いと思いますが、現地・厚岸駅前の「氏家待合所」では、「かきめし」以外にもいくつかの駅弁が販売されています。
その1つが「帆立弁当」(900円)。
実は厚岸では、牡蠣は当然のこと、アサリ、ウニ、ホッキなど様々な魚介類が採れます。
「ホタテ」も勿論、その1つなんですね。
(参考:厚岸漁業協同組合ホームページ)
厚岸駅から厚岸湖、国泰寺、その先にあるアイカップ岬への地図も描かれた「帆立弁当」の掛け紙を外すと、真ん中によく煮つけられた大粒の帆立が3つ、ドーンと現れました。
そう、この駅弁、基本的な構成は「かきめし」とほぼ同じなんですが、真ん中の牡蠣の部分が「帆立」になったバージョンなんです。
コレは現地じゃないと食べられない!
出汁の効いたいい匂いの炊き込みご飯は、もちろん「かきめし」と同じ美味しさです。
1日6往復+αの列車しかない駅なのに、駅弁にバリエーションを付けてくれるだけでも有難い!
たぶん、初めて厚岸の駅弁を食べる方は、ほぼもれなく「かきめし」をチョイスすると思いますが、もしも、厚岸が2度目ならチョイスする価値のある駅弁。
牡蠣が苦手な人には、その美味しいエッセンスだけを味わえる駅弁とも言えましょう。
以前、国泰寺からアイカップ岬までフラッと向かった時は、人に会うことは殆どなかったのですが、エゾシカの群れやキタキツネたちによく会いました。
根室本線のいわゆる「花咲線」区間では、線路にエゾシカが入ってきてしまうことが多く、キハ54の単行列車も、甲高い警笛と共に急ブレーキをかけることがよくあります。
乗車した日も厚岸~糸魚沢間の湿原地帯で、斑点が残った小鹿が出てきてしまいました。
ワンマン列車の運転士さんも、安全運行に気苦労が多いことでしょう。
北海道のローカル列車では、野生動物による急ブレーキがしばしばあることを、乗車するほうもおり込んでおきたいものです。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/