キハ283系・特急「スーパーおおぞら」

北海道の大地をひたすら突き進むキハ283系・特急「スーパーおおぞら」。
「おおぞら」は昭和36(1961)年に北海道で初めて誕生した特急の系譜を継ぐ由緒ある列車です。
昭和56(1981)年からは石勝線経由となり時間を短縮、平成9(1997)年からは車体を傾ける振り子機能が付いたキハ283系気動車が導入され、鉄道のシェア拡大に大きく貢献してきました。
「おおぞら」は、やっぱり北海道の特急の代名詞のような存在なんですよね。

根室本線・狩勝峠の車窓

「スーパーおおぞら」が最も“大空感”を感じられるのが、トマム～新得間。
特に石勝線から根室本線に合流した後、進行左手に新得の街を望みながら、狩勝峠を下っていく様子は、天気に恵まれればとても爽快感があります。
狩勝峠は、先日紹介した「肥薩線」、篠ノ井線の姨捨と並んで日本三大車窓の1つ。
ただ現在、この三大車窓に謳われた当時とはルートが変わっており、初期の「おおぞら」に乗った方は、もっと美しい景色を堪能しながら峠を下っていったのでしょう。

新内駅跡

狩勝峠が今のルートに切り替わったのは、半世紀以上前、昭和41(1966)年のこと。
昔の狩勝峠を知る人も少なくなっているかと思いますが、国道38号に沿っていたという旧線の名残を感じられるのが、旧線区間に唯一あった駅、「新内(にいない)駅」の跡です。
現在はNPO法人の「旧狩勝線を楽しむ会」の皆さんによって整備されているほか、昔の構内には「狩勝高原エコトロッコ」があって、ちょっとしたアクティビティが楽しめます。

新内駅跡

新内駅跡

この新内駅跡のシンボルともいえるのが、9600形蒸気機関車の「59672」と、昭和53(1978)年に東京からやってきたという3両の20系客車（車内は「旧狩勝線ミュージアム」入場料200円）です。
20系といえば元祖・ブルートレイン、走るホテルとも言われた、戦後日本を代表する客車の1つ。
最近は鉄道博物館などにも収蔵され、かなり丁重に扱われていますよね。
でも、JR系の博物館にもない、20系の“真髄”ともいえる車両が、ココには健在なのです。

20系客車「ルーメット」(2011年撮影)

それは「ルーメット」といわれた20系客車の1人用A寝台個室。
昭和30～40年代の最高峰だった個室寝台のある最後の1両が、ココに残っているのです。
1980年代末の「北斗星」「トワイライトエクスプレス」ロイヤル、さらには、今をときめく「ななつ星」「四季島」「瑞風」につながる原点ともいえる存在。
国鉄～JRの“豪華寝台”史を辿る上では欠かせない1両が、多くの人の協力で大事に保存されています。

新得駅

せっかく新得にやってきたのに、そばの1杯も食べずに帰ることは出来ません。
北海道で「そば」といえば、幌加内(ほろかない)か新得。
ちなみに、北海道で駅そばといえば、音威子府(おといねっぷ)か新得。
新得の駅そばに入っているのは、駅前で創業して90年以上の老舗「そば処 せきぐち」。
時間がない時は、30円追加すれば「持ち込みどんぶり」に作っていただくことも出来ます。
（ホーム側からも購入可能）

天ぷらそば

天ぷらそば

丼に鼻を近づけ思い切り吸い込んで、そばとつゆの香りを満喫してからいただきます。
新得産100%の全粒引きそば粉を使ったというそばは、「せきぐち」ならではの太麺。
本店とは別に駅そば向けのそばを作って、本店で湯がいて搬入しています。
かえしは共通で、3か月寝かせてから使うというこだわり！
新得の“こだわりの”駅そばにファンが多いのも納得です。

地元の方曰く、新得は9月の新そばのシーズンが最高とのこと。
去年の9月は台風被害で大変だった新得だけに、今年こそは無事に収穫の秋が迎えられることを願ってやみません。

（取材・文：望月崇史）