【ライター望月の駅弁膝栗毛】
名古屋と伊勢市・鳥羽を結ぶJR東海キハ75系の快速「みえ」。
東海道新幹線に一番近い名古屋駅13番線ホームから発車、関西本線・伊勢鉄道(第3セクター)・紀勢本線・参宮線経由で毎時1本、伊勢市・鳥羽を結ぶ“特別料金不要”の快速列車です。
東京毎時50分発の「のぞみ」と接続、名古屋から津までは、近鉄特急と同じ50分ほどで到着。
1号車には指定席(520円)が設けられ、混雑時の着席保証も行っています。
日本一短い名前の駅として知られる「津」駅西口から、三重交通の路線バスで5分あまり。
三重交通は「Pitapaエリア」なので、当然「Suica/PASMO」も利用可能です。
やって来たのは、「三重県総合博物館(MieMu、みえむ)」。
ココで9/18(月)まで開催されているのが、第16回企画展「みんなののりもの大集合」です。
「三重の鉄道」をテーマに結構コアな展示を行っていて、既に多くの方が来場しているといいます。
実は三重って、思わず「てつどう県」と呼びたいくらい“鉄分の濃い”県!
というのも、ナローゲージ(762mm)の鉄道から、狭軌(1,067mm)、標準軌(1,435mm)の鉄道まで、在来線レベルで揃っているのは、三重ならではなんですね。
特にナローゲージは、全国で3つしかないうちの2つ(三岐鉄道北勢線・四日市あすなろう鉄道)が三重にあって、桑名市には「3つのレール幅を1度に体感できる踏切」もあるんです!
常に行列が出来ているのが、近鉄の観光特急「しまかぜ」プレミアムシートの“無料体験”!
運行開始からおよそ4年半、今もなお「しまかぜ」は人気が続いています。
私も個人的に1度乗車を楽しんだことがありますが、快適なシートで食事や景色を楽しんでいると、名古屋~賢島があっという間なんですよね。
そのシートを特別料金不要で楽しめるとあって、地元の方もたくさん座り心地を楽しんでいました。
三重の鉄道における特筆すべき点といえば、やはり「伊勢神宮」へのアクセスを担っていること。
加えてJRは、尾鷲・熊野などへ向かう特急「(ワイドビュー)南紀」を運行しているのが特徴です。
キハ85系のワイドビューな窓から望む雄大な熊野灘・・・コレがたまらないんですよね。
展示の中には、JR初期に運行されたキハ65形・快速「みえ」のヘッドマークや、私も1度乗りたかった“伝説の”夜行列車「スターライト」号の愛称板といったコアなものも・・・。
国鉄時代の懐かしいヘッドマークやサボの展示もありました!
「南紀」は、天王寺~名古屋間を結んでいたキハ80系81形(ブルドッグ)による「くろしお」が、昭和53(1978)年の紀勢本線・和歌山~新宮間の電化に伴い、分割されてできた列車。
JR各社のみならず、機関区があった亀山周辺の方などの協力も受けた丁寧な展示です。
そんな展示の一角には・・・?
ちゃんと三重県の「駅弁」の特集が組まれておりました。
松阪駅、亀山駅の名物駅弁などが見えますね。
今でこそ大きな鉄道系の博物館でも、駅弁にまつわる展示が充実してきましたが、2か月ほどの企画展でありながら、今の駅弁はもちろん、昔の駅弁の掛け紙まで展示したのは見事!
各店まで足を運んだという学芸員の方の展示にかけるアツい思いがよく伝わってきます。
そこで今回は、松阪駅で駅弁を手掛ける「あら竹」の名物駅弁!「元祖特撰牛肉弁当」(1,350円)をご紹介しましょう。
「あら竹」は、創業が明治28(1895)年という老舗。
現在、日本鉄道構内営業中央会(中央会)に加盟し、「駅弁マーク」を付けることが出来る駅弁屋さんとしては、三重県で唯一の業者です。
「元祖特撰牛肉弁当」は、地元はもちろん、駅弁好きにとってはまず知らない人のいない駅弁!
国産黒毛和牛と三重県産コシヒカリの白飯、牛蒡・蓮根・蒲鉾など定番がしっかり入っています。
おなじみの緑の紙ぶたのウラ側には、駅弁誕生秘話も記載。
この駅弁が出来たのは、なんと昭和34(1959)年7月15日。
紀勢本線(和歌山市~亀山間)の全線開通を記念して出来た駅弁なんですね。
地元産・黒毛和牛(雌牛)の内ももの柔らかい部分だけを厳選、じっくり網焼きにして秘伝のたれを絡めて出来上がる「元祖特撰牛肉弁当」。
「冷めてもやわらかい、冷めても美味しい」をとことん追求した牛肉駅弁です。
肉のうま味、タレの甘みが、白いご飯によく合い、何度いただいてもクセになる味です。
ちなみに、発売当時の価格は「150円」。
当時、かけそば1杯が30~40円程度だったことを考えますと、その頃“日本一高い駅弁”と言われたのも納得です。
やはり伊勢路を訪れるなら、この駅弁を抜きに旅することは考えられません。
松阪駅「あら竹」の駅弁も展示されている「三重県立総合博物館」の「みんなののりもの大集合」は、9/18(祝)まで、17(日)には鉄道各社の体験ブースなども設けられたイベントも予定されています。
まだ3連休の予定が決まっていない方は、ぜひ足を運んでみては。
実は今回、「みんなののりもの大集合」は、松阪駅で駅弁を手掛ける「あら竹」の新竹浩子(あらたけ・ひろこ)社長にご案内いただきました。
日本を代表するブランド牛・松阪牛のお膝元、松阪の駅弁はいかに作られているのか?
駅弁膝栗毛のシリーズ“駅弁屋さんの厨房ですよ!”第7弾、いよいよ次回からです!!
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/