【ライター望月の駅弁膝栗毛】
山形新幹線「つばさ」として活躍するE3系。
実は「つばさ」のE3系には2種類あって、ライトの形状で見分けることが出来ます。
コチラの“つり目”タイプは、山形新幹線・新庄開業以降に投入されたE3系1000番台。
最近は、秋田新幹線「こまち」から改造された編成もあります。
案内表示が3色LEDで、90年代デビューの車両なので電源コンセントはまだありません。
ライトの角が丸い“ネコ目”タイプの車両は、E3系2000番台。
平成20(2008)年以降、初代山形新幹線の400系置換え用に投入された車両です。
案内表示にフルカラーLEDが採用され、窓側座席には電源用コンセントも設置されました。
そんな“微細な”形状の違い・・・、駅弁では「大きな違い」を生み出すことがあります。
米沢駅弁「新杵屋」舩山栄太郎社長のインタビュー、今回は「駅弁容器」にフォーカスします。
●容器にこだわる「新杵屋」の駅弁!
―牛肉駅弁は、しばしば「脂」との闘いだと聞きますが、そこにはどんな工夫をされていますか?
昔、「弁当が凍る」とか「冷たくて美味しくない」といった意見をいただきました。
それを解決するにはどうしようってなった時に、少し大きめの箱に保温シートなどを貼って6時間温かさが持続する容器を開発しました。
最近は「加熱式駅弁」が結構ありますけど、実はあの元となった“元祖”は、「新杵屋」が開発したものなんです。
―どうやって温めていたんですか?
この保温式容器は、鉄を反応させて温める「カイロ」がヒントになりました。
最初は平らな容器だったんですが、それだと水分が下に溜まるだけなので、ご飯容器の下に小さな穴をあけて、雫が下に落ちるようにしました。
そうすると、発熱体との反応が再び起こって「あったかさが持続する」という訳です。
つまり、「結露」を利用した保温式容器なんですね。
コレは特許も取っています。
他の業者さんもこのタイプにチャレンジしたこともありましたが、皆さんなかなか上手く行かなくて、途中でやめちゃったところも多いですね。
―そういえば、最近はこの容器を使った「牛肉弁当」・・・見ないですよね?
(舩山百栄専務から)
残念ながら、今は衛生基準が厳しくなったので、この容器は使っていません。
消費期限の問題もあります。
今、駅弁というのは、東京駅などでも「冷蔵販売」するのが基本になっているので、需要が変わってきたということもあるんですよね。
車内販売などでも加熱式の駅弁は、重さとの兼ね合いもあって、今ひとつなんです。
飛行機向けの販売が出来ないこともあります。
あと、駅弁を列車で食べるのではなく、持って帰って自宅で食べるという人も多いですから。
まさに時代の流れですよね。
●アイスクリームを売っていたから出来た「牛肉どまん中」の容器!
―容器といえば「牛肉どまん中」も角を丸くして、最後の1粒まで食べやすくした工夫がありますが、開発には時間がかかっているんですか?
全然時間かかってない。
簡単にできた背景には、容器屋さんがウチ専門というのもあります。
先代からの付き合いのある会社が山形県内(村山)にありまして、元々アイスクリームのカップの会社なんです。
(ウチも元々アイスクリームを扱っていましたから)「こんな弁当容器、できますか?」とお願いしたところ、快諾してくれました。
―「どまん中」シリーズは、中が見えるスリープ式の包装も斬新ですよね?
ただ「どまん中」じゃインパクトがないから、掛け紙の真ん中に「穴開けようか」となりました。
実は「中を見える駅弁」を作ったのも、ウチが初めてです。
(ウチの容器を作っている会社が)アイスの容器の会社なので、従来は無かった透明のふたも、簡単に作ることが出来たんです。
かくして「見える駅弁」が生まれたと・・・。
―最近は、普段あまり駅弁を食べない人の中には、「駅弁の中が見えないと不安」という声を
聴くことがありますが、これはどうしてだと思いますか?
やっぱりコンビニの普及だと思います。
コンビニが広まるにつれて、「弁当は中が見えるのが当たり前」という空気感を感じるようになっていました。
まさに「コンビニ文化が駅弁に穴を開けた」ということなんだと思います。
―牛肉弁当しかり、容器しかり、「新杵屋」は先手、先手と打ってきますよね? ドコからアイディアが湧いてくるんですか?
たぶん、そういうのが「好き」なんだと思います。
お客様の声を聴くのは勿論、それを聴いて「こうしたい、ああしたい」というのが出てくるんです。
(舩山百栄専務から)
容器については、既成のものを使われる所が多いんでしょうけど、「新杵屋」は容器にもこだわりがあるんです。
お金の計算をすると決していいことではないのかもしれませんが、やはりお客様のことを考えると、そこはお金をかけざるを得ないですよね。
(舩山社長インタビュー、つづく)
「牛肉どまん中」は、いろんな味が楽しめるのも特徴。
「牛肉どまん中(しお)」は、平成22(2010)年にレギュラー以外で初めて登場した味です。
米はもちろん、山形県産米「どまんなか」。
その上に特製の塩だれで味付けした牛そぼろと牛肉煮をのせています。
お好みでコショウをかけていただくことも出来ます。
定番の醤油味とはひと味違う「牛肉どまん中(しお)」。
女性やヘルシー志向の方をはじめ、サラッと食べたい時、ラクな気分で食べられますよ!
次回、「牛肉どまん中」の「どまんなか」たる由縁に迫ります。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/