【ライター望月の駅弁膝栗毛】
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天竜浜名湖鉄道・TH2100形、二俣本町~天竜二俣間
東海道本線の掛川と新所原の間を、浜名湖北岸まわりで結ぶ「天竜浜名湖鉄道」。
「天竜浜名湖鉄道」の前身、旧・国鉄二俣線は、昭和15(1940)年に開業しました。
海沿いの東海道本線が、運行に支障が出た場合のう回路として作られたといわれています。
浜名湖の北岸は、昔から「う回路」としての歴史があります。
戦国時代、明応の大地震で今切口が出来て、浜名湖が海と繋がったことで、海沿いの東海道は渡船が必要になったことから、浜名湖北岸の本坂通がう回路として重宝されました。
大河ドラマで描かれた時代は、東西交通の要衝として浜名湖北岸がにぎわった頃なんですね。
(参考)浜松市ホームページほか
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天竜二俣駅の転車台と扇形車庫
今年(2017年)は「天竜浜名湖鉄道」の沿線も、大河ドラマの舞台として、賑わいを見せています。
せっかくこのエリアを訪ねたなら「天竜浜名湖鉄道」に乗らなきゃ、家には帰れない!
そして出来ることなら、運行拠点となっている天竜二俣駅で毎日開催されている「転車台&鉄道歴史館ツアー」(300円、天浜線利用者は200円)に参加したいものです。
天竜二俣駅には、昔の転車台だけでなく扇形車庫も残され、登録有形文化財となっています。
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天竜二俣駅の扇形車庫
昭和15年といえば、戦争で物資が不足した時代であり、二俣は木材で栄えた所でもあることから、扇形車庫も木造の質素な造りとなっているのが特徴で、ローカル線らしい雰囲気が感じられます。
ちなみに、二俣線で蒸気機関車が活躍していたのは、昭和46(1971)年まで。
駅員の方も『残念ながらこの天竜二俣駅では蒸気機関車は見られません。見たい方は、お隣の大井川鐵道へ行ってみてください!』とガイドするなど、ローカル線同士の横の繋がりが感じられ、ちょっと温かい気持ちになれるツアーでもあります。
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鉄道歴史館
この扇形車庫の一角は、「二俣線・天竜浜名湖鉄道 鉄道歴史館」となっています。
ツアーではもちろん、この歴史観も見学することが出来ます。
さあ、気になる中はどうなっているのでしょうか?
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鉄道歴史館
もう、懐かしいお宝だらけ!
国鉄時代の駅名票はもちろん、列車のすれ違いのために必要なタブレット閉塞器など、昔の二俣線や初期の天竜浜名湖鉄道で使われていたアイテムが所狭しと陳列されています。
文化財の扇形車庫に入れる上に、しかもお宝に逢えるとは、ダブルで嬉しいもの。
その上、分かりやすい解説付きで200円、毎日ツアー開催ですから、これは有難いものです。
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鉄道歴史館
国鉄時代の時刻表をよく見ると、下りは、東海道線・豊橋まで直通していた列車もありましたが、日中は4時間くらい列車間隔が空いていた時間帯もあったんですね。
今では、日中は最低でも毎時1本の列車がやって来るダイヤになりました。
その意味では、二俣線は3セク化されたことで、便利で使いやすくなったといえましょう。
やはり、ローカル線にお客さんを呼び込んでいくには、新幹線・特急との接続を取るのはもちろん、1時間毎程度の“時刻表の要らないダイヤ”というのが、1つのカギだと思うんですよね。
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天竜二俣駅
使いやすいダイヤに加えて、「乗ってみたくなる」仕掛けも大事。
天竜二俣駅で週末に販売される「駅弁」も、乗ってみたくなる動機の1つになりますよね!
しかも、天竜浜名湖鉄道のディーゼルカーはボックスシート付ですので、駅弁にも好環境。
駅弁売場は、駅のきっぷ売り場の横にあり、天竜浜名湖鉄道のオリジナルグッズやおみやげ品と共に販売されています。
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まいたけ弁当
天竜二俣駅で、土・休日に、長年販売されている駅弁の1つが、「まいたけ弁当」(950円)。
この駅弁は、地元・浜松市天竜区で仕出しを手掛ける「味このみ きよみ」が手掛けています。
容器は既成のものですが、帯を付け、両端をテープで留めることで駅弁らしさを出しています。
今シーズンは、大河ドラマにちなんだ「直虎」シールも貼られていますね。
元々は、商工会が中心になって地の食材を出来るだけ使った開発された駅弁だそうです。
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まいたけ弁当
【お品書き】
・まいたけ炊き込みご飯
・焼き魚
・天ぷら
・シュウマイ
・蒲鉾
・玉子焼き
・煮物
・果物(みかん・ぶどう)
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まいたけ弁当
帯にも「天竜産まいたけ使用」と謳われている通り、この駅弁に使われている「まいたけ」は、浜松市天竜区の「熊」という地区で作られているものを使っています。
しかも、まいたけの原木には「広葉樹」を必ず使うというこだわりがあるのだとか。
おかずもまいたけを使うのは基本で、天ぷらの野菜などは、旬のものを使用。
季節によってちょっと違った構成を楽しめる駅弁でもあるんですね。
茶畑、天竜川、浜名湖、みかん山に登録有形文化財のレトロな駅舎が続く「天竜浜名湖鉄道」ののどかな景色によく似合う、素朴な駅弁。
素朴な見学ツアーと合わせて、のんびりと楽しみたいものです。
連載情報
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ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/