【ライター望月の駅弁膝栗毛】
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天竜浜名湖鉄道・TH2100形、天竜二俣駅
静岡県内の東海道本線・掛川と新所原(しんじょはら)の間を、浜名湖の北岸まわりで結ぶ第3セクターの鉄道「天竜浜名湖鉄道」。
JR移行直前に国鉄二俣線から転換され、今年で開業30周年を迎えました。
3セク化で列車本数は大きく増え、現在はTH2100形ディーゼルカーによる単行ワンマン列車が、ほぼ毎時1~2本運行されています。
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天竜二俣駅の転車台・車両基地見学記念硬券
「天竜浜名湖鉄道」の運行拠点となっているのは、浜松市天竜区の天竜二俣駅。
実はココ、国鉄二俣線時代の建造物がたくさん残されており、その多くは「登録有形文化財」となっている上に、今なお現役なんです。
さらに天竜二俣駅では、毎日「転車台・鉄道歴史館見学ツアー」(300円、天浜線利用者は200円)を開催していて、時間に合わせて駅へ行けば、貴重な鉄道遺産に出逢えるんです。
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天竜二俣駅・転車台
転車台・車両基地見学ツアーは、週末は10:50~、13:50~の1日2回、平日は13:50~の1回。
駅窓口で見学券を購入後、受付を済ませ、時間になると、駅員の方が駅構内を誘導してくれて、天浜線の歴史や、転車台を必要とした蒸気機関車時代の解説が丁寧に行われます。
天竜二俣駅(旧・遠江二俣駅)は、昭和15(1940)年の開業。
この転車台も、その開業当初から75年以上にわたって活躍しているんですね。
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天竜二俣駅・転車台
ツアーでは、ディーゼルカーの入れ替えを兼ねて、転車台を動かす様子を見ることが出来ます。
昔は重い蒸気機関車だったでしょうが、今は軽量のディーゼルカー1両。
負荷は以前よりだいぶラクになったかと思いますが、既に70年以上稼動していることを考えますと、このくらいの“軽さ”のほうが、見ていても安心できますよね。
訪れた日は、大河ドラマで話題の井伊直虎ゆかりのラッピング車両を回していただきました。
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直虎井の国出世飯
今年(2017年)は、大河ドラマで井伊直虎が取り上げられたことで、気賀(きが)駅周辺を中心に、例年より“かなり賑わっている”という「天竜浜名湖鉄道」。
天竜二俣駅では、土・休日の10:00から4種類の駅弁が販売されており、その1つに直虎ゆかりの駅弁「直虎井の国出世飯」(864円)があります。
調製元は、浜松市浜北区を拠点に仕出しを手掛ける「竹泉(ちくせん)」というお店です。
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直虎井の国出世飯
【おしながき】
・たたみいわしと浜名湖海苔ご飯
・竹槍串の筑前煮(大根、人参、玉こんにゃく、スナップエンドウ)
・直虎印の玉子焼
・浜松唐揚げ(トリイソース味)
・浜松ぎょうざ
・ブロッコリー
・三ヶ日牛すき焼
・あさりのしぐれ煮
・わさび漬け
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直虎井の国出世飯
海苔ご飯の上にたたみいわしで、井伊の「井」を表しているのはインパクトがありますね。
訊けば社長さんのアイディアとか。
しらすや海苔といった遠州灘、浜名湖の幸を想起させる食材を使っているのも好印象です。
すっかり名物になった「浜松ぎょうざ」や三ヶ日牛なども入って、浜松らしさもたっぷり!
ちゃんと「わさび漬け」も入って、静岡の駅弁の基本を踏まえたものとなっています。
「竹泉」によると、平成27(2015)年9月から「天竜浜名湖鉄道」と共に駅弁開発が始まったそう。
その過程で大河ドラマの放映が明らかになったこともあり、浜松商工会議所の「家康・直虎 新商品開発プロジェクト」ともコラボし、直虎ゆかりの駅弁になったということです。
ドラマは間もなく最終回を迎えますが、弁当は今後も販売継続予定とのこと。
大河ドラマ同様、充実の構成だけに、ブラッシュアップしながら、定着してほしいものです。
次回も、天竜二俣駅の駅弁と共に「転車台・鉄道歴史館見学ツアー」の後編をお届けします。
連載情報
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ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/