【ライター望月の駅弁膝栗毛】
鬼怒川温泉18:09発の「SL大樹6号」は、終点・下今市に18:43着。
今の時期はすっかり日が暮れて、JR四国から譲り受けた国鉄14系客車の簡易リクライニングシートに身を委ねていると、すっかり夜汽車の気分。
学生の頃、14系の一晩中寄りかかっていないと“バッコン”とリクライニングが戻ってしまうシートで、うつらうつらしながら、快速「ムーンライト松山」で初めて四国へ行った時のことを思い出しました。
C11形蒸気機関車は、運行終了後、青い14系客車と切り離され、下今市駅の転車台に乗って、「下今市SL機関庫」に入庫します。
私が「大樹6号」に乗った11/6(月)は、この「大樹6号」に乗車したお客さん限定のイベント、下今市SL機関庫における「SL缶替え(かまがえ)等作業見学会」が開催されました。
実はコレ、東武鉄道の創立120周年記念で、この日だけ行われたプレミアムなイベント。
係員の皆さんの誘導で、機関庫に足を踏み入れると、そこには先ほどまで走っていたC11形蒸気機関車と、補機として最後尾に連結されていたDE10形ディーゼル機関車の姿が間近に!
鉄道好きには、もうたまらない瞬間です!!
「缶替え(かまがえ)」とは、蒸気機関車が石炭を燃やした後に出来る燃えカスを、水と一緒に捨てる作業のことで、蒸気機関車の運行終了後に行われる大事なメンテナンス作業。
もうもうと立ち上る湯気と共に、時折、まだ赤く光っている石炭がゴロっと落ちていくこともあって、見ているだけで迫力の作業を、平日の夜ながら、およそ40名の皆さんが見つめました。
今回は創立120周年記念のスペシャル企画として行われたようですが、より一層、蒸気機関車が身近に感じられたこの企画、やはり「大樹6号」利用者限定としたところが面白い!
比較的予約が取りやすいとみられる上り最終6号の乗車率アップにも貢献したことでしょう。
今後も「大樹6号」利用者だけのプレミアム特典として、時々、このようなイベントを開催していただけたら嬉しいなぁと、1人の鉄道好きとして思いました。
「SL大樹」の運行開始に合わせて、新たなSLの聖地となった「下今市駅」。
駅舎自体もレトロな雰囲気に合わせてリニューアルされました。
そして、下今市駅のホームで長年、立ち売り販売されていた「アザレア弁当」が調製する駅弁も、SLの運行開始に合わせてリニューアル!
「SL大樹 懐かしの下今市立ち売り弁当」(1,000円)として販売されるようになりました。
【お品書き】
・御飯(白飯・鶏そぼろご飯ほか、栃木県産)
・鶏肉の照り焼き
・エビフライ
・ゆば煮物
・厚焼き卵
・鮭の焼き物
・煮物(筍、いんげん、こんにゃく、山菜)
・きんぴらごぼう
・しそ塩漬け
・オレンジ
懐かしの下今市立ち売り弁当
下今市駅では、平成27(2015)年まで東武日光行と会津田島行が併結した当時の快速(区間快速)が分割・併合される時間帯を中心に、素朴な幕の内弁当が立ち売りされてきました。
私自身も、下今市駅で乗り換えたり、停車時間がある列車を使う時は、いつも立ち売りの方から駅弁を買うのが常でした。
この立ち売り駅弁のDNAを引き継ぐ形で、内容を今の時代に合わせてバージョンアップ!
「なつかしの下今市立ち売り弁当」となって今回、下今市駅のホーム売店をはじめ、東武日光駅や鬼怒川温泉駅でも販売されるようになりました。
やっぱり“汽車”には、昔ながらの幕の内がよく似合う!
下今市の立ち売り時代を知る方ならぜひ、この駅弁で「SL大樹」の汽笛の音と共にノスタルジックな味を楽しんでみるのがいいでしょう。
東武鬼怒川線の下今市~鬼怒川温泉間は、特急スペーシアに最新鋭の特急リバティ、さらにJRから乗り入れの253系電車、会津鉄道からのディーゼルカーに「SL大樹」と、電車・気動車・客車列車がひっきりなしにやって来る「鉄道のテーマパーク」と言ってもいい路線となりました。
そんなバラエティに富んだ列車に揺られて、鬼怒川・川治温泉、奥鬼怒の秘湯はもちろん、塩原やその先・会津に点在する数々のバラエティ豊かな温泉へ・・・。
この晩秋から冬にかけての「鉄道温泉旅」は、「SL大樹」を組み合わせた日光・鬼怒川~会津のルートが面白そうです!
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/