【ライター望月の駅弁膝栗毛】
宗谷本線・豊富駅に入ってきたキハ54形気動車の普通列車。
豊富駅に停まる普通列車は、下りが7:18、11:16、18:58の3本、上りが6:05、11:17、18:58、21:01の4本で、短くて2時間おき、長い時は6時間以上の空白時間があるダイヤになっています。
でも、これでは病院通いなどの年輩の方にとっては辛すぎるということで、沿線の地元自治体がJRの大口顧客となり乗車券+10円で特急自由席に乗れる「町民乗車票」が販売されています。
豊富町の場合は、駅併設の観光協会で販売しており、実質的に駅で買えるようになっています。
そんな豊富駅は、サロベツ湿原への玄関口であると同時に、日本最北の温泉郷「豊富温泉」への玄関口となっています。
豊富温泉は、大正14(1925)年から石油の試掘を行ったところ、翌年5月に地下およそ960mから高圧の天然ガスと共に43℃のお湯が噴出したことから開湯した温泉です。
豊富駅から温泉街までは「沿岸バス」の路線バスで10分ほど(330円)で行くことが出来ます。
豊富温泉随一の歴史を誇る宿が、「川島旅館」です。
昭和2(1927)年創業で、今年創業90周年の節目を迎えました。
これに先立って、平成28(2016)年7月に建物が全面リニューアルされ、木の温もりが感じられて、どこか懐かしい、でもアメニティは今どきの、とても居心地のいい宿に生まれ変わりました。
私自身は7年ぶりの再訪ですが、新しくなってからは初めてということで、ワクワクの訪問です!
豊富温泉の特徴は、何と言ってもその泉質にあります。
世界的にも珍しい植物由来の油を含んだ、黄色く濁った温泉が湧きだしていて、浴室の扉を開けると油の匂いが漂ってきます。
川島旅館の風呂には、35.0℃、ph7.8、成分総計13,220mg/kgの含よう素―ナトリウムー塩化物温泉が、奥の小さい浴槽はそのまま、手前の大きい浴槽には加温され、掛け流されています。
リニューアルによって露天風呂も登場、今の時期はピリッと張りつめた冷たい空気を感じながら、温かいお湯でぬくぬくするという、北国ならではの湯浴みが楽しめます。
塩の温泉なので体はポカポカしますが、上がろうとすると油で肌がヌメッとするのが面白い感じ。
この珍しい油の成分ゆえ、豊かな効能が認められており、皮膚の病気などで悩んでいる方には、
豊富温泉を“聖地”と評して、湯治で訪れる方も多いのだそうです。
全く個人的な感想ですが、私自身も乾燥で肌がカサつき、痒みを感じていたタイミングで、豊富のお湯に入ったところ、程なく快方に・・・改めて自然のチカラはすごいなぁと感じた次第です。
(参考:豊富温泉公式ホームページ)
今回は「ひとり旅プラン」でお世話になったので、サービスで付いてきたのが「湯あがりプリン」。
「川島旅館」といえば、今やすっかり豊富産の牛乳を使った「プリン」で有名ですよね。
私自身、決して牛乳が得意ではないのですが、コチラのプリンは別格。
お湯は肌に優しく、プリンはお腹に優しいのです。
そんなお宿で時間を過ごしているうちに、自然と優しい気持ちになれるんですよね。
さて、豊富といえば、北海道を代表するコンビニの牛乳も作られている酪農の町。
今回は牛つながりで、稚内駅弁の「牛帆立弁当」(1,230円)をご紹介しましょう。
海鮮系が多くなりがちな北海道の旅にあって、肉駅弁の存在は、大事なアクセント。
稚内駅では、駅ビル「キタカラ」1階にある「ワッカナイセレクト」で、午前10時から販売。
販売者は「稚内駅立売商会」です。
・牛肉煮
・帆立バター醤油煮
・茹でとうもろこし
・茹で人参
・菜の花大根漬
・醤油ご飯(北海道産米使用)
・山わさび醤油漬
以前、販売されていた「宗谷黒牛×帆立弁当」をリニューアルする形で生まれた「牛帆立弁当」。
基本コンセプトは変わらず、コトコト煮込まれた牛肉は、付添のカップに入った山わさび醤油漬と一緒にいただくのがお薦め。
帆立のバター醤油焼きの風味もよく、食欲をそそります。
このバター醤油風味がコーンや茹で人参ともマッチしており、北海道らしさを醸し出しています。
ウニ、カニ、タコ三昧になりそうな稚内周辺の旅だけに、有難い存在です。
豊富温泉の日帰り入浴を楽しむなら、「町営温泉入浴施設 ふれあいセンター」。
一般浴場に加え、湯治利用者向けの浴場が別にあるのが特徴で、共にかけ流しです。
また、豊富温泉へのアクセスに欠かせないのが、「沿岸バス」の豊富留萌線。
豊富駅始発ですが、幌延駅でも宗谷本線と繋がっており、時間帯によって乗り継げることも。
またこの路線自体が、旧国鉄羽幌線の代替バスなので、廃線探訪にも重宝します。
最近はオフでも人気の「川島旅館」、予定が決まったら早めの予約を・・・とのことでした。
温泉好きなら、道北の旅ではスルー出来ない「豊富温泉」。
計画的に鉄道とバスを組み合わせれば、クルマを借りなくても辿りつける有難い温泉地です。
つまりは、鉄道旅派にも「優しい」豊富温泉。
1日6本の列車しか無くても、北緯45度まで足を運ぶ価値のあるユニークなお湯です。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/