稚内駅「最北かにめし」(1,080円)~希望をつなぎたい!日本最北端の線路

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【ライター望月の駅弁膝栗毛】

キハ261系 特急 宗谷

キハ261系・特急「宗谷」、宗谷本線・抜海~南稚内間

札幌から5時間あまりをかけて稚内へやって来たキハ261系の特急「宗谷」。
宗谷本線では、平成に入っても急行が健在でしたが、平成12(2000)年に特急化され、このキハ261系の登場と共に「スーパー宗谷」として今年春まで2往復運行されました。
今年春のダイヤ改正による特急列車再編で、札幌発着の1往復のみが「宗谷」に・・・。
昔、「スーパー○○」という特急が流行りましたが、最近は列車の愛称も原点回帰していますね。

稚内駅

稚内駅

「宗谷」は、南稚内に停まって、終着の稚内へ。
稚内は、日本最北端の駅として有名です。
「駅弁膝栗毛」では、今年既に「最西端」の佐世保と「最東端」の東根室をご紹介していますが、この年末に至って、最北端・稚内にも到達。
今年は鹿児島中央まで行きながら、最南端の西大山(指宿枕崎線)に行けなかったのが残念!

稚内駅 日本 最北端 線路

稚内駅・日本最北端の線路

先ほどの最北の線路は、駅舎を突き抜けるように、外まで伸びたような作りになっています。
稚内駅は、平成24(2012)年に再開発によってリニューアルされ、現在の姿になりました。
この際、駅の位置が以前と比べて手前になったことから、駅前バスターミナルに、かつての車止めを使って、その車止めがあった同じ所にモニュメントとして「日本最北端の線路」が作られました。
駅舎はモダンになりましたが、鉄路の歴史は後世にしっかりと伝えられることになった訳です。

稚内駅 日本 最北端 線路

稚内駅・日本最北端の線路

しかも、この車止めの先には、レールのようなタイルが伸びています。
実はこの稚内駅から先にも、昭和13(1938)年~昭和20(1945)年までの7年間、線路が続いていて、稚内桟橋駅という駅(乗降場)がありました。
そして稚内の港から先には、樺太(今のロシア・サハリン)の大泊へ向け、鉄道省の稚泊連絡船が運航されていたんですね。

稚内港北防波堤ドーム

稚内港北防波堤ドーム

その時代の名残を今に伝えるのが、稚内市街地のシンボル的なスポットとしておなじみの「稚内港北防波堤ドーム」です。
ここに通じる鉄道などに、波しぶきがかかるのを防ぐために、昭和6(1931)年から昭和11(1936)年まで、およそ5年をかけて建設されました。
昭和50年代に改修工事が行われ、今では「北海道遺産」として大事に保存されています。

稚内港北防波堤ドーム

稚内港北防波堤ドーム

晴れた日の朝、北防波堤ドームを訪れると、規則的で美しい朝日が差し込んでいました。
古代ローマ建築物を思わせる太い円柱と優美な曲線によって生み出される自然のアート。
高さ13.6m、柱の内側から壁まで8m、延長427m、柱の総数70本。
今回、稚内を訪問する中で、宗谷本線の活性化に当たり、かつての「稚内桟橋駅」を復活させたいと考えている方も少なからずいると聞きました。
列車で最北の駅に降り立った瞬間、この異国情緒あふれる空間が待ち受けていたら・・・、鉄路の魅力はもっと輝くハズです。

(参考)稚内市ホームページ

最北かにめし

最北かにめし

そんな稚内の「日本最北端の線路」を思い浮かべていただきたいのが、稚内駅弁の定番、「最北かにめし」(1,080円)です。
北海道のかにめし駅弁は数多くあれど、「最北」を名乗れるのは稚内ならでは。
販売者の「稚内駅立売商会」によると、稚内駅弁の中では随一の歴史を誇るといいます。
コチラも駅舎併設の「ワッカナイセレクト」で午前10時からの販売です。

最北かにめし

最北かにめし

大きなカニの絵が描かれた掛け紙を外すと、期待通りの「かにめし」が現れました。
カニの形を彷彿とさせる盛り付けも基本ですが、基本に忠実な駅弁は嬉しいもの。
いわゆる“マルズワイガニ”と呼ばれることで知られるオオエンコウガニを使用しており、炒ったカニの中に所々見える太めのカニは素揚げされていて、素材の味が活きています。
醤油の味付ご飯にはもちろん、北海道産米が使われています。

最北かにめし

最北かにめし

鉄道好きなら、やっぱり稚内の駅弁といえば、「かにめし」なんですよね。
今から15年近く前の平成15(2003)年、当時の稚内駅弁は、又重さんという方が特急に合わせて、1人で「さいほくかにめし」(当時は平仮名表記)を10個程度作り、ケースを持って販売されていました。(当時のニッポン放送「駅弁膝栗毛」アーカイブ・・・ページ下部に稚内の駅弁があります)
リニューアルされながら、この稚内駅弁の系譜を継ぐのが「最北かにめし」。
駅舎・作り手が代わっても、しっかり稚内駅弁に「最北かにめし」があることが嬉しいんです!

キハ261系 特急 サロベツ2号

キハ261系・特急「サロベツ2号」、宗谷本線・稚内駅

宗谷本線の名寄以北は、JRが「単独では維持することが困難な線区」とする区間。
しかし、宗谷本線沿線をはじめ、終着の稚内にも、線路を途切れさせてしまっては、あまりに勿体ない魅力がいっぱいあるのです。
加えて、“他国と接する街”だからこそ、私たち1人1人が関心を持ち続けることが大事な地域。
「日本最北端の線路」は“日本ってイイなぁ、カッコいいなぁ”と感じさせるような、より一層魅力あるモノにしないといけない線路だと私は思います。

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

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