【ライター望月の駅弁膝栗毛】
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キハ183系・クリスタルエクスプレス、釧網本線・摩周駅
北海道における観光列車の可能性を探る、北海道庁主催「北海道観光列車動向調査モニターツアー・氷雪のネイチャーロード 純白冬紀行・釧網本線」のBコース(網走発)。
網走を発って6時間、川湯温泉駅からバスで摩周湖を経由し、摩周駅にやって来ました。
ココからは再び、キハ183系「クリスタルエクスプレス」の旅。
摩周15:31発の普通列車・網走行の到着を待って、釧路へ向けていざ出発です!
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キハ183系・クリスタルエクスプレス
摩周から30分あまり走って、最初の停車駅は茅沼(かやぬま)。
茅沼といえば、北海道を代表するあの鳥に出逢える可能性のある駅ですよね。
そう、「駅弁膝栗毛」でも、先週ご紹介したあの鳥!
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茅沼駅付近のタンチョウ
国の特別天然記念物にも指定されている、日本最大級の野鳥「タンチョウ」です。
ツアーに参加された“鉄分多め”の皆さんも、この時ばかりは、クリスタルエクスプレスよりも、タンチョウにレンズを向けていました。
ツルの撮影がメジャー化した最大の功労者は、やっぱり「池中玄太80キロ」なんでしょうね。
茅沼駅に降り立つと、「もしもピアノが弾けたなら」や「鳥の詩」といったTVドラマの名曲が、自然と脳内リピートされてくるものです。
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冬の釧路川
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釧路湿原の夕日
クリスタルエクスプレスは、15分あまりの停車時間の後、茅沼駅を発車。
ココから先の釧網本線は、夏は「くしろ湿原ノロッコ号」、冬は「SL冬の湿原号」でおなじみの釧路湿原へと入っていきます・・・が、残念ながらこの日は既に日没後の世界。
もう少し明るければ、釧路川のゆったりとした流れや湿原に沈む夕日を観られたかも!?
(画像はツアーとは別の日のものです)
地元のガイドさんの湿原の自然へのアツい思いを車内放送越しに聴きながら、皆さんモニターツアーのアンケートにペンを走らせます。
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いわしのほっかぶりずしとサーモン寿司詰合せ
タンチョウの赤、湿原の夕日を思い浮かべたら、“赤いもの”が食べたくなっちゃったり!?
そんなわけで釧路駅・キヨスクの隣、「釧路市水産加工業協同組合 シーフードショップSKIP JR釧路駅店」で見かける“赤い掛け紙の駅弁”をご紹介。
その名も「いわしのほっかぶりずしとサーモン寿司詰合せ」(1,150円)!
釧路市内の「弁当工房 引田屋」が作っている駅弁です。
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いわしのほっかぶりずしとサーモン寿司詰合せ
引田屋の弁当の定番は、かつてあった特急「スーパーおおぞら」の車内販売にも積み込まれ、駅弁膝栗毛でもご紹介した「いわしのほっかぶり」。
いわしの握り寿司を甘酢大根で包むことで、“ほっかぶり”に見立てた、釧路駅随一の秀逸な“駅弁”です。
全8カンのうち、半分の4カンをサーモン寿司としたのがこの“詰合せ”なんですね。
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いわしのほっかぶりずしとサーモン寿司詰合せ
掛け紙を外し、ふたを開けると、鮮やかなサーモンピンクが視界に飛び込んでくると同時に、酢の香りがやや強めにフワッと漂い、食欲をそそります。
ベーシックな「いわしのほっかぶり」はこの酢の効きがよく、不思議とどんどん箸が進んでしまう逸品ですが、これに脂がのったサーモンが加わることで、いい味覚のアクセントに・・・。
食べ飽きることがない組み合わせに仕上がっています。
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キハ183系・クリスタルエクスプレス
キハ183系・クリスタルエクスプレスは、定刻通り17:07、釧路駅に到着しました。
北海道庁が主催し、秋の宗谷本線・釧網本線、そして冬の釧網本線を舞台に3つのコースが設定された「北海道観光列車動向調査モニターツアー」、今季はひとまずここまで。
改めて思ったのは、釧網本線の沿線は、圧倒的に車窓が美しいということ。
この路線の旅を楽しまずして、日本の鉄道の魅力は語れないのかもしれません。
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キハ54形・快速「しれとこ」、釧網本線・知床斜里駅
今年(2018年)2月7日、北海道庁の有識者会議が「将来を見据えた北海道の鉄道網のあり方について」という報告書を提出し、各メディアでも伝えられています。
報告書にはいわゆる「お金の問題」だけでなく、観光の視点やロシアとの関係・北方領土、貨物輸送に関する視点なども盛り込まれました。
この日、沖縄北方担当大臣の方が、「北方領土の日」を言い間違えるニュースもありました。
悲しいかな、いみじくもこれが国民の多くにとっての北海道、さらにはその北にあるロシアへの「意識」を現しているのかもしれません。
だからこそ1人でも多く、北海道に足を運んで、その美しい景色を観てほしいもの。
流氷を眺め、野生動物を観て、美味しいものを食べることは、自分自身の楽しみでありながら、回りまわって、自分の国を護るということに繋がるように思います。
「魅力的な観光列車」があることは、大いにそのきっかけに成り得るのではないでしょうか。
連載情報
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ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/