【ライター望月の駅弁膝栗毛】
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SL冬の湿原号、根室本線・釧路~東釧路間
やっぱり北の大地には、蒸気機関車の姿がよく似合います。
今シーズンも北海道のJR線で唯一残るSLの観光列車、釧網本線「SL冬の湿原号」の運行が1月27日(土曜日)から始まりました。
C11形蒸気機関車171号機が14系客車と旧型客車のカフェカーを混結した5両の客車を率いて、凍てつく釧路川の鉄橋を渡っていく様子は絵になりますね!
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SL冬の湿原号、根室本線・釧路駅
「SL冬の湿原号」は、釧路駅の3番ホームを11時05分に発車。
釧路から釧網本線の標茶(しべちゃ)まで、およそ48kmを約1時間半かけて走ります。
先頭に立つC11形蒸気機関車の171号機は、長年北海道で活躍し、昭和50(1975)年から標茶町の公園で静態保存されていましたが、平成11(1999)年のTVドラマを機に復活。
翌・2000年から「SL冬の湿原号」として、雪で真っ白な釧路湿原の真ん中を、真っ黒な蒸気機関車がモクモクと煙を上げて力走しているのです。
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釧網本線・茅沼駅付近のタンチョウ(2006年撮影)
「SL冬の湿原号」の魅力は、何といっても「ツルに逢えるSL」!
途中の茅沼(かやぬま)駅は、国の特別天然記念物・タンチョウが見られる駅として有名。
SLとツルのツーショットが見られる可能性があるのも、全国でココにしかないものです。
ツルがやって来るようになったのは、国鉄時代の昭和の中頃、茅沼駅が有人駅だった時代に餌やりを始めたのがきっかけなんだそうです。
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ランチボックス
さて、「SL冬の湿原号」の2号車は「カフェカー」という位置づけで、車内販売があります。
これまでも地元の駅弁屋さんによる幕の内風の車内限定弁当がありましたが、今シーズンは大きくリニューアルされ、「ランチボックス」(1,080円)が登場しました。
コチラのボックスは、釧路市内のフレンチレストラン「イオマンテ」の監修により、レストランを運営する株式会社フードハーツとJR北海道釧路支社の共同開発で生まれました。
コチラの会社、元々SLや夏のノロッコ号で車販のプリンを手掛けていた会社なんだそうです。
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ランチボックス
【お品書き】
・ローストした阿寒ポークと季節野菜ラタトゥイユのホットドッグ
・釧路産パプリカと豆のサラダ
・知床産若鶏と釧路・石井農園の根菜類の煮込み
阿寒ポークは低温で10時間かけてじっくり焼き上げたローストポーク、知床産の若鶏はもも肉を使用し、契約している農家さんから仕入れた地元産の野菜を使用とのこと。
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ランチボックス
北海道・道東産の食材をふんだんに使った、彩りのいいちょっとお洒落な食事になりました!
ご飯ではなくパンとしたのも、90分という乗車時間を考えればちょうどいいと思います。
「イオマンテ」によりますと、最近の「SL冬の湿原号」は海外からのお客さんが多いことから、誰でも気軽に食べられるパンをメインで行くことになったそう。
また、今回の開発に当たっては、敢えて魚、特に「サーモンとカニを絶対に使わない」ことを意識して、地元の肉と野菜で構成したといいます。
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SL冬の湿原号(2006年撮影)
このセンス、好きですねぇ!
実際に北海道の鉄道旅をしていますと、行く先々で“魚づくし”になってしまい、列車の中まで魚では、お金を出して食べてみようという気になりにくいんです。
このボックスなら車両のレトロな雰囲気にもマッチ、小腹を満たす程度で済んで、標茶(釧路)到着後、地元のお店にもお金を落とせるくらいの、“胃袋の余裕”が確保できますよね。
せっかく中味がいいので、欲を言えば、もう少し包装に“ときめき”を作ってほしいもの。
如何せん、まだ発売から2日ですから、これからのバージョンアップに期待です。
「ランチボックス」は、「冬の湿原号」車内限定、個数限定で販売しています。
確実に入手したい場合(個人)は、乗車3日前まで電話予約が可能です。
(北海道ジェイ・アールサービスネット釧路営業所、0154-22-0329、10:00~17:00土日祝除く)
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SL冬の湿原号
今シーズンの「SL冬の湿原号」の運行日は、2/3~13、2/16~20、2/23~25です。
C11形蒸気機関車は、釧路11:05発が前向き、標茶14:00発は後向きで連結されます。
SLのビジュアル的には、やはり釧路発の列車のほうがカッコよく見えますよね。
例えば、釧路発の列車を、釧路駅近くで撮影した場合、釧路14:14発の釧網本線・網走行で、塘路(とうろ)まで行けば、4分待ちで標茶発の列車に乗れます。
この形なら、1日でSLの「撮り」と「乗り」を楽しむことも可能です。
昭和50(1975)年、国鉄最後のSLが走った地・北海道に残る唯一のSL「冬の湿原号」。
厳しい寒さの中だから楽しめる、極上の汽車旅があります。
連載情報
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ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/