【ライター望月の駅弁膝栗毛】
国鉄時代から活躍してきた115系電車の引退が各地で迫る中、かつてよく相棒を組んでいたのが「郵便・荷物列車」。
しばしば長距離を走る鈍行列車の先頭や最後尾に、ちょこんと連結されていたものです。
国鉄末期に、このよう車両はほぼ廃止されましたが、一部は事業用車両として生き延びて、長野地区ではしばしばお目にかかることも出来ます。
長野地区で見られる「クモユニ143」という車両は、1両に運転台(ク)、モーター(モ)、郵便車(ユ)、荷物車(ニ)という4つの用途を示す形式が与えられた車両。
昭和56(1981)年に身延線に投入され、最初はワインレッドに白い帯を巻き、115系電車の甲府方に連結されていましたが、1985年からは関東甲信越地区に活躍の場を移しました。
東京では90年代、両国から千葉方面へ新聞輸送列車として走っていたと記憶しています。
私が最初に鉄道に興味を持ったのは、家の前を走っていた身延線のクモユニ143の前身、旧型国電のクモハユニ44という車両で、子供でも「〒」マークが認識できたのがきっかけ。
ココから「〒」マークが付いた車両が来る時間に“法則”があることに気付き、時刻を調べ出し、列車が来ると、ワクワクするようになってしまったという訳です。
クモハユニ44は、郵便と荷物の車両でありながら1両の半分は普通車で、一般客でも乗車出来ましたので、その“ごった煮”のような感じが少年の心をくすぐってくれました。
さて、現在のクモユニ143が活躍する信州にちなんで、今回は長野駅に去年(2017年)に登場した新作駅弁「信州山ごはん 八彩(はっさい)弁当」(1,300円)をご紹介。
去年、長野県で行われた観光キャンペーン「信州デスティネーションキャンペーン」に際して、登場した駅弁です。
製造元は、長野駅弁を手掛ける「デリクックちくま」です。
【お品書き】
・俵むすび(梅)
・俵むすび(野沢菜)
・信州サーモン押寿司
・信州産牛時雨煮ご飯
・信州サーモン味噌焼き
・信州ポークカツ
・西山淡竹(はちく)筍 木の芽みそ和え
・厚焼き玉子
・野沢菜わさび漬け
・長芋酢漬
・りんごコンポート
・杏シロップ
「八彩弁当」の名にふさわしく、8つの彩りある食材がギュッと詰まった駅弁。
信州ポークカツ、信州サーモンの押寿司など信州産食材にこだわっているのも特徴です。
ご飯が少なめなのも、今どきのトレンドを押さえていていいですね。
善光寺の門前町に当たる長野だけに、落ち着いた弁当の構成になりやすいものですが、この駅弁ならバラエティ豊かなおかずで、信州のいいトコどりが出来そう。
「デリクックちくま」によると、去年7月の発売以来、売れ筋駅弁になってきているそうです。
小さい頃、身延線の郵便・荷物電車が「クモハユニ44」から「クモユニ143」になった時は、一般客が乗れるスペースが減ったため、少し混みやすくなったなぁと感じていました。
しかし身延線の115系電車は10年以上前に引退した中、クモユニ143は色や役割が変わりながら、しなの鉄道の115系などと一緒に活躍しているのは、今となっては嬉しく思います。
決して“お荷物”ではない元・荷物電車、大事な役割を担ってまだまだ走ってほしいものです。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/