【ライター望月の駅弁膝栗毛】
今から34年前、昭和59(1984)年の冬も、冬季五輪があり、寒さが厳しい冬でした。
静岡は温暖ですが、この年の冬は「しもやけ」が出来たので、よく憶えているんですよね。
その中、2月1日に国鉄のダイヤ改正が行われ、都市圏の近距離電車が増発されました。
静岡地区の東海道本線・興津(おきつ)~島田間には、「するがシャトル」が誕生。
静岡の211系電車には、この「するがシャトル」の系譜を継ぐ「SS編成」があります。
正面左下の窓枠に小さく「SS○○」と付番されていますので、鉄道好きなら気付く筈です。
それまで静岡地区の東海道線は概ね30分間隔の運行でしたが、「するがシャトル」の誕生によって、15分間隔となり、昭和61(1986)年のダイヤ改正では10分間隔になりました。
合わせて飯田線から2両編成の119系電車が転属して、赤と白のオリジナル塗装で活躍。
119系電車の活躍は短期間でしたが、後継となった211系電車は、興津~島田間・10分間隔のダイヤと共に、今も静岡地区の通勤・通学輸送の主力となっています。
さて、静岡駅の駅弁を手掛ける「東海軒」でも、着実に存在感を増している肉駅弁。
去年(2017年)秋には、新作の「ブラックアンガス牛カルビ重」をご紹介しましたが、この駅弁が生まれるきっかけになった駅弁が「網焼き手焼国産牛肉弁当」(980円)。
従来は黒い掛け紙+黄色い(?)綴じ紐の駅弁でしたが、黒い包装の「ブラックアンガス・・・」が誕生したこともあってか、赤いスリープ式の包装にリニューアルされました。
包装を開けると、タレのいい香りと共に、焼肉にサンチュのような葉っぱが挟まっていて彩りがよく、本格的な焼肉屋さんのような焼肉弁当が現れました。
しかも1枚1枚手焼きされた牛肉は、冷めてもしっかり柔らかく、これぞ「駅弁屋さんの焼肉」。
「ブラック・・・」誕生後も、手間やコストがかかるこの駅弁を残してくれたのが有難いものです。
同じ牛肉駅弁でも、肉の種類によって「食べ比べ」が出来るのは嬉しいですよね!
老舗駅弁屋さんの「本気の焼肉」も、味わう価値アリです。
長距離鈍行旅派の中には一家言持つ方も多い静岡地区の東海道本線ですが、クルマ社会の静岡地区にあって、30年以上「10分間隔」でやってくる普通列車が維持されているのは、率直に素晴らしいことだと思います。
時刻表をあまり気にせず、旧東海道の宿場町を辿りながら、きままに「途中下車」を楽しむのが、静岡の東海道線の楽しみ方なのです。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/