連載開始から1年、徒然なるままに

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【報道部畑中デスクの独り言 第56回】

世の中はゴールデンウィークですが、早いもので小欄も開始から1年が経ちました。前回から回数を記していますが、今回で56回目となります。ほぼ1週間に1度のペースで更新させていただきました。分野別では経済系(自動車含む)19回、宇宙・科学系9回、気象・災害系8回、グルメ(!)6回、社会系4回、国際4回、政治(都政含む)3回、スポーツ系2回となります。私は経済・科学技術の分野を取材の軸にしている関係で、そうした関連が多いですが、まさに徒然なるままに書かせていただいています。

ところで、小欄では第1回~第5回で現地を取材した韓国大統領選挙についてお伝えしました。あれから1年、韓国と北朝鮮は南北首脳会談を実現しました。1年前の記述を振り返ると、なるほどと思います。

韓国 大統領 選挙 文在寅 旋風

1年前、韓国大統領選挙は文在寅旋風が吹き荒れた

「国を強くする指導者であってほしい」

文在寅氏に投票すると話していた当時79歳の男性の声です。文在寅大統領は選挙公約で、「北朝鮮の核問題の解決」をいの一番に挙げた上で、「朝鮮半島新経済地図」構想、「南北朝鮮の市場の統合」「南北基本協定」を挙げていました。

今回の南北首脳会談は「歴史的な“政治ショー”」といわれます。確かに肝心なのは「非核化」がどのようなロードマップで進められるのかということですが、そうした具体的なことは明らかになっておらず、加えてこれまでの北朝鮮の“実績”を鑑みると、手放しで歓迎すべきものではないということは明白です。とは言え、この1年で文大統領が少なくとも上記の公約実現のために、歩を進めているのは認めざるを得ないところです。

小欄では当時、韓国が考える「強い国」とは何だろうと考えてみました。日本流に考えれば「北朝鮮の脅威に対抗するため、関係国と緊密に連携する」ということになりますが、韓国の世論は「北朝鮮とパイプを太くすることで大国に対し、キャスティングボートを握れる国こそが“強い国”」と言っているように聞こえます。その究極は終戦協定が締結され、朝鮮半島が統一されることかもしれません。

そこに至るには長い道のりが予想されます。しかし、仮にそうなった暁には北東アジアの安全保障環境は大きく変わります。日米韓の緊密な連携は見直さざるを得なくなるでしょう。一方、北朝鮮にはレアメタルなどの資源が豊富に眠っているとも言われます。北東アジアの開発が活発になれば、経済・産業面での勢力地図も大きく変貌する可能性もあるのです。

非核化と拉致問題解決のために、日本が粘り強く取り組むのはもちろんのことです。一方で、今後は上記のような様々な可能性・選択肢もテーブルに載せ(あるいはテーブルの下に隠しながら)、臨んでいく必要が出てくるかもしれません。

朝鮮半島情勢のような外交面だけではありません。国際社会は我々日本人が思っているよりずっと早く、着実に動いています。私が取材している経済・科学技術の分野、最近は次世代社会のキーワードを目にしない、耳にしない日はありません。「仮想通貨」「ブロックチェーン」「フィンテック」「自動運転」「人工知能」「IoT」…これらについては事あるごとにお伝えしていきますが、こうした時代の変化に我々はどのように対応したらいいのか…真剣に議論すべきだと思います。

翻って、日本の国会ですが…残念ながら1年前もいまも全く同じような議論が続いていると映ります。もちろん「森友問題」をはじめとする財務省の一連の不祥事を軽視していいとは申しません。しかし「いま私たちは歴史の転換点に立っているのだ」という自覚が、国会審議からはほとんど感じられないのが正直なところです。
いささか旧聞に属しますが、ビジネスの世界で「ゆでガエル理論」というものがあります。カエルは熱いお湯に入れられると驚いて飛び出しますが、水から徐々に熱くしていくと温度変化に気づかず、水温に慣れていきます。しかし水が熱湯になった時に、カエルは飛び上がることができずにゆで上がって死んでしまう…科学的な根拠はないとされていますが、これはつまり、慣れた環境に浸りすぎて変化に気づかず、変化を感じたころにはすでに時遅し…ということに例えられます。メディアの端くれである私も自戒を込めてなのですが、日本もこんなことにならぬよう、手を打っていく必要があるのではないかと生意気ながら思います。

連載から1年に当たり、文字通り徒然なる心境をお話しいたしました。「畑中デスクの独り言」、時に真剣に、時にはユルく…これからも続けてまいります。今後もどうぞよろしくお願いいたします。

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