米朝首脳会談 非核化と金正恩の金庫「39号室」の関係
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6/12 FM93AM1242ニッポン放送『飯田浩司のOK! Cozy up!』今日の聴きどころ!②
今日、米朝首脳会談開催。各国の思惑は?
7:10~お早う!ニュースネットワーク:コメンテーター有本香(ジャーナリスト)/加藤達也(産経新聞元ソウル支局長)
法治国家を自認するアメリカはどこまで認められるか
日本時間午前10時から、米朝首脳会談がシンガポールのセントーサ島のカペラ・ホテルで行われます。昨日安倍総理大臣は、アメリカのトランプ大統領と電話会談を行い、米朝首脳会談で拉致問題を提起する方針を改めて確認したと述べました。
またトランプ大統領は韓国の文在寅大統領とも電話会談を行い、会談で奇跡のような成果を出したいと述べたそうです。飯田)米朝首脳会談の展望について、産経新聞元ソウル支局長の加藤達也記者と電話がつながっています。
加藤さん、おはようございます。まずは米朝会談。実現すると思いました?加藤)日取りが6月12日になるかどうかはともかく、一度は双方が開催を決めていたわけで、たとえ延期があったとしても実行されるものだと思っていました。それは双方ともにじらすこと自体にメリットが大きいと、そういう認識を持っているからだと思っていました。
飯田)メリットというと?
加藤)アメリカからするとトランプ大統領はビッグディーラー、大きな商取引をするプロフェッショナルという自覚を持っています。ですから史上初の業績というものを大統領の仕事を自分の不動産ビジネスになぞらえて、誰もやったことのないことをやってやろうという野心に満ちているわけです。一方、北朝鮮から見ますと、今年になってから韓国・中国を巻き込んだ融和ムードを世界にアピールしていますので、この状況の中でアメリカの軍事攻撃をもはや受けることはないと見切っています。そうなると制裁の解除、そして敵視政策をやめさせる、そして体制保障を確定的に取り付けるということ。こういう道筋に向かって動いていけばいいので中断する理由はなかったわけです。
飯田)融和的なムードで会談まで行われると、制裁の部分について、日本のようにきちんとやる国はやり続けますけど、アメリカが文句を言わないならいいやという国も出てこないとも限りません。
加藤)昨日もアメリカのポンペオ国務長官が強く言っていましたように、CVID(完全かつ検証可能で不可逆的な非核化)が完成するまでは制裁解除しない、経済支援もしないということを繰り返しています。
飯田)ということは、アメリカもやっているんだから、ほかの国もきちんとやらなきゃダメだぞという流れになっていくのでしょうか?
加藤)ということなんですけど、捕らぬ狸の皮算用で、北朝鮮地域の政治的安定に伴って経済の投資先になりうるという見方を中国や韓国はし始め、うずうずしてます。中国では一時中断していた労働者の受け入れを事実上解禁しています。
飯田)女性たちが出稼ぎに行っているという話も出てますね。
加藤さんは韓国生活も長いですが、今回の米朝首脳会談実現に向けて韓国内では「俺たちが仲介してやったり!」という感じなんでしょうか?加藤)文在寅政権はまさに明日、地方選挙を控えていますので、まずまずのアピールが出来たのだろうと思います。
また、今月末には南北の離散家族の再会事業も大々的に政権の成果として実施することになっています。ですから今年の平昌オリンピックの政治利用から始まった一連の北朝鮮を巻き込んだ、国内向けの政治アピールについては相当な成果、評価を得ているものだと考えます。飯田)では今回の地方選は、文在寅政権は圧勝ということになりそうですか?
加藤)圧勝とまではいかないかもしれません。というのも最近経済の面での陰りもありますし、若い人たちの間では北朝鮮との融和について若干心配し始めています。このまま統一に向かっていくと経済格差が60倍以上あるというのに、自分たちの暮らしは大丈夫なんだろうかという側面が視野に入ってきていて、当初予想されていたより伸びがなくなってきている状況です。ただ今回の選挙では相当な数を確保するだろうという見通しは変わっていません。
飯田)日本は拉致問題が当然控えています。これの解決なくして日朝首脳会談はないと安倍総理も仰っています。今後、日本との関係はどうなっていきますか?
加藤)核やミサイルについてはCVIDを目指す枠組みが、こういう形で完全で検証可能でかつ不可逆的な非核化をやりますと発表されます。ですが、ここには大きなごまかしがあるんです。核廃絶を完全にやろうと思うと10年、15年のスパンが必要になってきます。なのにアメリカはCVIDが完成するまで制裁の解除をしない、経済支援もしないと昨日も言ってます。じゃぁ完成するまでCVIDにかからない部分で、どこかに金を出させないといけない。それは何かというと、日本は北朝鮮に対して拉致問題を根拠とした独自の制裁をかけています。まずここにアメリカが仲介を行ってくる可能性はあります。
飯田)それをテコとして、ということですか。拉致問題も解決に向けて前進させることができるし、アメリカのメンツも保てる。そういう思惑もあるんですね。
加藤)北朝鮮の立場から見ましても、ここ1~2年、核の開発やミサイル実験が相次ぎました。これは金正恩委員長が管理している統治資金、国民経済とは関係ないところからお金を使っています。その統治資金がここのところ相当目減りしているという試算をアメリカの諜報機関や金融政策当局は見ているんです。
飯田)そこに弱みがあるんですね。
加藤)そうです、枯渇しかねない。しかもそれは外貨で確保しています。つまり外貨がなくなるわけです。なぜ外貨かというと、韓国のウォンとは違って、北朝鮮の通貨は国際決済通貨ではありません。ですからどこかの国の銀行に持っていっても、一旦交換してもらって品物を買う手順を踏む必要があります。逆に、日本の円なら世界中どこでも品物を売ってもらえます。油でも鉄鋼でも。
飯田)信任がありますものね。
加藤)国際決済通貨を相当な金額が受け取れるだろうという目算があるので、北朝鮮としては何としても手に入れたい。金正恩政権の将来性を担保するための命の金ということになります。
飯田)体制保障という言葉の中にはそういったものも入ってくるんですね。
加藤)もうひとつはアメリカにとっては許しがたいことですが、金正恩委員長のお金を管理しているのは、39号室という特殊機関です。この39号室は合法、非合法合わせて年間数百万ドルの収益を金正恩の金庫に収めていたと言われています。これが一連の制裁の中で大幅に目減りをしている。ですから非合法な収益活動も認めてもらえなければ、俺たちは体制を維持できないと、北朝鮮側は居直る可能性もあるんです。
飯田)なるほど、その辺も絡んでくるんですね。
加藤)法治国家を自認するアメリカがそこまで認められるか、ここも一つの検証のしどころだと思います。
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