「天敵昆虫」で害虫駆除の作物は農薬を使わずに安全
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農研機構の日本典秀が、黒木瞳がパーソナリティの番組「あさナビ」(ニッポン放送)に出演。天敵昆虫を使った農作物の害虫駆除の歴史と現状について語った。
黒木)今週のゲストは農作物を害虫から守る天敵昆虫の研究をされています、農研機構の日本典秀さんです。自然の状況のことを考えればコントロールしやすいということですが、ハウス栽培が多くなり、天敵昆虫が見直されてきた。それは最近になってということでしょうか?
日本)そうですね。戦後とてもいい化学農薬ができて、一時はそれに頼る時期がありました。化学農薬もどんどん進化していて、スーパーで売っている果物も農薬を使って作られていますが、それを食べて健康被害を受けることは全く無い、安全なものになっています。しかし、実際に撒く農家さんはその原液を霧の状態で浴びますので、けっこう大変なのです。真夏でもカッパを着て、ゴーグルをして、マスクをしてと、完全防備で農薬を撒かなくてはいけない。それを毎週やっているということ。もう1つは、小さい害虫だと一生も短いので、進化も早いのです。抵抗性と我々は言っていますが、化学農薬が効かない、撒いても死なない虫が出てくる。
黒木)それは虫が進化しているのですか?
日本)そうです。農薬がかかっても、ほんの少しだけ生き残る…それは強い奴です。強い奴の子どもとなると更に強い。それが増えて行くと、農薬が効かなくなる。そのような経緯があって、天敵を使おうという動きになって来ました。天敵昆虫が初めて売られたのが、確か1995年、平成7年なのです。
黒木)いまはどのくらい天敵昆虫が実用されているのですか?
日本)残念ながら、売られているもので考えると、化学農薬に比べて売上高は10分の1にも届きません。数パーセントです。
実は売っていると言いましたが、基本的に野外では撒けないのです。虫を放すことができない。
黒木)ハウスのなかだけということですか?
日本)基本的には農薬登録が必要なのです。そして農薬登録は、ハウスのなかでしか取られていない。いろいろな環境影響評価の問題もありますし、天敵昆虫を外でばら撒いてしまうと、飛ばない改良をしていると言っても、どこかに飛んで行ってしまうものもいる。すると効果が減ってしまい、いい成果が出せないので、登録が取れていないというところがあります。ですので、外で撒くことはできませんが、外には自然の天敵昆虫がたくさんいます。もとは外から取ってきたものですから、うまいこと生かしてやろうという取り組みがされています。これまで畑や果樹園というのは、その作物以外の雑草などを一切無くすような形で動いていましたが、いまは天敵が寄って来やすいように花を植えて、害虫が減っていくという取り組みもされています。
日本典秀/農研機構・中央農業研究センター京都大学大学院・修士課程を修了後、農業生物資源研究所などを経て、「農研機構 中央農業研究センター 生物的防除グループ」に所属。
野菜や果物につく害虫を、タバコカスミカメという「天敵昆虫」を使って防除するという新しい研究を行っている研究者。
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