【ライター望月の駅弁膝栗毛】
土佐(高知)と讃岐(香川)を結ぶJR土讃線。
その終着駅は、高知県四万十町にある窪川駅です。
週末の昼下がり、各方面からの列車が到着すると、4つあるホームは満線に…。
いずれの列車も1~2両で、まさに南国の小さなターミナル駅といった風景。
そのなかをいち早く発車していくのは、高知~中村・宿毛間を結ぶ特急「あしずり」号です。
特急「あしずり」「南風」等と共に、土讃線で普通列車として活躍するのが1000形気動車。
四国エリアでは、JR発足直後から積極的に高出力・軽量化を図った新型気動車が投入され、厳しい鉄道環境ながら、比較的新しい車両が通勤・通学の足を担っています。
1000形をはじめ、四国の普通列車向けの車両は、ボックスシートとロングシートを千鳥式に配置しているのがユニークで、1両で通学輸送と昔ながらの汽車旅を両立させています。
そして、この窪川駅に乗り入れるのが、「土佐くろしお鉄道」中村線の列車。
「土佐くろしお鉄道」は昭和63(1988)年、窪川~中村間のJR中村線を引き継いで生まれた第三セクターの鉄道で、平成9(1997)年には、中村~宿毛間の宿毛線を開業。
平成14(2002)年には、土讃線・後免からの「ごめん・なはり線」も開業させました。
中村線には、JRから「あしずり」をはじめ、岡山始発の「南風」などの特急も直通します。
そんな土讃線や土佐くろしお鉄道の列車が発着する窪川周辺の味が楽しめる駅弁といえば、高知駅の「四万十米豚 男のしょうが特盛」(750円)。
2010年代前半、「仕出しのあんどう」と土佐駅弁学会の共同開発で生まれた駅弁です。
当初は他に「女のちりめん」という対になる駅弁があったそうですが、「仕出しのあんどう」によると、ちりめん等の調達が難しくなったため、いまは“男1人でやってます”とのこと。
「仁井田米」「四万十米豚」といった、四万十町をはじめとした高知県南西部(幡多地域)のブランド食材を使って作られている生姜焼き丼です。
汎用性のある丼容器ですが、駅弁マークの入った帯が入ると雰囲気が変わるもの。
“米豚”は、その名の通り、稲作農家と養豚農家のコラボで仁井田米を混ぜた飼料で育て、良質な脂肪、柔らかい肉質が特徴。
ご当地食材を使いつつ、価格は上がりながらも駅弁としては廉価な750円に抑えています。
四万十の流れを思い浮かべて、都市ではまず味わえない、土地の味を楽しみたいものです。
(参考)JA四万十ホームページ
そんな四万十川の景色を楽しめる鉄道といえば、JR予土線(よどせん)。
予土線は、窪川から1駅の土佐くろしお鉄道・若井駅から分岐し、愛媛・宇和島を結びます。
高知側の列車は、全て窪川まで乗り入れており、「青春18きっぷ」等で予土線の列車へ乗り継ぐ際は、「土佐くろしお鉄道」の運賃・210円が別に必要となりますが、現在発売中の「四国全線開通謝恩フリーきっぷ」では、この区間も利用可能です。
次回はいよいよ、列車で四万十川の景色を楽しみます!
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/