「家電の見本市」から様変わり…CEATEC
公開: 更新:
「報道部畑中デスクの独り言」(第92回)では、ニッポン放送報道部畑中デスクが、千葉県の幕張メッセで開催された「CEATEC JAPAN」について解説する。
今週、千葉県の幕張メッセで「CEATEC JAPAN(シーテック・ジャパン)」というイベントが開催されています。アジア最大級のIT技術とエレクトロニクスの国際展示会といわれています。
今年は19回目。昨年を超える725の企業と団体が参加。初出展は345の企業・団体に上ります。かつては携帯電話や薄型テレビなどの「デジタル家電」がズラリと並び、見た目も壮観で華やかな雰囲気でした。今回も8Kテレビなどハードウェアの最新技術は健在でしたが、それ以上に目立ったのはスマホなどのアプリ=アプリケーションソフトや、AI=人工知能の活用をアピールするブースです。
ひときわ目を引いたのは「IoTタウン」と名付けられたゾーン。ここには一見、電機業界とは無縁と思われる企業も出展していました。
コンビニのローソンでは、購入した商品とアプリを入れたスマホをそれぞれの読取装置に通すだけで、買い物の支払いができる“未来型コンビニ”の実演がありました。
商品には電子タグが取り付けられています。アプリにはクレジットカードの情報を登録しますが、将来的には電子マネー、仮想通貨への応用も期待されています。ローソンの担当者は無人店舗を目指しているわけではないとした上で、「レジを効率化することで混雑時の決済をスムーズにするほか、店員の手間を省くことで、コンシェルジュ的なお客に寄り添ったサービスもできるのではないか」と話していました。
もちろん人手不足の解決にも寄与します。実現すれば、昨今言われる「働き方改革」にもつながりそうです。
ライオンのブース、歯磨きや洗剤など、あの生活用品のライオンです。ここでは口臭を解析するというスマホのアプリを出展していました。
スマホで撮影した舌の画像を、AIを使って口臭の判定をするというものです。私も体験しましたが、「口臭はなし」の判定…ホッとしました。
そのほか、JTB、三菱UFJフィナンシャル・グループ、バンダイナムコ、東日本高速道路…様々な業種の企業が参加していました。
自動車業界から出展したトヨタ自動車も、主役は車ではありません。「クローバ」と呼ばれるLINE(ライン)のAI機能を使ったスピーカーを使い、車内で会話ができるシステムを披露していました。「自動車産業は“100年に1度”と言われる“大変革の時代”」「“自動車をつくる会社”から“モビリティ・カンパニー”にモデルチェンジすることを決断した」と豊田章男社長はかねてから話していますが、その一環が垣間見えるブースです。
一方で、これまでの主役だった電機大手は存在感が控え目になりつつあります。ソニーや東芝の姿はありません。日立製作所やパナソニックも、規模はかつてほどではありません。事業形態が「BtoC」(消費者向け)から「BtoB」(ビジネス向け)に軸足を移しつつあることも無縁ではないと思います。
そうしたなか、三菱電機のブースは自動運転技術などを盛り込んだ次世代自動車、世界最高速のエレベーターの体験コーナーがありました。ラジオ局に勤める私にとっては、「豪雨の早期予測のための水蒸気センシング技術」も興味深いものでした。
現在、気象庁などが使用しているレーダーは電波を使っていますが、これはレーザー光を使って大気中の水蒸気を測定し、豪雨を早く予測する装置だそうです。担当者によると、これによって1時間近く豪雨予想が早くなるといいます。現在は実証実験の段階、本格運用となれば防災対策として朗報になるでしょう。
今回のCEATECのキャッチフレーズは「つながる社会 共創する未来」。モノとインターネットがつながる「IOT(Internet of Things)技術」が未来の社会を担うといわれるなか、恒例のイベントも電機業界のみならず、様々な業種も巻き込み、そのあり方を模索しています。かつては「家電の見本市」と呼ばれたイベントも様変わり…そんな感覚を強くしました。
CEATEC JAPANは10月19日まで。4日間で16万人の来場を見込んでいるということです。(了)