あけの語りびと

ミシュランに掲載されたラーメン店は中古車販売と二刀流の名人が営む

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それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。

「二刀流」とは、刀や剣などを左右の手にひと振りずつ持って戦う剣法のこと。あるいは、それを特徴とする武道の流派のことを指します。日本では特に、剣豪・宮本武蔵が『五輪書』に記した二天(にてん)一流(いちりゅう)が有名です。
この本来の意味から転じて、酒を好み、かつ甘いものを好む人を「二刀流」、一人で2つの作業を、同時に平行して行う人も「二刀流」と呼ばれました。そして、この言葉を現代風にアレンジして実践してみせたのは、ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手。右投げ左打ちの妙技は、世界をうならせました。

さて、今朝ここでご紹介したい「二刀流」の使い手は、鳥取市(とっとりし)気高町(けたかちょう)浜村(はまむら)で、中古車販売業を営む吉田(よしだ)克己(かつみ)さん、53歳。「アルト」「ワゴンR」「スイフト」など、様々な車の名前をズラリと並べた看板の 横にはためくのは何と・・・「ら~めん」という赤い文字の幟(のぼり)!そうなんです! 吉田さんは中古車販売のかたわらラーメン店を営む二刀流の名人なんです。

ミシュランに掲載されたラーメン店は中古車販売と二刀流の名人が営む

中古車販売店『ホットエアー』の名前は今や美味しいラーメンの店として全国的に注目を浴びることになってしまいました。吉田さんが中古車の商談スペースを改修してカウンター席やテーブル席をしつらえた店内は、本棚、プラモデル、キーホルダーなどなど、いろんなものが置かれています。店というよりも、まるでどこかのお宅にお邪魔したような感じ・・・。

この店に、並々ならぬオーラをたたえたスーツ姿の男性が現れたのは、去年2月のこと。「油断できないな」という緊張感が、走ったといいます。

「最初は「シンプルに味わってください」と、ラーメンとトッピングの具材 を分けて出したんです。味をつける前の元スープも「お試しください」と出しました」

食べ終えた男性が、差し出した名刺には『ミシュラン』と書かれていました。

「中古車販売で鍛えた「人を見る目」が、ここで役立ったんだと思います」

と、吉田さんは笑います。

ミシュランに掲載されたラーメン店は中古車販売と二刀流の名人が営む

こうして、去年の10月に出た「ミシュランガイド京都・大阪+鳥取2019」で(ビブグルマン)の部に掲載された『ホットエアー』のラーメン。

ミシュランに掲載されたラーメン店は中古車販売と二刀流の名人が営む

(ビブグルマン)というのは「価格以上の満足感が得られる料理の店」という
意味です。吉田さんは言います。

「人口最少県の鳥取県から選ばれた『奇跡の店』です」

もともと料理が好きだった吉田さんが、調理を本格的に始めたのは、お子さんが生まれたことがキッカケだったといいます。

「子どもにだけは、ナチュラルなもの、いいものを食べさせたかったんです」

やがて、地元のお祭りなどで調理の腕をふるって、人に喜んでもらううちに、(店をやってみようか)と思い立ったのが、2015年ごろ。吉田さんは、当時を振り返ります。

「お客様がゼロという日も続きました。それでも、町のラーメン屋さんと同じ味を出しても、うちに来てもらう理由がありません。その理由を求めて、煮干しから自分で作りました」

飲食店での修業はおろか、アルバイトさえしたことがない吉田さんにとって、「料理は科学」だったといいます。

「何か一つを突出させるのではなく、全体のハーモニーを大切にしました。デジタルの温度計や計量器で1度単位、0.1グラム単位にこだわる試行錯誤を繰り返しながら、理想のスープに近づけていきました」

吉田さんによれば、何事にも設計書があり、澄み切ったスープを作るにはそれなりの方程式があるそうです。昼も夜もその方程式を探しました。

「インスタントラーメンは、お湯だけで美味しい味を出します。化学調味料の力です。それに慣らされている一般の方には、うちのラーメンは、合わなかったのかもしれません」

『ホットエアー』のラーメンを、最初に口コミで広めてくれたのは、意外にも酒造組合の人たちだったといいます。
酒屋さん、酒蔵、料理人、シェフ・・・いろんなプロの人たちが、「吉田の作るラーメンはうまい!」と、お墨付きを与えてくれました。こうして、少しづつ広がった『ホットエアー』のラーメン。看板メニューは、「極み塩」と「極み醬油」 どちらも800円!鳥取豚のレアチャーシュと味玉のせ「贅沢極み塩」1000円!「汁なしたんたん麺」650円と「大盛まぜそば」750円も人気です。最後に、吉田克己さんにとって「ラーメンとは何か?」をうかがうと、「自己表現です」という答えが返ってきました。

『ホットエアー』
住所 鳥取県鳥取市気高町浜村6-1
電話 0857-82-6181
営業時間 11時15分から14時まで
定休日 無休

 

上柳昌彦 あさぼらけ
FM93AM1242ニッポン放送 月曜 5:00-6:00 火-金 4:30-6:00

朗読BGM作曲・演奏 森丘ヒロキ

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