突然ひらめき沖縄の空き地へ 昼間にコーヒーの屋台を始めた女性
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それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。
歩いていると、突然ヒラメクことって、ありますよね。千葉市に住んでいた辻佐知子さんは、アルバイト先の新橋から京葉線の東京駅へ歩いて帰る途中、こんなヒラメキが天から落ちて来たそうです。
「沖縄で、昼間、屋台をやろう!」
もともと飲食店をやりたかった辻さん……、思いついたらすぐに行動するタイプで、早速、沖縄へ出かけました。気に入った場所は那覇市、国際通りの近く、緑ヶ丘公園……ここで珈琲屋台を開きたいと、空き地の地主に交渉します。「なんで、こんなところで屋台を?」と聞かれ、「沖縄の魅力はいい風が吹くこと。やるなら屋台だと思ったんです」。
そんな話をしても前例がないからと、空き地を貸してくれません。それでも諦めきれず、お店の軒先を貸してもらおうと何軒か回っていると、三線屋さんのおじさんから「うちの駐車場の隅っこでよかったら、いいよ」と嬉しい返事……。
今から14年前の2004年7月1日、コーヒーの屋台を始めました。お店の名前は晴れた日の昼間に営業するので『珈琲屋台ひばり屋』と名付けました。
ところが、オープンした年は台風の当たり年! こんなに雨ばかり続いたら屋台はやっていけない……頭を抱えていると、三線屋さんのおじさんが「俺の知り合いの店へ、三時にコーヒーを配達してよ」と、古本屋さん、カメラ屋さん、革製品のお店などを紹介してくれて、雨の日はコーヒーの配達でどうにか仕事が出来るようになりました。
那覇は、空き地があればすぐにマンションやホテルが建つほど再開発の波が押し寄せています。三線屋さんの駐車場もホテルの建設予定地で、期限付きで借りていました。空き地を見つけては引っ越しの連続で、現在、五度目の引越し先、那覇市牧志3丁目の空き地で「ひばり屋」を営んでいます。
「ここは『桜坂』と呼ばれていて、夜になると沖縄の情緒を残す飲み屋街に変わりますが、昼間は静かな場所で、私の一目惚れで決めました」という辻さん。
初めて来る人はどこに入口があるのか、分かりません。勇気を振り絞ってスナックが並ぶ細い路地裏に入って行くと、手作りの板塀に囲まれた、意外に広い空き地が見えてきます。そこが『珈琲屋台ひばり屋』です。
「店を始めて10年はお金で苦労しましたね。一番の危機は、コンビニコーヒーが登場したことです。服も靴も穴が空くまで新しいものは買えませんでした。ずっと綱渡り状態……。乗ったのが泥舟だったけど、遠浅だったので沈まず、ここまで来ることができました」
屋台の良さは、垣根がないこと。いろんな人が、ふらりと、入ってきます。
「小学5年生の男の子がコーヒーを飲みに来てくれたんです。コーヒーが飲めないのに、うちの店がすごく気になったらしくて、お小遣いをはたいて苦いコーヒーを……、いま、その子は25歳になって、彼女を連れて来てくれます」
そんな辻さんを、両親は、どう見ているのか?
「父は公務員だったので絶対に反対するだろうと思って、前日まで黙っていて、『あした、沖縄に行きます』と言ったら、めまいで、本当にその場で倒れちゃったんです。子供の頃から、私がやりたいことを何でも反対する親でした。いまでも会社に就職して欲しいと思っているようですが、去年、両親が来た時、『いい場所を見つけたな』と言ってくれました」
『珈琲屋台ひばり屋』ではいろんなコーヒーが揃っていますが、オープンしてからの定番は『深煎りアイス珈琲』、350円。じっくり丁寧に淹れてから、一晩寝かせています。野外で飲むためにスッキリした苦味が特徴です。
沖縄に来て14年! 辻佐知子さんは46歳になりました。いいパートナーは出来ましたか? と伺うと、にっこり笑って、こう答えてくれました。
「私は屋台に嫁いだようなものですから!」
珈琲屋台ひばり屋
090-8355-7883
沖縄県那覇市牧志3-9-26
http://hibariya.blog66.fc2.com雨の日は休み。
定休日は、不定休。
毎月の予定は、ブログの「スケジュール」欄で確認してください。
上柳昌彦 あさぼらけ 『あけの語りびと』
2018年5月30日(水) 上柳昌彦 あさぼらけ あけの語りびと より
朗読BGM作曲・演奏 森丘ヒロキ
番組情報
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