それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。
「ゴールデンウィーク」という言葉は、もともと、映画業界から生まれた和製英語だそうです。この時期、話題の映画が、数々公開されますが、去年6月、モスクワ国際映画祭で、「国際映画批評家連盟賞」と、「ロシア映画批評家連盟特別表彰」をダブル受賞した、『四月の永い夢』が、5月12日(土曜日)から凱旋上映されます。
監督・脚本は、平成2年生まれの28歳、中川龍太郎さん、「こどもの日」も近いので、どんな子供だったのか、伺うと……、
「小学生の頃は、再放送のウルトラセブンに夢中でしたね。見るだけでは飽き足らず、新しい怪獣を妄想し、ストーリーを考え、タイトルをつけ、映像は僕の頭の中にあって、ビデオのパッケージを作って遊んでいる、そんな子供でしたね」
映画好きの母親の影響で『男はつらいよ』に興味が広がり、誕生日のプレゼントに「寅さんのビデオがほしい」とせがむと、父親が買ってきたのは、植木等の「無責任シリーズ」。
「父は映画に全く無頓着な人で、寅さんも、無責任シリーズも、同じだと思っていたんです。でも、植木等さんを観たら最高に面白くて、子供心に『将来は、サラリーマンになろう!』と思いましたね」
中学では、黒澤明、大島渚、小栗康平などの作品に魅せられます。そんな中川監督がラジオに興味を持ったのは、浪人していた時…、
「予備校に好きな女の子がいて、その子が、オールナイトニッポンをよく聞いていたんです。番組にメールを送ったらパーソナリティが、僕の告白を心を込めて読んでくれて、彼女の好きな曲も流れて……。すると全国のリスナーから『結果はどうなったんだ、教えろ!』と大反響!結局、全国ネットでフラれた話をするはめになっちゃって……、このエピソードが今回の映画を作るスタートになっています」
一浪ののち、慶応大学文学部に合格しますが、大学で学ぶ目標が見つからず、友達もできず、アルバイトか、映画を観る日が続きます。もう大学を辞めようと思っていた時、友達が出来ます。
「彼は、フランス映画からエヴァンゲリオン、さらにインド哲学まで、僕の知らない世界を教えてくれた、かけがえのない親友でした。自主映画を作り始めたのも、この頃、僕は1年留年し、彼は先に卒業して社会人に……、ところが就職してすぐに、彼は自らの命を絶ってしまうんです。ショックとやりきれなさで落ち込みましたが、映画監督としてやっていこうと決意したのも、この時でした」
かつて映画監督になるには長い下積みが必要でしたが、デジタルの時代、仲間が集まれば、20代でも監督になれるそうです。
2012年、大学在学中に監督デビューし、最新作『四月の永い夢』で6作目となります。この映画は、3年前に恋人を亡くした27歳の元音楽教師が主人公。アルバイトをしながら、穏やかな日常を送っていた、ある日、亡くなった恋人の母から手紙が届き、止まったままの時間が動き出していきます。
映画の中の様々な場面でラジオが流れてきます。主人公の初海(はつみ)が、手ぬぐいの染物工場で働く青年に「ラジオを聞くのが趣味なんて、渋いですね」と言われて、「音楽だけ聴いていると、落ち込むことがあるっていうか、でも同じ曲でもラジオで聞くと、元気になれる気がするんです!」
脚本も手がける中川監督の、ラジオにこだわるセリフが光っています。
ところが中川監督の父親が映画を見て注文をつけたシーンがあります。それは、主人公に心を寄せる青年が花火大会の後、色とりどりの手ぬぐいを干した場所で、床に寝そべるシーン……、「あそこでなぜ、キスさせないんだ!」と言ったとか。
寅さんを観て育った中川監督……、いまもなお、憧れの女優は倍賞千恵子さんです。
「思えば、いつか、〝さくら〟さんみたいな人を映画の中で描きたい、そんな気持ちが映画の世界への入り口だったかもしれません」
『四月の永い夢』
5月12日(土)より、 新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー
配給:ギャガ・プラス
モスクワ国際映画祭(国際批評家連盟賞・ロシア批評家連盟特別表彰)W受賞。
台湾映画祭(アジアプリズム部門正式出品作品)
出演:朝倉あき、三浦貴大、川崎ゆり子、高橋由美子、青柳文子、森次晃嗣、志賀廣太郎、高橋惠子
監督・脚本:中川龍太郎
http://tokyonewcinema.com/works/summer-blooms/
上柳昌彦 あさぼらけ 『あけの語りびと』
2018年5月2日(水) 上柳昌彦 あさぼらけ あけの語りびと より
朗読BGM作曲・演奏 森丘ヒロキ
番組情報
眠い朝、辛い朝、元気な朝、、、、それぞれの気持ちをもって朝を迎える皆さん一人一人に その日一日を10%前向きになってもらえるように心がけているトークラジオ