沖縄県民投票~欧米で議論される「国民投票に対する疑問」
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月25日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。辺野古沖埋め立ての賛否を問う沖縄の県民投票について解説した。
沖縄の県民投票~すべての市町村で実施へ
沖縄のアメリカ軍普天間基地の移設計画に伴う名護市辺野古沖の埋め立てへの賛否を問う来月24日の県民投票について、沖縄県議会の各会派は、「賛成」、「反対」の選択肢に「どちらでもない」を加えた3択で実施することで合意した。これにより県民投票でこれまで不参加を表明していた宜野湾、宮古島、沖縄、うるま、石垣の5つの市を含め、沖縄県内のすべての市町村で実施される見通しとなっている。
飯田)来週の火曜日、29日の県議会の臨時会で条例の改正案が全会一致で可決される見通しだということです。イエス、ノーに加えて真ん中というか、「どちらでもない」を加えたということです。群馬館林・“サバ缶”さんからメールをいただいています。「賛成、反対にどちらでもないの項目を設けるようですが、これを設けないと、どちらかに決めなければいけないことに拒否感を持つ県民有権者の方々の大量棄権だとか、白票での投票だとか、そういうこともあり得るなという予想が働いたんでしょうかね? ただし、これでどちらでもないが最多得票となった場合に、県知事はじめどう受け止めるんでしょうか」。
「国民投票は民主的な手法なのか?」~イギリスのEU離脱についての国民投票のやり直し可否でも問われ、欧米で議論されてきた
宮家)“サバ缶”さんの言う通りですね、この問題、実は県民投票もしくは国民投票の問題でもあるわけです。これに関連して、ニューヨーク・タイムズに面白い記事がありました。イギリスのEU離脱について国民投票がありましたが、今や収拾がつかなくなっているので、もう1回やろうかという議論があります。それに対して反対論が出ています。そもそも、「国民投票は本当に民主的な手法なのか?」という議論がアメリカ、欧州にはあるのです。なぜかと言うと、誰が音頭をとるかにもよるけども、1つの問題について、ある程度勢いとかいろいろな形で物事が動いて、それで人々は判断をしなくてはならない。この直接民主制というか、国民投票、住民投票、これは必ずしも民主的な方法ではないのだという議論です。ヨーロッパの場合には特に拒否感があります。ヒトラーとかムッソリーニもこの国民投票を多用して権力を奪取して行ったからです。これは極端な例ですが、それがあるので国民投票について拒否感があるのです。
アメリカの建国の父たちは何と言ったかっというと、「多数による独裁、多数による専制」という言葉を使っています。なぜ直接民主制に問題があるかと、いま申し上げた理由で、「必ずしも民意を反映しないかもしれない」と。むしろそれを避けるために、バランスを取るために間接民主制があるのだから、ということです。アメリカの憲法もそういった議論があった上で作られています。
私は沖縄で県民投票やるなと申し上げているのではありません。それは沖縄県民が決めることです。だけど、「賛成か反対」だったら県民投票かもしれないど、「どちらでもない」も入れるということであれば、これはもうアンケートです。世論調査です。「世論調査だったら何の意味があるのか」ということも、真剣に考えなくてはいけないかもしれない。もちろん多くの人の意見を聞くということは、正しいことだとは思うけれど。それが本当に民主主義なのか、そして本当にそれが効果的な意味を持つのかということ、そして結果によっては逆効果になるかもしれない可能性がある、少なくともヨーロッパ、アメリカではこうした議論がされてきた。このことだけは念頭において欲しいと思います。
飯田)確かにイエス・オア・ノーでやると、51対49になった場合に49の死票がある意味できてしまう。その部分の意見が全く反映されない仕組みになってしまいます。
宮家)しかもそれでいちばん多いのが「どちらでもない」だったら、「何だこれは?」となってしまいます。結論が出ないどころか混乱しますよ。誤解の無いように言いますが「やるな」と申し上げているのではありません。やっても良いのですが、それを受け止めるときには、いまのような議論を踏まえて受け止める必要もあるのではないかと申し上げてるわけです。
飯田浩司のOK! Cozy up!
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