【ライター望月の駅弁膝栗毛】
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キハ75形気動車・普通列車、高山本線・美濃太田~坂祝間
高山本線の岐阜~美濃太田間を中心に活躍するキハ75形気動車。
概ね毎時2本運行されるこの区間の列車のなかには、美濃太田から太多線(たいたせん)へ入って、中央本線の多治見(たじみ)まで直通する列車も多くあります。
多治見と言えば、最近は夏の最高気温で有名ですが、私が40℃超の日に訪れた実感では、周囲の緑が多い分、熱の逃げ場があって、都心部のような灼熱地獄ではないのが救いです。
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ちらし寿司ておけ
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ちらし寿司ておけ
多治見をはじめ、太多線沿線の可児など、岐阜県の東濃地方は、日本を代表する陶磁器、「美濃焼」の産地として知られています。
そんな美濃焼の器がぜいたくに使われ、昔ながらの“味”のある結び方が施されている美濃太田駅「向龍館」の駅弁と言えば、「ちらし寿司ておけ」(1000円)です。
平成15(2003)年の「駅弁膝栗毛」でもいただいて以来、久しぶりの“ておけ”です。
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舟弁当の容器(筆者保管)
「向龍館」の美濃焼を使った駅弁として忘れられないのが、かつて販売されていた「舟弁当」。
首都圏で開催される駅弁大会などでも、おなじみでした。
高山本線・鵜沼~美濃太田間の車窓から見える木曽川は、その風景がドイツ・ライン川に似ているとされ、“日本ライン”の名と共に、かつては“日本ライン下り”が観光の目玉でした。
そんな舟下りの舟を模して作られていたのが、この舟弁当だったわけです。
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ちらし寿司ておけ
【お品書き】
・酢飯
・煮物(椎茸、かんぴょう)
・海老
・蛸
・穴子
・蒲鉾
・だし巻き玉子
・でんぶ
・酢蓮根
・胡瓜
・付け合わせ(ヤマゴボウ味噌漬け、紅しょうが)
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ちらし寿司ておけ
最近は汽車土瓶を含め、すっかり少なくなった「陶器製容器」。
少し前までは車内販売への対応だったり、いまは東京・大阪など遠隔地への輸送駅弁の増加などから、どんどんプラスチック製容器などに変わって行きました。
そのなかで美濃太田駅の駅弁は、この地域で陶磁器文化が栄えていることも駅弁で表現していたように思いますが、残念ながらこの駅弁も今月いっぱいです。
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長良川鉄道・ナガラ300形気動車(2011年撮影)
美濃太田駅からは、第3セクターの「長良川鉄道」が分岐しています。
長良川鉄道は旧・国鉄の越美南線(えつみ・なんせん)を引き継いだ路線で、美濃太田と岐阜県郡上市の北農の間、70㎞あまりを結んでいます。
この路線もまた、長良川沿いの風光明媚な景色が楽しめるローカル線。
美濃太田駅弁の食べ納めにピッタリの路線と言えましょう。
連載情報
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ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/