それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。
スポーツの秋、なかでも市民マラソンは大変な盛り上がりですね。マラソン大会の参加費は平均5000円ほど…。Tシャツやタオル、完走証などがもらえますが、「ちょっと高いかな」と思う人も少なくないようです。
実は、「タイム計測」にかかる費用がバカにならないそうです。ゼッケンに小型電池が入った「計測チップ」を装着したり、大会によっては靴ひもに「チップ」を結びつけたり。ランナーはゴールした後、そのチップを返さないといけない…。
海外では「使い捨てチップ」が主流なのに、日本ではまだまだ回収型のチップが使われています。
ここにビジネスチャンスがあると開発に取り組んだのが、福島県郡山市にある合同会社「LinkTOHOKU」(リンク東北)の代表、鵜沼誠さん・40歳です。
鵜沼さんは子供のころ、競輪場の近くに住んでいて、夢は競輪選手になることでした。しかし、学生時代から交際していた女性との結婚が決まり、競輪選手の夢は夢のままで、就職活動を始めます。
たまたま受けた地方のテレビ局に技術職として採用され、アンテナや電波を専門に送信所を回る日々が続きました。
2011年に東日本大震災が起きて、地元の福島をはじめ、東北へ訪れる観光客が激減…。自転車レースを趣味で続けていた鵜沼さんは、どうすれば福島に足を運んでもらえるか仲間と話し合い、まったくの素人が集まってスポーツ大会を企画します。
「右も左もわからない素人ばかりで、苦労の連続でしたね。地域住民の理解を得るために1軒1軒、挨拶回りから始まり、市役所や土木事務所の了解を経て、最後に警察署から道路を止める許可をいただくんです」
その他、雑多な作業や審判員、計測機材なども必要です。そんな実情を知ると、ほとんどの人はそこで断念し、大手イベント会社に運営を委託してしまうそうです。
「大会が始まるまではとても不安で、恐怖だったんです。ところが終わった後の充実感は、会社員では味わえない感覚でしたね」
自転車レースが無事終了し、気になるのは運営費用です。参加費が5000円で、200人が出場し、100万円の収入。ところが、計測機材の会社から送られて来た請求額を見て、「50万円!?」と鵜沼さんは思わず声を上げてしまいます。
「収益の半分がタイム計測で消えてしまうんです。日本は電波法が厳しく、微弱な電波しか使えません。そのため、電池が入った回収型チップが主流だったんですね」
損をする前に1回でやめてしまうか、それとも会社を立ち上げて2回、3回と続けて行くべきか……。迷っていた鵜沼さんに、商売をしている父がこう言います。
「人ができないことこそ、ビジネスチャンスがあるんだ。やれないことをやってみろ!」…そう励まされて、2013年に会社を設立しました。
理系出身でアンテナや電波のプロだった鵜沼さんは、タイム計測のコストダウンはできないものか? と研究を重ね、マラソンや駅伝などの大会向けに「タイム計測機器」を開発。日本陸連からも公認されました。
「使い捨て計測チップ」は、ゼッケンに貼るだけ。回収する人員もゼロ。電池を使っていないのでコストダウン! 選手から「とっても軽くて、これはいいね!」と好評です。
「これから当社のチップが増えると思いますし、そうなればもっと手頃な参加費になるはずですよ」と鵜沼さんは胸を張ります。秋から冬にかけて、毎週のようにマラソン大会が開かれます。鵜沼さんも忙しい日々が続きます。
「いつもゴール脇に待機していますので、ランナーの皆さん、ベストタイムを目指してゴールを駆け抜けてください!」
■合同会社 LinkTOHOKU(リンク東北)
代表社員:鵜沼誠
所在地:福島県郡山市湖南町浜路加賀浜997-48
※計測機器について詳しくは、同社のホームページをご覧ください。
上柳昌彦 あさぼらけ
FM93AM1242ニッポン放送 月曜 5:00-6:00 火-金 4:30-6:00
朗読BGM作曲・演奏 森丘ヒロキ
番組情報
眠い朝、辛い朝、元気な朝、、、、それぞれの気持ちをもって朝を迎える皆さん一人一人に その日一日を10%前向きになってもらえるように心がけているトークラジオ