【ライター望月の駅弁膝栗毛】
新幹線開業までは多くの特急列車が行き交い、その後も、平成初期までは、電気機関車がけん引する客車列車が主役だった東北本線。
一ノ関~盛岡間でもロングシートの701系電車が活躍するようになった平成6(1994)年12月ダイヤ改正からまもなく四半世紀…、すっかり東北地方の日常になっています。
一ノ関からは、世界遺産・平泉へのアクセスでも、その輸送力を遺憾なく発揮しています。
岩手県の内陸南部は、昔から仙台・伊達領と、盛岡・南部領の境目となってきた地域。
いまの北上市の辺りには、江戸時代に造られ、いまは国の史跡に指定されている「南部領伊達領境塚」が残されていると言います。
現在の東北本線では、一ノ関駅がその境目といった雰囲気。
一ノ関以南では、同じ701系電車でも、仙台方面からやって来る緑帯の車両です。
(参考)北上市ホームページ
さらにその昔、北東北は大和政権と蝦夷と呼ばれた人たちの境目となっていました。
争いが絶えなかったというこの地域に、平和な世の中をもたらしたとされるのが奥州藤原氏。
戦で亡くなった人たち全ての霊を慰めるために造られたのが、ご存知「中尊寺」です。
とかく金色堂の黄金の輝きに目を奪われてしまいがちですが、その建立の目的も、じつは高い理想に基づいた“輝かしい”ものなのかもしれません。
(参考)平泉町ホームページ
そんな輝かしいブランド名を誇る、岩手のお米と言えば「金色の風」。
前回ご紹介した「銀河のしずく」と共に、岩手には“金と銀”2つのブランド米があります。
「金色の風」を使った新しい駅弁「おべんとう~金色~」(1150円)を作っているのは、一ノ関駅を拠点に駅弁を手掛ける「あべちう」。
コチラの駅弁も今年(2019年)4月1日から、一ノ関駅・盛岡駅で販売が始まりました。
【おしながき】
・ご飯(岩手県産金色の風)
・いわいどり照り焼き
・まぐろメンチ串カツ
・赤魚塩焼き
・煮物(椎茸、人参、えびほか)
・卵焼き
・金婚漬
・春雨の酢の物金婚漬
・桜もち
およそ10年の歳月をかけて開発されたという、岩手のお米「金色の風」。
お米1つ1つの粒がもちもちとして、しっかりと歯ごたえと味わいがあり、かみしめるごとに、じわじわとその美味しさが広がります。
冷めても美味しいのはもちろん、個性は強いはずなのに、周りのおかずを決して邪魔しない、上品なお米の印象を受けました。
赤魚の塩焼き、玉子焼きといった幕の内の定番おかずに加え、「あべちう」の十八番とも言える、奥州いわいどりを使った照り焼きは美味!
ご飯には岩手県産の金色漬が添えられている他、デザートとして一関の餅文化をイメージした桜餅が入っているのも嬉しいところです。
コチラも「駅弁味の陣2019」のエントリー駅弁となっています。
岩手県が誇るブランド米「金色の風」と「銀河のしずく」。
正直、どちらも甲乙つけ難い魅力のある味わいです。
この2つのお米を「1150円の幕の内弁当」という形で、岩手県やJR、駅弁屋さんがコラボしながら、食べ比べることができるのは、旅行者にとってはとても有難いこと。
こういった取り組みがあることで、鉄道旅の魅力は大きくアップしているように感じます。
世界遺産・平泉の帰り、ぜひ2つのお米を食べ比べてみることをお薦めします。
金と銀、その際立つ個性の違いに、旅仲間同士なら盛り上がること間違いなし!
そして、きっと日本の米文化の奥深さを感じられることでしょう。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/