【ライター望月の駅弁膝栗毛】
赤い夕陽を浴びながら、真田の“赤備え”電車が、信州・塩田平をトコトコと進みます。
コチラの電車は、「さなだどりーむ号」の愛称を持つ「上田電鉄」の6000系電車。
昔、東急東横線~日比谷線直通列車として、日比谷・銀座界隈の地下を走っていた車両が、いまは信州・上田で“第二の人生”を送っています。
上田電鉄別所線は、上田~別所温泉間・11.6㎞を結ぶ、のどかなローカル線です。
別所線は、台風19号の影響で上田~城下間の千曲川に架かる赤い鉄橋が崩落したため、上田~下之郷間でバスによる代行輸送となっていましたが、11月16日(土)から、城下~別所温泉間の電車運転を再開し、バス代行は上田~城下間の1駅間のみとなります。
鉄橋の修復にはしばらく時間がかかりそうですが、沿線の大学などへの通学の足でもあり、代行バスの区間が大幅に縮小されるのは、地元のみなさんにも朗報ではないかと思います。
なお、上田駅の別所線代行バス乗り場は、通常の路線バスとは反対の「温泉口」ですので、北陸新幹線から別所温泉方面へ向かう方は、少し時間に余裕をみておくのがお薦めです。
11/16からは上田~別所温泉間が概ね40分程度となり、通常ダイヤに近くなります。
別所線の終点・別所温泉駅は、“ハイカラ”という言葉が似合う、小ぢんまりとした駅。
日中は、改札でも“はいからさん”のような和装をした女性駅長さんがきっぷを集めます。
駅には券売機もありますが、窓口では昔ながらの硬い切符(硬券)も販売中。
駅前には、気軽に日帰りで「別所温泉」のお湯を楽しめる「あいそめの湯」もあります。
別所温泉は、鉄道駅から近く、国宝八角三重塔がある安楽寺を含め、温泉街の見どころを、ほぼ歩いて回り切れること、そして何よりフワッとした硫黄系の湯の香と、青みがかった優しい手ざわりの温泉が魅力的です。
私自身が15年ほど、すっかりリピーターになっている「旅宿上松や」の風呂に掛け流されている4号源泉は、50.6℃、ph8.7、成分総計307㎎/kgのアルカリ性単純硫黄温泉。
飲泉も可能で、宿はもちろん、温泉街の外湯周辺にも「飲泉塔」が設けられています。
今年(2019年)、創業150周年の節目を迎えた「旅宿上松や」では、11月に入って、台風19号復興支援企画として、「リンゴミニ露天風呂」を行いました。
これは台風による枝ずれなどで出荷できなくなったりんごを使った、信州らしい露天風呂。
湯の香とりんごの爽やかな香りに包まれてぬくぬくすれば、視線の先には熟した柿の実!
いつもより時間はかかっても、秋の別所温泉へ足を運んだ甲斐があったというものです。
別所温泉のある上田市には、「信州ハム」の本社・上田工場もあります。
この信州ハム製のウインナーも入った新作駅弁、「信州プレミアムサンドBOX」(700円)が、長野駅弁を手掛ける「デリクックちくま」から登場しています。
別所温泉で「北向観音」をお参りしただけでは、“片参り”になってしまうと云われますから、きっと、長野市の「善光寺」にも足を運んで、長野駅にも立ち寄りますよね!
【おしながき】
・信州産小麦100%使用サンドイッチ
(厚切りカツサンド、玉子焼サンド)
・信州ワインブレッド
・ラティスカットポテトフライ
・信州サーモン燻製入りマリネ
・信州ハム製ウインナー
「駅弁味の陣2019」にも出陣している、国産小麦を使った珍しいサンドイッチ駅弁。
信州ワインブレッドは、生地に人気の信州ワインを練り込んでいるとのこと。
「デリクックちくま」によると、長野から出張帰りの方に向けて、新幹線で軽くつまめる駅弁として開発したそうで、現在はボランティアで長野を訪れているみなさんにも好評だと言います。
温泉旅好きにとっては、お宿でたっぷりご飯をいただいた次の日、軽い食事が恋しくなりますので、別所や湯田中・渋、野沢など、信州の各温泉帰りにもよさそうなパン駅弁です。
国鉄時代から活躍してきた115系電車の様々な塗色が話題を呼んでいる「しなの鉄道」。
こちらも台風19号の影響により上田~田中間で運転を見合わせていましたが、きょう(11月15日)から通常ダイヤで運行を再開しました。
一部を除いて、通常通りの営業を行っている長野県の観光地。
交通機関もほぼ平常になってきたいま、信州へお出かけになってみてはいかがでしょうか。
ライター望月の駅弁膝栗毛
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/