【ライター望月の駅弁膝栗毛】
埼玉・羽生から熊谷、寄居、長瀞、秩父を経由して三峰口までの71.7㎞を結ぶ「秩父鉄道」。
きょう(11月8日)で、創立120周年の節目を迎えました。
始発の羽生で東武伊勢崎線、熊谷でJR上越・北陸新幹線・高崎線、寄居でJR八高線・東武東上線、御花畑で西武秩父線と接続し、貨物列車も多数運行されているのが特徴。
週末中心に“都心から一番近い蒸気機関車”「SLパレオエクスプレス」も運行されています。
「SLパレオエクスプレス」は、昭和63(1988)年のさいたま博覧会を機に誕生しました。
国鉄生まれで埼玉・吹上町で保存されていたC58形蒸気機関車が客車(現在は12系4両)をけん引、熊谷~三峰口間を片道約2時間40分かけてのんびりと走ります。
「パレオ」とは秩父に約2000万年前に生息していた海獣・パレオパラドキシアにちなんだ名前で、その骨格復元像は上長瀞駅近くの「埼玉県立自然の博物館」に展示されています。
「SLパレオエクスプレス」の下り列車は、熊谷を出ると暫くは平地を走りますが、寄居からは荒川に沿って少しずつ勾配を登って行きます。
途中、寄居・長瀞・秩父などで比較的長めの停車があり、各駅停車の電車を先に通します。
このためSL列車に乗るだけでなく、各停で追いかけながら、数ヵ所で撮影も楽しめます。
「C58 363」は12月3日まで、創立120周年記念でコーポレートカラーの青色ナンバープレートを掲げています。
今年(2019年)10月には、C58形蒸気機関車に、熊谷でも試合が行われたラグビー・ワールドカップの記念ヘッドマークを掲げて運行された日もありました。
「SLパレオエクスプレス」は熊谷~三峰口間の全区間で車内販売があり、お菓子類や飲み物、秩父鉄道のオリジナルグッズなども販売されています。
この車内販売で買い求めたいものと言えば…?
オリジナルの弁当「SLパレオランチ」(1000円)です。
この弁当は、熊谷市内の立石食品が製造、秩鉄商事が販売しており、掛け紙には「SLパレオエクスプレス」のオリジナルキャラクター・パレオくん、パレナちゃんも描かれています。
下り列車では、熊谷を出ると程なく、かごを持った販売員の方が車内を巡回。
終着・三峰口まで乗り通すなら、到着は午後1時近くなりますので、弁当は必須です。
【おしながき】
・白飯 汽車型海苔 梅干
・焼き鮭
・シュウマイ
・揚げ春巻
・エビチリ
・ザーサイ
・とんかつ
・ソーセージ
・ナポリタン
・玉子焼き
・豆腐すり身あんかけ
・ごぼうの煮物
白いご飯の上に蒸気機関車型の海苔と焼き鮭が載って、旅気分を盛り上げます。
懐かしいSLの旅らしく、おかずの構成も、どこか懐かしい雰囲気。
中華、洋食、和食が1つの折に入って、昔の百貨店にあった“大食堂”のようです。
年配の方には懐かしく、小さいお子さんはお子様ランチ気分といった印象も受けます。
ぜひ、世代を超えた家族で、弁当と一緒に汽車旅を楽しむことにより、列車のボックスシートで、弁当を味わう“食文化”を次の世代に、蒸気機関車同様“動態保存”していきたいものです。
秩父鉄道では週末及びSL運行日などに、全線が乗り放題になる「秩父路遊々フリーきっぷ」(1470円)を販売しており、別途SL整理券(520円)を購入するとSLにも乗車できます。
天候に恵まれると、熊谷駅では週末の朝9時半ごろから切符を買い求める人で長蛇の列となりますので、特に下り列車に乗る方は、早めに熊谷駅に着いておくことをお薦めします。
なお、来年・令和2(2020)年は、蒸気機関車の検査のため、1年間SLはお休み。
この秋は紅葉の名所・長瀞の景色を眺めて、創立120周年の「秩父鉄道」の旅を楽しんでみてはいかがでしょうか。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/