【ライター望月の駅弁膝栗毛】
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E231系電車・各駅停車、総武本線・両国~浅草橋間
冬晴れの隅田川を、総武線各駅停車の黄色い帯を巻いた電車が渡って行きます。
1/12(日)からは、大相撲初場所も始まり、両国周辺は大いに賑わいそうです。
総武線各駅停車は、千葉~御茶ノ水間で総武本線の各駅に停まり、中央本線に乗り入れ、三鷹までの各駅に停車していきます。
このため、駅や列車では「中央・総武線」「中央・総武各駅停車」といった案内が行われます。
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両国駅
総武本線・両国駅は、かつて千葉方面へ向かう列車の始発駅でした。
昭和初期、関東大震災の復興事業で、総武本線は御茶ノ水へ延伸されて、中央本線への直通運転も始まりましたが、房総方面へ直通する急行列車などは、昭和47(1972)年の東京地下駅開業後も、昭和50年代まで、多くの列車が両国始発で運行されました。
その名残を感じさせるのが、いまも1本だけ残された、両国駅“幻の”3番線ホームです。
(参考)両国駅ステーションギャラリー
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おでんで熱燗ステーション会場(255系電車・回送列車、総武本線・両国駅)
そんな両国駅3番線ホームで、1月9日~12日の4日間、全国燗酒コンテスト実行委員会の主催で開かれているのが、「おでんで熱燗ステーション」です。
ホームで行き交う列車を眺め、おでんをつまみに全国各地の燗酒を楽しめる、鉄道好きはもちろん、酒好きにもたまらないイベント。
しかも一部の席では、駅のホームでこたつに入りながら“おでんで1杯”ができるんです!
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おでんで熱燗ステーション
受付を済ませると、御猪口と10枚の燗酒試飲券などが手渡されます。
会場で振舞われている日本酒は、平成21(2009)年から開催され、今回は268の酒蔵が参加して行われた「全国燗酒コンテスト2019」で見事、金賞以上に輝いた名酒ばかり。
しかも、各酒蔵の社員の方、もしくはきき酒師の資格を持ったみなさんが、酒を最適な温度で提供するほか、それぞれの酒にまつわる薀蓄も語ってくれます。
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おでんで熱燗ステーション
つまみの「おでん」は、協賛の「紀文食品」から提供される5種類のおでんからチョイス。
紀文と言えば、大相撲の土俵着でもおなじみですよね。
オーソドックスな「東京下町おでん」や「だし自慢おでん」に始まり、名古屋風の「赤からおでん」「味噌煮込みおでん」、そしてご当地グルメとして人気の「静岡風おでん」まで。
直前までしっかり保温されているので、ハフハフしながらいただくことができます。
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おでんで熱燗ステーション
気になる蔵元のブースに並んで、それぞれの酒にまつわるエピソードを伺いながら、ご当地の話題に花を咲かせていくのが楽しいひととき。
但し、制限時間50分の入れ替え制ですので、昨年(2019年)も参加したリピーターの方のなかには、「今年(2020年)はガンガン行きます!」と意気込んでいる方もいた様子。
でも、日本酒は「自分に合ったペースで、自分が好きな呑み方をするのが美味しい」と昔、訪ねた広島・西条の酒蔵の方がおっしゃっていましたので、くれぐれも無理はしないように…。
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おでんで熱燗ステーション
私はやっぱり、トレインビューで燗酒をいただきます。
総武線各駅停車の黄色い電車は、近年、山手線で活躍していたE231系電車(500番台)への置き換えが進んでおり、これらの車両の多くは、新潟・新津で製造された車両です。
ということで、今回は、全部で6つ参加している新潟の酒蔵をメインにいただきます。(注)
新潟の職人さんが作った車両を眺め、新潟の職人さんが作った酒を呑む…、最高です!
(注)1/9~1/10と、1/11~1/12で一部の酒蔵が入れ替わりますのでご注意下さい。
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静岡風おでん
つまみのおでんは、やっぱり、私のふるさとの味「静岡風おでん」。
静岡のおでんの特徴は、「黒はんぺん」が入っていること。
さらに、富士宮焼きそばでもおなじみの“だし粉”をかけていただくと、静岡らしいですよね。
できれば、数人のグループで、各地のおでんを食べ比べてみると、一層盛り上がりそう。
駅弁同様、それぞれの地域の食文化も楽しみたいものです。
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おでんで熱燗ステーション会場(255系電車・回送列車、総武本線・両国駅)
会場の最奥には、こたつ席が設けられており、一部は「撮影用こたつ席」となっています。
この3番線に、特急「しおさい」(東京~銚子間)をはじめとした房総特急で活躍する255系電車が入線する時間帯があり、この間が最もSNS映えしそう。
スタッフの方によると、“鉄分濃いめ”の方のなかには、この回送列車のダイヤを把握した上で、敢えて入線する時間帯のチケットを購入されている方もいるそうです。
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トリュフの燗酒
チケットとは別料金(1000円)で楽しめるのが、最近、ニューヨーク・ブルックリンにある日本酒の酒蔵が取り組んでいるというトリュフの燗酒。(各回10杯限定)
“ホームでこたつ酒”に加え“トリュフの燗酒”など、さまざまな攻めた取り組みを行っていますが、主催者の方によると、背景にあるのは、20~30歳代のみなさんの“日本酒離れ”。
そこで、このような“少し変わった”イベントを通じて、1人でも多くの方に日本酒を味わってもらえる機会を作りたいのだそうです。
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おでんで熱燗ステーション会場(255系電車・回送列車、総武本線・両国駅)
最近はとかく糖質制限と言われますが、やはり寒い冬は“おでんに熱燗”が日本の食文化。
この食文化を、駅のホームという、普段とちょっと変わった場所で堪能すれば、それはまた何気ない日常のなかに再発見があるかもしれません。
正月、遊び過ぎてしまった方は、この週末、都内でのんびり…の方も多いハズ。
両国駅の改札内で、終電や車の運転を気にせず、軽~く1杯、いかがですか?
連載情報
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ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/