【ライター望月の駅弁膝栗毛】
2階建て新幹線「Maxとき」のE4系新幹線電車。
いまでは上越新幹線“専用”ということもあって、朱鷺色(ピンク)の装飾が施されています。
平成26(2014)年春に開催された「新潟デスティネーションキャンペーン」をきっかけに、初代Max(E1系)に次いで、2代目Maxも朱鷺色の帯を巻くことになりました。
E4系新幹線電車も、まだまだ上越新幹線での活躍が見られそうです。
新潟地区を走る普通・快速列車の主力・E129系電車も、朱鷺色のピンクと稲穂の黄色い帯を巻いたステンレスの電車です。
佐渡におけるトキの保護活動は、放鳥され、繁殖したトキの餌場となるような田んぼ作り、米作りと大きく関係していると伝えられています。
その意味でも“朱鷺色と稲穂”は、とても“新潟らしい”密接な関係なんですね。
(参考)JAホームページ
ライター望月が全国各地の駅弁屋さんを訪問し、駅弁の製造過程や、駅弁へのこだわりをトップの方に訊く特集企画「駅弁屋さんの厨房ですよ!」。
第20弾は、新潟市秋葉区の新津駅前にある「株式会社新発田三新軒」にお邪魔して、伊田研一(いだ・けんいち)社長にお話を伺っています。
今回は、新潟ならではの米、食材について、訊いてみました。
●佐渡産にこだわる「幕の内」のお米!
―ご飯へのこだわりを教えて下さい。
駅弁は「冷めても美味しい」という大前提があります。
安い、まずいお米は、絶対に使うことができません。
「新発田三新軒」では、幕の内弁当については、佐渡産のコシヒカリを使用しています。
佐渡産は値段が高いですが、美味しいので使用しています。
きっかけとなったのは、「佐渡朱鷺めき弁当」という駅弁です。
―「幕の内については…」ということは、他の駅弁ではお米を変えているんですか?
寿司飯については、2種類のお米をブレンドして使用しています。
新潟産コシヒカリと、新潟産こしいぶきを半々にしています。
コシヒカリだけですと、粘りが強すぎる寿司飯になってしまうんです。
当初はこしいぶきのほうが若干安かったですが、いまはほとんどコシヒカリと変わりません。
コストの面ではなく、単純にご飯の美味しさという点でブレンドをしています。
●駅弁には、地産地消にこだわる駅弁とこだわり過ぎない駅弁の2種類ある。
―おかずの食材には、どんなこだわりがありますか?
駅弁の特性によって、2種類に色分けしています。
「新潟県産」にこだわる駅弁と、必ずしも地産地消にはこだわらない駅弁です。
地産地消でいちばんネックになるのが、食材の「安定供給」の面です。
安定して仕入れることができないものは、大量に製造することができません。
大量に製造することができないということは、ヒット商品につながりにくくなります。
―地産地消にこだわっている駅弁には、どんなものがありますか?
新潟の食材にこだわった駅弁と言えば、「佐渡朱鷺めき弁当」をはじめ「湊街にいがた華やぎ弁当」、駅弁味の陣2019にも出陣した「柳がれい寿司」あたりでしょうか。
特に「佐渡朱鷺めき弁当」は、佐渡産の食材にこだわって作った駅弁です。
食材の仕入れについては、新潟に強い問屋さんと、全国組織の安定供給が得意な問屋さんと、特性に合わせて2つの性格が異なる問屋さんから仕入れるようにしています。
―「佐渡ときめき弁当」は、本当に凝ったパッケージの駅弁ですよね?
朱鷺の舞う佐渡を夢見ていたころのパッケージデザインです。
じつは駅弁の掛け紙の題字は、私が書いているものもあります。
この「佐渡朱鷺めき弁当」や、「えび千両ちらし」の文字も、私が書いています。
私自身がパッケージをデザインすることだったり、(「えび千両ちらし」のお礼状のように)、書くことが好きなんです。
(株式会社新発田三新軒・伊田研一社長インタビュー、つづく)
【おしながき】
・ご飯 佐渡産コシヒカリ 干し海老 桜花添え
・魚 銀鮭の塩焼き、一夜干しいか
・揚げ物 山芋の短冊揚げ、海老しんじょう揚げ
・煮物 帆立貝、里芋、蓮根、人参、にしんの一口昆布巻き
・焼き物 玉子焼き
・和え物 豆おからのサラダ
・練り物 朱鷺の絵蒲鉾
・おひたし
・香の物
・その他 チェリー、一口笹団子
平成15(2003)年、前年12月のダイヤ改正で上越新幹線の愛称に「とき」が戻って来たことを記念して誕生したという「佐渡ときめき弁当」。
トキの羽や佐渡島が形どられたパッケージ、佐渡産コシヒカリ100%の白いご飯も、トキを彷彿とさせる形だったり、とにかく手が込んだ駅弁です。
それでいて、焼き鮭、玉子焼き、朱鷺の絵が入った蒲鉾と、幕の内弁当の「三種の神器」を押さえた基本に忠実な構成で1100円の価格設定に、とても嬉しい気持ちになります。
新幹線開業前まで、上野~新潟間の特急列車の愛称として親しまれた「とき」。
当時、相棒として活躍した上野~新潟間の急行列車の愛称も、「佐渡」でした。
鉄道では行くことが叶わない佐渡島ですが、江戸時代初期に発見された金山に多くの人を引き付けたように、いまもその豊かな恵みが大きな輝きを放っています。
「駅弁屋さんの厨房ですよ!」第20弾・新発田三新軒編、次回、いよいよ完結です。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/