【ライター望月の駅弁膝栗毛】
新潟の“地産地消”電車として知られるE129系電車。
新潟市秋葉区の「株式会社総合車両製作所 新津事業所」で製造され、信越本線をはじめ、新潟エリアの各線で活躍しています。
各車両1両の半分がロングシート、残り半分がクロスシートとドア横のロングシートを組み合わせたセミクロスシートになっており、通勤通学と長距離乗車それぞれに対応しています。
今年(2019年)7月、JR新津駅にオープンした新潟市秋葉区の「あ!キハ」観光案内所。
鉄分濃いめの方なら、ピンときたネーミングかもしれません。
秋葉(あきは)という区の名前と、新津にも拠点があるディーゼルカーの普通車を表す記号、「キハ」を組み合わせた“鉄道のまち”ならではの愛称です。
案内所には、秋葉区の歴史や鉄道に博識なスタッフが常駐していると言います。
(注)冬季は1~2月の間休業、3月は週末のみ開所、4月以降は再開予定。
「新潟県・庄内エリアデスティネーションキャンペーン」が開催された、今年11~12月にかけて、「にいつまるごと鉄道三昧2019」が開催されました。
新津運輸区や「SLばんえつ物語号」のC57形蒸気機関車の車庫を見学するAコースと、新津鉄道資料館と、総合車両製作所新津事業所を見学するBコースを設定(各1500円)。
それぞれ平日開催ながら、約2.5倍の応募があり、満員御礼の盛況ぶりとなりました。
今回は、12月16日に開催されたBコースのみなさんに密着しました。
「あ!キハ」を出発後、まずは「新津鉄道資料館」で、軽めの“ウォーミングアップ”。
今年からイベント時に特別公開されているE4系新幹線電車の運転台を見学します。
現役活躍中の「Max」の運転士さんになったような気分で、お子さんたちも満足。
いまは運転台撮影禁止のため、その景色はしっかり記憶に焼き付けておきます。
そしてBコースのメインイベントと言ってもいいのが、ツアーとしては初めての公開となった「総合車両製作所(J-TREC)新津事業所」の見学。
「総合車両製作所新津事業所」は、平成6(1994)年にJR東日本の新津車両製作所として発足し、平成26(2014)年に東急車両製造と経営統合され、いまの形となりました。
現在、首都圏の通勤電車の半分以上が、この新津事業所で作られていると言います。
簡単な概要の説明を受けてから、ヘルメットを着用して製造現場を巡ります。
事業所内では、ステンレスをロボットや機械を使って加工する様子を見学したり、1人1人の職人さんたちによる溶接作業などをじっくりと見ていきます。
幅広の裾絞りの車体や屋根の曲線が作られていく様子は、まさにモノづくりの現場。
1両作るのに約半年、年間約240両が、ほぼ1日1両ペースで生産されているそうです。
出来上がった車両は、事業所内にある400mの試験線で試運転を繰り返したのち、信越本線・新津~羽生田間で4往復の試験走行をクリアして、“出荷”されていきます。
伺った日は、山手線用のE235系電車・全50編成分が出場していった直後でした。
ちなみに、E235系電車の第16編成(クハE235-16)には、新津で車両が作られて5000両に到達した記念の銘板が取り付けられているので、山手線で出会えたらラッキーかも!?
総合車両製作所新津事業所の濃密な時間の後は、これまた濃い昼食!
新津は駅弁屋さんが3社ある駅ということで、新津で作っている1000~1100円の駅弁を、まるごと集めて、ツアー参加者のみなさんに申し込み順で選んでもらいます。
おなじみの駅弁があれば、なかなか普段はお目にかかれないレアな駅弁も…。
さあ、いの一番にツアーに参加を申し込まれた方が、悩んだ末、手にした駅弁は??
さすが人気駅弁、「まさかいくらなんでも寿司」をチョイスされました。
地元の方にとって、駅弁はやはり「出かけるときにいただくもの」というイメージが強いようですが、今回1つの席で、みんなで折を開いていただいたことで、「地元の集まり」や「お客さんのもてなし」でも、駅弁はアリではないかと話された参加者の方もおられました。
“駅弁大学”と言われたのははるか昔、いまや駅弁屋さんがある街は、すっかり希少ですから、立派な地元の誇りですよね!
こういうときは、大概「知名度」の高い駅弁から手に取られていきます。
私自身は最後に残っていたものを手にしたのですが、残り物に福があるとはよくいったもの。
ラインナップでいちばん気になっていた「新発田三新軒」の「紅白味付け豚合戦」(1100円)を、無事ゲットすることができました。
紅白“豚”合戦なんて、12月31日にご紹介するにはピッタリの駅弁でしょう!?
【おしながき】
・白米(新潟県産米)
・純白のビアンカ豚肉焼き(塩麹味、味噌味) 粉チーズ、紅生姜
・出汁入り厚焼き玉子
・アスパラガス
・赤かぶ酢漬け
・食用菊
「新発田三新軒」の調理場の女性の方が描かれたという、可愛らしい絵のスリーブ式包装を開けると、塩麹味とピリ辛の味噌味、2つの味わいの豚肉が楽しめます。
長岡市で育てられ、おなじみヤスダヨーグルトのホエーを与えられたというご当地ブランド、「純白のビアンカ」を使って開発されたというこの駅弁。
じつは新潟駅では未発売で、新潟競馬場の競馬開催時やイベント等で販売されているそう。
「新発田三新軒」によると、パッケージなどに若干修正を加えながら、来年(2020年)には、新潟駅でも販売できるようにしていきたいということでした。
新津産の駅弁でお腹を満たした後は、地元のガイドさんと一緒に「にいつ鉄道商店街」へ。
鉄道をテーマとした商店街をぶらぶら歩いて、懐かしい駄菓子屋さんにも立ち寄ります。
この「にいつまるごと鉄道三昧2019」を企画した、新潟市秋葉区役所の水澤喜代志さんによると、新津事業所の見学は、8年越しの粘り強い交渉があって実現したものだそう。
ツアーをきっかけに、新津を「もっと鉄道で滞在できる街」にしていきたいと意気込みます。
行政、JR、商店街が連携し、市民の理解を得ながら展開される「鉄道のまち にいつ」。
昔、市民の4人に1人が国鉄職員だったという歴史を持つ「新津だからできる取り組み」と、水澤さんも胸を張ります。
そんな新津で作られている「紅白味付け豚合戦」をはじめとした「新発田三新軒」の駅弁。
新年最初は、東日本エリアで人気No1も獲得したあの駅弁の製造過程に密着します。
みなさん、よいお年をお迎えください。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/