【ライター望月の駅弁膝栗毛】
広島エリアのJR線の主役・227系電車。
貫通扉に見える「C」のロゴは、プロ野球・カープのCではなくて、広島近郊エリアの各線をブランディングした「JRシティネットワーク広島」のロゴマークです。
来年(2020年)春のダイヤ改正では、土休日の山陽本線・広島~岩国間、西条~広島間で、快速「シティライナー」の運行が再開され、宮島へのアクセスがより便利になる見込みです。
(参考)JR西日本広島支社ニュースリリース・2019年12月13日分
山陽本線・宮島口駅を降りると、国道2号を地下道で渡って、宮島口桟橋へ。
宮島へは、「JR西日本宮島フェリー」などで渡ることができます。
明治36(1903)年に山陽鉄道(当時)直営になった宮島航路は、山陽鉄道が国有化されて国鉄、JRと受け継がれ、10年前からは、「JR西日本宮島フェリー」となっています。
かつての青函連絡船、宇高連絡船などと同じ、「鉄道連絡船」の1つです。
宮島口~宮島間の所要時間は、およそ10分。
日中の便は、厳島神社の大鳥居の前を通る「大鳥居便」として運航されています。
通常は15分間隔、初詣で賑わう三が日は、日中10分間隔で運航される予定です。
鉄道連絡船ですので、「青春18きっぷ」などの鉄道のきっぷで乗船できるのが特徴。
いまでは、Suica・ICOCAなどの交通系ICカードで乗船可能です。(大人片道180円)
さて、宮島口駅に降り立って、宮島に渡り、厳島神社に参拝し、もみじ饅頭を土産に買って、それで満足という方は、せっかく足を運んだのに、本当に勿体ない!
宮島口駅と宮島口桟橋の間にある「あなごめしうえの」に寄ることが、鉄道連絡船の乗船と合わせて、このエリアの鉄道旅では最重要テーマと言っても過言ではありません。
「あなごめしうえの」は、明治34(1901)年創業、宮島口駅の駅弁屋さんなのです。
宮島口駅の駅弁はただ1種類、120年近い伝統を誇る、「あなごめし」(2160円)です。
元々、宮島で米穀商を営んでいた上野家が、山陽鉄道の開通に伴って宮島口駅前に茶店を開き、宮島のご当地料理だった穴子どんぶりを駅弁化、「あなごめし」として販売しました。
昔はレッテルと呼ばれた掛け紙が12種類あり、どの掛け紙に当たるかも楽しい駅弁。
この日は、大正中期まで使われた「三十銭」の刻印があるものとなりました。
【おしながき】
・ご飯(国産米、国産もち米)
・あなご蒲焼き
・漬物
うえのの「あなごめし」、キーワードを1つ挙げるとすれば、「ふんわり」。
いい匂いが「ふんわり」香り、穴子は「ふんわり」焼き上げられ、その下のご飯は、冷めても「ふんわり」とした食感が楽しめる、何とも贅沢なひとときを提供してくれます。
駅弁化に当たって白飯は、穴子のアラを炊き込んだ醤油味飯となったのだそう。
しっかりと味のしみ込んだご飯1粒1粒まで、残さずにいただきたくなりますね。
「あなごめしうえの」によると、「あなごめし」の穴子は煮たり、蒸したりしないのが特徴。
シンプルに、特製のたれに3度つけて焼き上げていると言います。
それだけに食材勝負で、脂がのった素材のいい穴子を使用しているとのこと。
掛け紙を外し、経木の折のふたを開け、香りを楽しみ、心地よい歯ごたえの穴子に辿り着く、その1つ1つの所作すら無駄にしたくない、そんな愛おしさを憶える駅弁です。
うえのの「あなごめし」は、宮島口桟橋近くの本店はもちろん、宮島口駅前にあるセブンイレブン(JR系のコンビニ・旧ハートインから転換)にも1日数回納品され、販売中。
また、JR広島駅改札外「ekie(エキエ)」2階にある、西日本エリアの駅弁が集結した売り場「駅弁さい彩」でも、午前と午後に30~40個程度の限定で販売される時間帯があります。
(「あなごめしうえの」によると、特に夕方は入荷10分程で完売ということもよくあるそう)
年末年始の帰省、厳島神社への初詣などの折、ぜひ手にしたい駅弁です。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/