【ライター望月の駅弁膝栗毛】
昭和39(1964)年の東京オリンピックで、マラソンと競歩のコースとなった甲州街道。
この甲州街道に沿うように走るのが「京王線」です。
平成30(2018)年からは、新宿~京王八王子・橋本間に、有料(410円)の座席指定制列車「京王ライナー」も登場し、より快適な通勤やお出かけが実現しました。
新年の京王5000系電車は、「迎春」のヘッドマークを付けて、誇らしげに走って行きます。
上りの「京王ライナー」には、朝9時台に新宿に到着する列車もあります。
駅直結の京王百貨店の営業は朝10時からですので、開店にはバッチリ間に合います。
その京王百貨店新宿店で、1月21日(火)までの予定で開催されているのが、今年(2020年)で55回を数える「元祖有名駅弁と全国うまいもの大会」。
昭和41(1966)年から続く、全国トップクラスの“駅弁大会”です。
「駅弁膝栗毛」は原則、全国各地の駅弁屋さんの地元に足を運んで、ご当地の鉄道風景や見どころと共にお伝えしていますが、京王の駅弁大会は別格!
全国の駅弁屋さんがこの催事に合わせ新作駅弁を開発したり、駅弁屋さんのトップの方が、自らブースに入ることも多く、駅弁界の1年を占う上でも見逃すことのできないイベントです。
早速、京王百貨店新宿店の堀江英喜統括マネージャーに、今回の見どころを伺いました。
●5つのカニ駅弁が導く、駅弁大会の原点!
―55回を迎えた、今回の見どころは?
何と言っても、「5種のカニ駅弁対決」です。
特にかにめし駅弁の元祖と言われる、北海道の函館本線・長万部駅の「かにめし」を、特別に実演でお届けすることができました。
加えて、北海道から旭川、釧路、小樽の各駅弁屋さん、本州からは福井駅の番匠さんに、今回のためにオリジナルのかに駅弁を開発いただきました。
―カニ対決になった背景は?
京王の駅弁大会にお越しいただくお客様は、昔から「カニ」の人気が高い傾向があります。
過去、昭和41(1966)年に行われた第1回大会からずっと、どこかの駅の「カニ駅弁」が、売り上げのトップ5に入っているんです。
ですので、55回を迎えた今回は、草創期からの原点に立ち返りまして、長万部の“元祖”とされる「かにめし」に対して、各社さんが工夫を凝らした駅弁で挑む格好となります。
●「5」という数字が気になる1年!?
―各社さん、本当に工夫された駅弁が多いですね?
我々もそれぞれの駅弁屋さんと話し合いを重ねまして、より美味しく、より華やかな駅弁を一緒に作り上げてきました。
福井駅「番匠」さんの駅弁は、試作ではカニの棒肉が載っただけでしたが、話し合うなかで、爪肉を入れたり、敷き詰めるカニの色合いも、より彩りよくする工夫をしています。
最終的には、カニ味噌を入れて「5つの味」が楽しめる駅弁に仕上げました。
―「5社」で対決って、珍しいですよね?
今年・2020年は、大きなイベントが控えています。
何かと、「5」という数字が注目される年になろうかと思います。
5社対決はもちろん、5つの味や金色やメダルにちなんだ「黄金の駅弁対決」もあります。
2020年ならではの企画になったかと思います。
何回も試作したり、容器の形を変えたり、試行錯誤を繰り返して作り上げた駅弁ばかりです。
(京王百貨店新宿店・堀江英喜統括マネージャー インタビュー、つづく)
昭和25(1950)年誕生、今年で70周年のロングセラー駅弁、函館本線・長万部駅前にある「かにめし本舗かなや」が手掛ける「かにめし」(1180円)。
手に取るとしっとりした手触りが感じられる、余計な水分を吸い込んだ経木の折。
綴じ紐をほどいて、おなじみの掛け紙を外していく瞬間が楽しいものです。
かにめしの歴史の重みはもちろん、駅弁の原点をも感じさせてくれます。
【おしながき】
・ご飯(北海道産) 梅干し
・味付けカニほぐし身 筍 椎茸 錦糸玉子
・わかめ佃煮
・大根桜漬け
・みかん
かなやの「かにめし」は、ほぐしたカニの身を筍と、水分がなくなるまでじっくりと「炒る」のが、美味しさの秘密と云われます。
この美味しさが評判を呼び、北海道各地に類似のかにめし駅弁が生まれ、やがてそこから、海鮮丼のような豪華なカニ駅弁が生まれていきました。
5社のカニ駅弁を食べ比べるなら、まずは“元祖”の味わいをしっかりと押さえて基準とし、どのようにカニ駅弁が発展し、アレンジされていったのか見極めるのが面白そうです。
かなやの「かにめし」は長年、函館~札幌間を走る特急列車「スーパー北斗」に積み込まれていましたが、残念ながら、平成31(2019)2月で車内販売が終了したことに伴い、現在は長万部で途中下車をしないと、購入することができません。
ただ、長万部駅前の「かなや」の店舗には、かつての津軽海峡線・快速「海峡」で使われたシートを再利用した飲食処、「自由席」が併設されているのが嬉しいところ。
駅弁大会で駅弁に出逢ったら、次はぜひ自分の足で、現地へと足を運びたいものです。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/