【ライター望月の駅弁膝栗毛】
週末を中心に新潟~酒田間で運行されている快速列車「海里」。
ハイブリッド式のHB-E300系気動車の車体には、日本海の夕日と新雪をイメージしてグラデーションで表現したという紅白のカラーリングが施されています。
「海里」の愛称は、新潟や山形・庄内地方の豊かな海や里が育んだ美味しいものや景色を楽しんでもらえるように名付けられたと言います。
(参考)JR東日本ホームページ
「海里」の山形側の発着駅・酒田は、北前船で栄えた港町です。
庄内で作られたり、最上川で運ばれた米は、酒田から全国へと積み出されていきました。
そんな酒田のシンボルと言えば、明治26(1893)年に建てられた「山居倉庫」。
いまも現役の倉庫で、物産館や庄内米歴史資料館が併設されています。
驚異的な視聴率を誇った朝ドラ「おしん」のロケ地としても知られています。
(参考)酒田観光物産協会ホームページ
この日は酒田発の上り「海里」にも乗車、2号車のコンパートメントシートが指定されました。
コンパートメントシートは、背ずりの部分を引き出して、フルフラットにすることも可能。
ハイブリッドの特性を活かし、1区画につき1口の電源用コンセントも設置されています。
上り列車は、酒田を出ると、余目、鶴岡、あつみ温泉、桑川、村上、坂町、中条、新発田の順に停車し、終点・新潟には18:31に到着、上越新幹線「とき344号」に接続します。
酒田を出て20分あまりの鶴岡で、上り「海里」は最初の小休止。
3月のダイヤ改正以降は、約30分の停車時間が設けられることになっており、庄内土産をゆっくりと選ぶことができるようになる予定です。
観光列車は、この“長い”停車時間も、魅力の1つですよね。
そしてこの間に、上り列車向けの海里特製弁当(予約制)が積み込まれます。
鶴岡駅には地元出身、食の都 庄内親善大使・土岐正富氏の監修で、平成27(2015)年から、ミートデリカ・クドーの製造、NEWDAYSで販売される「駅の弁当 庄内弁」があります。
この「庄内弁」のレシピをベースにアレンジを加え、今回、酒田発の上り「海里」に鶴岡から積み込まれるのが、「海里特製 庄内弁」(2000円、3月から2100円)。
海里特製版は、鶴岡駅前の「彩鶴」が製造、「Fu-Do(ふうど)」が販売を手掛けています。
【おしながき】
・庄内沖 旬魚の味噌粕漬 酢取りみょうが添え
・庄内浜 紅えび入り豆腐かまぼこ
・鶴岡名物 むし玉子
・山形牛ローストビーフ 庄内産パプリカの南蛮漬添え
・遊佐生まれのめじか鮭 つや姫 殿様のだだちゃ豆のめっこい巻
・郷土料理 惣菜 三種盛り
出羽の里で採れたぜんまいの煮物
青みずのおひたし 由良漁港小鯛だし風味
どんごえと酒田名産庄内麩の炒め煮
・もって菊と黄菊の酢の物
・自家製ごま豆腐と郷土料理のいとこ煮 ごまソースがけ
・在来作物 温海の赤かぶ漬け 民田茄子のからし漬
「彩鶴」は、「庄内弁」をプロデュースした土岐正富氏が総料理長を務めるお店。
土岐氏が考案したメインの「めっこい巻き」は、庄内米・つや姫を使っただだちゃ豆ごはんを、遊佐生まれの脂がのった白鮭・めじかのあみえび魚醤漬けで巻いています。
山形牛のローストビーフやいとこ煮などが加わり、従来版よりおかずがボリュームアップ。
“庄内の美味しいものをギュッと詰め込んだ”という自負も納得の構成です。
「海里特製 庄内弁」も、事前に「びゅうプラザ」「えきねっと」等で予約。
当日、「海里」3号車の売店で、鶴岡駅発車後に、バウチャー券と引き換えていただきます。
「Fu-do」によりますと、「めじか」の不漁で、やむなく3月から2100円での提供になるそう。
2019年10月の「海里」運行開始以降、新潟~酒田間を往復で利用する方も多く、「行きと帰りで違う特製弁当が楽しめて嬉しい」という声も多いとのことです。
「海里特製 庄内弁」は、広大な庄内平野を眺めながらいただくもよし。
あつみ温泉の手前まで我慢して、日本海の夕日を眺めながらいただくのもよし。
フルフラットシートでプチ寝台&プチリッチな早めの夕飯気分。
昔、大阪~札幌間を結んでいた寝台特急「トワイライトエクスプレス」下り列車のディナーを、この日本海の夕日を見ながらいただいた記憶がよみがえってきました。
HB-E300系気動車の大きな窓一面に広がる日本海。
沖に浮かぶ粟島の灯りもチラチラと見え隠れします。
そして、シルエットで浮かび上がる、日本海の荒波が作り上げた笹川流れの奇岩。
3月以降の上り列車では、途中の桑川駅で約30分の停車時間が設けられており、美しい日本海の夕景を存分に楽しむことができるでしょう。
「海里」の乗車記念に買い求めたいのが、3号車売店で販売されているオリジナル商品。
私が思わず手に取ったのは、「笹川流れの塩 キャラメルパウンドケーキ」(320円)と、「月の雫の塩ガレット」(3個入り780円)。
どちらもバターが効いたいい香りが楽しめて、自身の小腹が空いたときはもちろん、家族や職場で特に親しくしている仲間への、「海里」のお土産としても重宝でしょう。
「食」をメインに据えた、新潟~酒田間の新しい観光列車「海里」。
冬季ダイヤから通常ダイヤとなる3月以降は、一部の日をのぞき途中駅での長時間停車も復活して、「笹川流れ」をメインとした美しい車窓も、より楽しめるようになります。
1・2号車の普通車指定席で「海里」に乗るなら、やはり海里特製弁当はマストアイテム。
新潟・庄内の美味しい食べ物と、美しい車窓を存分に満喫されてみてはいかがでしょうか。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/