【ライター望月の駅弁膝栗毛】
鳥海山を望みながら、庄内平野を駆け抜ける特急「いなほ」号。
新潟~酒田間を中心に運行され、一部の列車は秋田まで足を伸ばします。
上越新幹線と連絡して、主に山形・庄内地方へのアクセスを担います。
E653系電車のデザインは、「夕日・稲穂・海」がキーワード。
一部、「瑠璃色」「ハマナス色」に単色化された編成もあります。
庄内へやって来ると、いつも足を運んでいるのが、鶴岡の奥座敷「湯田川温泉」。
およそ1300年の歴史を誇り、国民保養温泉地にも指定されています。
温泉街までは、鶴岡駅から「路線バス」に揺られておよそ25分(510円)。
私が訪れる度にお世話になっている宿と言えば、「湯どの庵」。
先ごろ、食事が山形通にはおなじみ「フクモリ」ブランドのものにリニューアルされました。
のんびりしたくなる気持ちが止まらない、湯どの庵の内湯。
檜風呂と石風呂の2つがあり、特に石風呂の“寝湯”の曲線がたまりません。
注がれているのは、湯田川温泉各宿共通の42.2℃、ph8.7、溶存物質総量1,169mg/kgのナトリウム・カルシウムー硫酸塩泉。
もちろん、かけ流しのお湯を楽しむことができます。
石風呂には、露天風呂も併設されています。
露天に白い雪が舞い降り、お湯に触れてシュッと溶けていくのは、冬ならではの風景。
顔には冷たいものがチラチラ、首から下はぬくぬく、温泉っていいなぁと思う瞬間です。
ちなみに、「湯田川温泉」の名物は孟宗竹。
これからの春、まさに「旬」の季節を迎えるのです。
そんな湯田川温泉の玄関口・JR鶴岡駅の駅弁と言えば「駅の弁当 庄内弁」(1,200円)!
山形デスティネーションキャンペーンの翌年・平成27(2015)年のアフターキャンペーンに合わせて、山形県とJRが主導するプロジェクトによって開発された弁当です。
鶴岡市内で弁当・仕出しなどを手掛ける「ミートデリカ・クドー」が製造し、現在は鶴岡駅のNEWDAYSとクドーの店舗にて販売されています。
【おしながき】
・遊佐生まれのめじか鮭 つや姫 殿様だだちゃ豆のめっこい巻
・庄内豚のすきやき風 庄内麩入り
・出羽の里 山菜おひたし ぜんまいの煮物 由良漁港小鯛だし風味
・鶴岡名物 むし玉子
・庄内産 しそ巻
・温海の赤かぶ漬
・民田茄子のからし漬
とてもユニークな味わいを楽しめるのが、メインの「めっこい巻」です。
山形米・つや姫を酢飯にして、鶴岡特産のだだちゃ豆を混ぜ、鮭のなかでも1,000匹に1匹程度しか獲れない「めじか」と呼ばれる脂がのった白鮭を使用。
「ミートデリカ・クドー」によると、この鮭、身が柔らかくとても崩れやすいため、1枚1枚丁寧に、酒田ゆかりのあみえびの魚醤と塩麹に漬けて巻いているのだそうです。
豊かな食材に恵まれ“食の都”とも言われる庄内地方では、2000年代初頭まで酒田駅に駅弁があったものの、その後、長年にわたり、駅弁の無い状態が続いていました。
“食の都”なのに駅弁1つ無い状況を改善すべくプロジェクトが立ち上がり、鶴岡出身の料理人・土岐正富さんを監修に迎えて、出来上がったこの弁当。
ちなみにめっこい巻は、日本海の夕日をイメージして土岐さんが考案したものだそうです。
発売から間もなく4年、このクオリティの高さが評価され、豪華列車「四季島」向けにも、「庄内弁」の高級バージョン(5,000円)が納入された実績があるのだそう。
特急「いなほ」や新潟駅での販売を打診されたこともあったそうですが、添加物を使わずに届けたいという思いから、いまも鶴岡エリアだけでの販売にこだわっていると言います。
鶴岡駅のNEWDAYSには、朝と昼に納入されることが多いそうですが、確実な入手には、「ミートデリカ・クドー」(0235-22-1297)、およびNEWDAYSへの予約がお薦めです。
日本海からの夕日を浴びて、新潟を目指すのは、週末を中心に運行されている485系電車の快速「きらきらうえつ」。
春休み中の3/21~24の4日間は、秋田まで延長運転される予定で、下り列車は新潟9:31発となり、通常より40分ほど早くなります。(上りは秋田14:07発)
指定席券(520円)の追加で「青春18きっぷ」も使える、春の旅に有難い列車です。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/