新津駅「新潟たれカツ重」(900円)~駅弁屋さんの厨房ですよ!(vol.21「三新軒」編(4))

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【ライター望月の駅弁膝栗毛】

E653系電車・特急「いなほ」、白新線・黒山~佐々木間

新潟~酒田・秋田間を、白新線・羽越本線経由で結ぶ特急「いなほ」号。
新潟駅では5番線に発着し、上越新幹線「とき」と同一ホームでの乗り換えが可能です。
新潟~鶴岡・酒田間は、約2時間の乗車、秋田までは3時間半あまりの旅。
私の経験上、ホーム売店は駅弁の数が少なめなので、新潟の豊富な駅弁ラインナップからチョイスしたいときは、1度階段を下りて、下の階の売店を利用するのがお薦めです。

三新軒・遠藤龍司社長

ライター望月が、全国の駅弁屋さんを訪問して、製造現場をレポートしながら、トップの方にお話を伺っている特別企画「駅弁屋さんの厨房ですよ!」。
第21弾は、創業90年あまりの歴史ある新津駅の駅弁屋さん、「株式会社三新軒」の遠藤龍司社長に登場いただいています。
今回は、三新軒の駅弁作りのこだわりを訊いていきましょう。

 

●上越新幹線の開業を機に「新潟駅」へ!

―昭和57(1982)年の上越新幹線の開業は、やはり大きなターニングポイントでしたか?

確かに、新津を通っていた特急列車が通らなくなりましたから。
当時はもっぱら「新幹線が開業したら駅弁が売れなくなる」と悲観論が主流だったんですが、私はむしろ「売れるようになる」と踏んでいました。
予想通り、たいへん多くの方に新潟へお越しいただきました。
三新軒も開業に合わせて、新潟駅と燕三条駅に「ときの店」というお店を出しました。

新潟駅・ときの店(2003年撮影、現在は閉店)

―私の記憶では確か、新潟駅は新幹線と在来線の乗換改札のところに「ときの店」があって、とても重宝だったんですが、当時はどんな駅弁を?

新幹線が開業したときは、事実上、各社競作のように「鮭の押寿司」を作っていましたね。
三新軒は昔、佐渡に鮭の養殖場を持っていましたので、その生鮭を使っていました。
当時は売れる日とそうでない日の差が激しくて、製造個数を読むのがとても大変でした。
そのころは消費期限が4時間くらいの駅弁も多くて、新潟駅までの移動・搬入に約1時間は見ないといけませんから、実質2時間くらいで売り切る必要があったんです。

―昔の売店の写真を見直すと、駅弁だけではなく、土産物も結構扱っていましたよね?

この土産物も、たいへん多くのお客様にお買い求めいただきました。
上越新幹線から開業して数年間は、とにかく「キーホルダー」がよく売れたんです。
当時のキヨスクの人たちと、「どうしてキーホルダーなんだろう?」と話した記憶があります。
いま思うと、(殆ど新潟らしさがないものを買われていたのが)とても不思議なんですが…。
そういう時代だったんでしょうかね!?

三新軒

●お米の味は、田んぼ1枚1枚違う!

―新潟の駅弁屋さんはみなさん、米にこだわっていますが、「三新軒」もそうですよね?

新潟県産コシヒカリ100%です。
お米って、田んぼ1枚1枚、味が違うんです。
日当たりも違いますし、風の回りも違いますし。
炊き方は、他の駅弁屋さんにはないと思いますが、4升釜に「3升」炊くようにしています。
コレ、4升釜に4升だと、味が落ちるんです。

―食材には、どんなこだわりがありますか?

新潟らしい駅弁を出すことは大事だと思います。
ただ、地産地消にこだわり過ぎず、「美味しいもの」を優先して出すようにしています。
特に魚は、たまたま水揚げされた港に過ぎませんから。
(新潟の駅弁屋さんの技を活かした)美味しいものを、他の地域にもお届けしていくことで、各地域の方に、新潟の駅弁を知っていただくことも大事なことではないかと考えています。

(株式会社三新軒・遠藤龍司社長インタビュー、つづく)

新潟たれカツ重

三新軒で「新潟らしさ」を感じさせる駅弁の1つが、「新潟たれカツ重」(900円)。
新潟市では、一般的な卵とじのかつ丼ではなく、揚げたてのとんかつを醤油ベースのタレにくぐらせてご飯の上に乗せる「かつ丼」が定番とされています。
昭和初期、新潟市中心部にあった堀の堀端に出ていた洋食屋台の1つが、この「たれカツ丼」を提供したのが始まりとされているそうです。

(参考)新潟県観光協会ホームページ

新潟たれカツ重

【おしながき】
・白飯(新潟県産コシヒカリ)
・越後もち豚のかつ
・千切りキャベツ
・赤かぶの酢漬け
・ふき山椒

新潟たれカツ重

コシヒカリの白いご飯に千切りキャベツが敷かれ、その上にたれに浸されることで、少しウェットな食感になった「越後もちぶた」のロースかつが3枚載っています。
駅弁らしく“冷めてもやわらかい”を実現するために、豚肉は味噌漬けにしたものを使用。
なるほど、肉のうま味を活かしたコクのある味とやわらかさを1度に実現しています。
重すぎず、軽すぎない食感で、3桁の価格帯に抑えているのも好印象な駅弁です。

E653系電車・特急「いなほ」、白新線・早通~豊栄間

越後・庄内の稲作地帯を駆け抜ける特急「いなほ」号。
消費者からすると、産地が同じなら味は同じと思いがちですが、人間の個性がひとりひとり違うように、じつはお米も、田んぼによって個性が異なるものなのでしょう。
その意味で、細かい産地よりも炊き方という哲学は、1本筋が通ったものと言えそうです。
いよいよ次回、三新軒・遠藤社長のインタビュー、ラストです。

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