ニッポン放送「ザ・フォーカス」(3月5日放送)に元外務省主任分析官・作家の佐藤優が出演。新型コロナウイルス感染症の世界での拡大状況について解説した。
習近平国家主席が新型コロナウイルスの封じ込めをアピール
中国本土の死者は31人増えて3012人と3000人を超えた。感染者は139人増えて8万409人。中国の習近平国家主席は4日、「予防と抑制の状況は持続的によくなっている」と表明して「湖北省以外ではほぼ収束してきている」と強調した。
森田耕次解説委員)他の省の警戒レベル引き下げも拡大させており、国内の収束をアピールしていくようです。4日の感染者数は139人のうち湖北省以外では5人、この1週間は多くても10人程度にとどまっているということで、湖北省では抑えられているのかなという印象は受けます。
佐藤)それは確かなので、習近平さんも実態からかけ離れたプロパガンダはしていませんね。実態からかけ離れたことをしても、外国人もいるし中国人もSNSで発信していきますからね。それは完全には抑えきれないので、実態から乖離したことは言えないでしょう。
森田)国内経済を回復させたいということで企業活動の再開を呼びかけているようですが、国内の移動規制で出稼ぎ労働者の復帰が難しいと。経営難に陥った企業も多く、中小企業を中心に活動再開と言ってもなかなか再開できないようです。当局としては過度な移動規制を緩和したり、企業への融資も増やそうということで、経済のことも習近平指導部は気を遣っているようですね。
経済の影響まで含め、新型コロナウイルスの蔓延は“危機”
佐藤)中国だけの問題ではなく、日本にとっても経済の影響が心配ですよね。今回の危機は、感染力や致死率からしても、ウイルス自体はそんなに危機的ではないと思うのです。問題は、それに対する国際的な受け止め、国民心理、経済への影響を総合的に判断するとこれは危機なのです。専門家に感染力や致死率だけを見て「大変じゃない」という人がいますが、もはやそういう段階ではありません。
森田)経済的なことも含めると危機だということですね。
佐藤)実際にお店に行ってみると、カップラーメンも品薄になっています。トイレットペーパーを盗まれてしまうので、お手洗いを閉めているコンビニも多いですよね。こういう国民心理になっていること自体が危機です。
森田)海外にもどんどん広がっていまして、韓国は感染者が5000人以上になっています。死者も35人と。韓国はソウル近郊にある新興宗教団体の新天地イエス会というところが発生源ということで、貿易当局や警察も特別チームを派遣して、礼拝に関する記録や信徒の名簿の調査に乗り出したという報道もあります。
佐藤)大邱(テグ)を中心に起きているわけですから、ここのところでどう封じ込めるかということに韓国も必死だと思います。
イランでも感染者が増加~ウイルスは暑さに強いのか専門家の説明が必要
森田)イタリアもすでに死者が100人を超えているという状況ですが、佐藤さんが注目しているのはイランでも感染者が2000人以上になっていることだそうですね。
佐藤)私がどうしてイランに注目しているのかというと、季節性のインフルエンザに準じた形でお医者さんたちも専門家たちも認識していると思うのです。ということは、暖かくなるとウイルスの動きがおのずと不活性化してくるのではないかという見方です。ところが、イランのテヘランは東京よりも少し温度が高いくらいですが、それ以外の街は暖かいのですよ。20度台になっているところもけっこうあって、そういったところで次々と感染者が出ていることを考えると、この新型ウイルスはもしかすると暑さに強いのではないかと。その観点からすると、シンガポールで感染者が出ているのも気になります。
森田)シンガポールも100人以上の感染者が出ています。
佐藤)暖かいところで出ているということは一体どういうウイルスなのか、気になります。
森田)イスラエルはヨーロッパ5ヵ国からの入国拒否をして、日本からも入国できなくなっています。
佐藤)イスラエル人は日本に訪問して帰ることはできるのですが、私の友人が来る予定だったのを取り止めました。どうしてかというと、日本に渡るとその後2週間隔離されるからだということです。
森田)イスラエルは感染者が15人くらいでおさまっています。
佐藤)しかし、イスラエルも暖かいですからね。この辺はむしろ専門家に説明して欲しいところなのです。
森田)確かに、ここを指摘する専門家はいませんね。
佐藤)気づいていないからだと思います。私は情報屋ですから、その辺りがすごく気になるのです。みんななんとなく暖かくなれば解決するのだろうと思っているのですが、そうじゃないときの落胆が大きくなってしまいます。温度との関係でどういうことが推定されるのか、政府は先手を打って説明した方がいいのではないかと思います。テヘランには大使館があるし、日本とイランは友好国ですからね。イランから情報を提供してもらえばいいと思うのですよ。
番組情報
錚々たるコメンテーター陣がその日に起きたニュースを解説。佐藤優、河合雅司、野村修也、山本秀也らが日替わりで登場して、当日のニュースをわかりやすく、時には激しく伝えます。
パーソナリティは、ニッポン放送報道部解説委員の森田耕次。帰宅時の情報収集にうってつけの番組です。